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人類平和と日本型ウェルビーイング
昨日は、麗澤大学国際問題研究センターの先生方で分担している講義を紹介し、昨年に私が担当した講義「国際平和のための哲学・思想」の講義レジュメを投稿した。
※昨日の投稿「国際平和のための哲学・思想」↓
今回は、今年に担当する講義「人類平和と日本型ウェルビーイング」の講義レジュメを紹介したい。
1 戦後の平和教育について考える
⑴ 大学生アンケートの衝撃的結果「自国が侵略されたら逃げる」72%「戦う」12%一留学生の9割が「戦う」とのギャップ➡広島・長崎の平和教育「二度と過ちは繰り返しません」=WGIPの影響一永井隆『長崎の鐘(特別付録「マニラの悲劇」)』
●平和教育の原爆アンケート結果
1、広島教育研究所「原爆は戦争を早く終わらせるために必要だった」
2、NHK世論調査(H27)原爆投下日の正解率(29,5%)「原爆投下をどう考えるか」
➡「やむを得なかった」40%「わからない」8%「今でも許せない」49%
●GHQ月報1945、10・11
「占領軍が東京入りした時、日本人の間に戦争贖罪意識は全く存在せず、道徳的過失の感情はほとんどなかった…戦争贖罪キャンペーンによって、昭和20年10月末には早くも日本人の間に戦争贖罪意識が成長しつつある」
●吉田満『戦艦大和の最期』の激論一「何のために死ぬのか、その哲学がわからん」
⑵ 中学校社会科教科書の「反日義兵」「地球儀の上に立つ昭和天皇」の写真 の思想的背景
⑶ 河合隼雄『中空構造日本の深層』(中公文庫)『母性社会日本の病理』(中央公論社)
●日本型中空構造の長所一対立の中央に存在して、平和・調和のバランスを維持
●日本型中空構造の欠点一有事の際に一挙に露呈する「驚くべき無責任体制」(落とし穴
⇒憲法第9条問題は、日本人の「精神」にかかわる深い問題(江藤淳)
⇒森嶋通夫・関嘉彦論争(森嶋「ソ連が攻めてきても秩序整然と降伏すればよい」)
⇒二重の反省が必要(河合)①中心への侵入を許すと、日本の中空構造はもはや機能しない②政治、軍事問題として、もっと具体的に論ずべきだ
⑷ 日教組・沖縄県の「平和教育のパラダイム転換」
●沖縄県教育委員会『平和教育指導の手引き』一「平和を脅かす問題に積極的に立ち向かう主体形成が必要」⇒ユネスコ憲章前文を引用「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」⇒「竿が曲がる カツオが空で鳥になる」(小学校の石碑)
※参考:『平和教育のパラダイム転換』
●日教組教育文化政策局編『もう一つの平和教育一反戦平和教育から平和共生教育へ』
⑸ WGIPが否定した「日本精神」の3本柱(神道・皇道・武士道)を「国際平和の哲学・思想」として捉え直す
⑹ ユネスコ「世界の記憶」「南京大虐殺」「慰安婦」文書登録をめぐる「歴史戦」
●ユネスコに提出した私の意見書(拙著『WGIPと「歴史戦」』参照)⇒「天地の公理」
●ユネスコからの「対話勧告」への対応⇒「対話の条件」(「和して同ぜず」)
2「日本社会に根差したウェルビーイング」とは何か
<第4次教育振興基本計画の二大教育方針>
●「持続可能な社会の創り手の育成」⇒経済成長の手段ではなく、内在価値の開発へ
⇒経済優先の価値観から幸福優先の価値観へ⇒GDPからGDW(幸福指標)へ
●「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」
⑴ 日本型ウェルビーイングとは何か
①個人的なhappinessとの違い⇒個人を取り巻く「場」が持続的に「良い状態」
②11の要素
「幸福感(現在と将来、自分と周りの他者)」
「学校や地域でのつながり」
「協調性」
「利他性」
「多様性への理解」
「サポートを受けられる環境」
「社会貢献意識」
「自己肯定感」
「自己実現」
「心身の健康」
「安全安心な環境」
③「集団的幸福」の日本モデル一宮沢賢治「人類全体が幸せにならなければ、個人の幸せはない」坂村真民の詩「後からくる者のために」⇒地域や社会全体の幸福を重視
④内田由紀子「文化的幸福」⇒人との関係性、自然との調和を重視
⑤「協調的幸福尺度」⇒「周りの人も幸福」「周りの人に認められていると感じる」「大切な人を幸せにしていると思う」「平凡だが安定した日々を過ごしている」「大きな悩み事はない」「人に迷惑をかけずに自分のやりたいことができている」「周りの人と同じくらい幸せ」「人並みの生活を手に入れている自信がある」「周りの人達と同じくらい、それなりにうまくいっている」
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