選択的夫婦別氏制度論議に欠落している「子供の最善の利益」
●正念場を迎えた論議を振り返る
今から4年前、選択的夫婦別氏制度をめぐる論議が正念場を迎えていた。
私は令和2年11月11日に首相官邸で開催された第61回男女共同参画会議でこの問題について発言し、11月24日に開催された第5次男女共同参画基本計画第8回専門調査会で意見書を提出した。
同日、自民党の「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」、25日に「『絆』を紡ぐ会」、26日に「保守団結の会」、12月1日に「女性活躍推進特別委員会」が開催され、この問題について熱い論議が繰り広げられた。
11月25日に自民党の政策審議会が以下の「夫婦の氏」案を了承し、26日に女性活躍推進特別委員会の森まさこ委員長が首相官邸に申し入れた。
「73%の女性が結婚後も仕事を続け、共働きが今や当たり前となっている中で、女性の96%が、結婚に伴い、氏を変更している。20代、30代の多くの女性から、結婚に伴う氏の変更に抵抗を感じるとの意見が寄せられており、男性からも、女性に改姓を強いていることの問題を指摘する声があがっている。実家の氏が絶えることを心配して結婚をためらうひとりっ子の女性・男性がおり、少子化の一因となっているとの指摘もある。国際社会において、同氏を法律で規定しているのは我が国だけであり、その他の国においては選択性などが取られている。これらを真摯に受け止め、超少子高齢化時代の中で具体的且つ切実な困りごととして、氏の問題に真正面から対応していくこと。」
●トリッキーな世論調査解釈
同案の作成に多大な影響を与えたと思われるのは、11月18日に公表され、NHKニュースや朝日新聞などで大々的に報じられた47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査(早大法学部・棚村政行研究室、選択的夫婦別姓・全国陳情アクション合同調査)の結果である。詳細は以下。
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