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しらかわホールのおもいで
三井住友海上しらかわホール 閉館のお知らせ
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
三井住友海上しらかわホールは、1994年に開館して以降、多くのお客さまにご来場いただきましたが、経営状況や今後の維持・修繕費等を勘案し、2024年2月29日をもちまして閉館することとなりました。
まことに残念なお知らせが名古屋から伝わってきた。
しらかわホールは公共的な宝だ
しらかわホールは、名古屋、いや日本が誇る素晴らしい音楽ホールの一つだ。これは間違いない。
音響設計に優れたこの規模のシューボックスタイプの音楽ホールは極めて貴重である。
それよりもなによりも、たくさんの若い音楽家たちをあたたかく包み込み育ててきた、そういうホールだ。
関係各方面のご努力で、なんとか存続の道が開かれるよう、切に願っている。
ホールの存続を求める「署名」のリンクを添付します。
ぜひご協力ください。
◇しらかわホールの存続を望む会◇
発起人/愛知県立芸術大学学長 戸山俊樹、名古屋音楽大学学長 佐藤惠子、名古屋芸術大学学長 竹本義明 事務局/名古屋ウイーン・クラブ
下のリンク先にて名古屋クラシック音楽堂さんが、しらかわホールと署名活動について、noteで詳しい記事を書いていらっしゃいます。
(私の思い出話はどうでもよいので)こちらの記事をぜひお読みください。
しらかわホールについて
以下、しらかわホールの公式サイトからの引用です。
とても素晴らしいホールであることがお分かりいただけると思います。
三井住友海上しらかわホールは、1994年11月、名古屋・伏見にクラシック音楽専用の中規模ホールとして開館しました。
当時の住友海上が創業100年記念事業の一環として建設したものです。その後2001年10月に住友海上は三井海上と合併し、三井住友海上となりましたが、ホールはそのまま新会社に引き継がれました。
ホールが建つ地域は、かつて白川町と呼ばれ、いまも「白川公園」「白川通り」にその名を留めています。名古屋市科学館や美術館などの文化施設が点在する森と文化の街でもあり、愛着と郷愁をもって人々に親しまれている「白川」の名称から、「しらかわホール」と命名しました。最高水準の音響設計と設備を備えたコンサートホールとして、世界の一流アーティストから地元のアマチュア音楽家まで、音楽を愛する人々に幅広く愛されてきました。
「よりよい社会のために、音楽ができること―。」このテーマとともに、これからも、人と音との出会いを通じて、豊かな文化を育み、夢と感動を届けるホールでありつづけたいと願っています。
コンサートホール
コンサートホールの形状は、理想的な音響特性といわれ、数々の歴史的名ホールを誕生させた「シューボックス・スタイル」を採用しました。ホール壁面と椅子はレッドオーク、床はサクラという天然素材で仕上げられ、上壁部から天井までは、ゆるやかな曲線を描くプラスターボードで覆われています。「ホールに足を踏み入れると、まるで包み込まれるような感覚が味わえる」と評される三井住友海上しらかわホールならではの空気感は、ぜひご自身でご体感ください。
三井住友海上しらかわホールはなぜ響きがいいのか?
西洋が到達した理想の音響空間 「靴箱」=シューボックススタイル
三井住友海上しらかわホールは、「シューボックス」スタイルの音楽専用ホールです。
シューボックスとは、間口が狭く、天井の高い長方形の形状が、まるで「靴箱」を思わせることからそう呼ばれています。このスタイルは、古代ギリシャ・ローマ時代の円形劇場など、人と人とが集う空間としての劇場文化を育んできた西洋が到達した、究極の音楽演奏空間といわれています。バッハやモーツァルト、べートーヴェンなど人類最高の音楽文化が誕生した時代のヨーロッパのコンサートホールは、全てこのスタイルを基にしていました。19世紀のヨーロッパを代表するコンサートホール(資料画像参照)もすべてこのスタイルで、現在に至るまで理想的なコンサートホールとして評価され続けています。
なぜシューボックス・スタイルは音がよいのか?
コンサートで最も重要な要素といわれる舞台と聴衆の一体感。それを得るために必要な音響効果の3要素 (音量・残響・拡がり) のうち、特に「拡がり=音に包まれた感じ」は聴衆の感動・満足に特に直結する重要な要素といわれています。その拡がり感を増すためには側方反射音を強める必要があり、シューボックスという室形状は、この実現のために理想的とされています。けれども必ずしも「シューボックスであれば音がよい」と短絡的に決め付けることはできません。反響音・音の拡散などの制御は緻密な音響設計を経てはじめて実現できるものであり、音量・残響などの要素との高次元のバランスこそが、ホールとしての響きの個性、優秀性に他ならないからです。
三井住友海上しらかわホールの大きさは、幅16.5m、奥行31.5m、天井高は舞台上約14m。
これは幅と高さがほぼ1対1のシューボックス・スタイルの理想形といわれています。それに加え、細長い室形状による大きな側方反射音の付与。客席空間に突出したサイドバルコニーによる反射音の「叩き落し」効果。壁面や天井の凹凸、装飾などの緻密な配置による舞台・客席への音の拡散と散乱効果などなど...。 これら多彩な要素が緻密に組み合わされることで、はじめて理想的な響きが実現されるのです。
しらかわホールのおもいで
以下は、私のきわめて個人的な思い出ですので、本当に興味のある方だけお読みください。それより、署名へのご協力をよろしくお願いします。
しらかわホールには何百回と通った。ほとんどは聴衆の一人として。ときに演奏会の主催者として。
2000年12月20日
私は演奏家ではないが、出演者としてたった一度だけステージに立たせてもらったことがある。西暦2000年12月20日のことだ。
バッハ没後250年。私が音楽大学に就職して5年目のクリスマスを迎える頃のことだった。
「バッハ再考:バッハとその時代を考える」という演奏会でナビゲーションを担当させていただいたのだった。音楽が専門でない政治学者である私が、ステージに立ってよいものか大いに悩んだが、ぜひ一緒にと、同僚の先生方のお誘いで意を決することにした。
開演前まではいろんな批判も浴びた。どうやら批判のネタを探しに演奏会を聴きにきてくださった先生方もいたように記憶している。
終演後は、多くの方にお褒めの言葉をいただいた。嬉しかった。
何が嬉しかったのかというと、音楽大学に就職したものの外様的な扱いを受けることもしばしばであった。どうせ、すぐ他の大学に移られるんでしょ、などと言われることも多かった。
石の上にも5年
その音大に就職してから5年。ようやく同僚として認められたような気がして嬉しかったのだ。
しらかわホールの舞台に特大のスクリーンを張って、曲の合間にプロジェクターを使って壇上でナビゲーションをする。
しらかわホールにプロジェクターを持ち込み、舞台にスクリーンを張ったのは私がはじめてだったそうだ。
音楽が専門でない私は、バッハが生きた時代について、政治を含むヨーロッパの歴史的背景を交えながら語ることにした。こちらは終演後にどんな批判が飛んでくるだろうとヒヤヒヤしながらのナビゲーションであった。共演する先生方は、演奏の準備に忙しく、私の原稿になど目をとおす暇もなかった。私は孤独に準備するしかなかった。
終演後の打ち上げでは、あるピアノの大先生から大変なお褒めの言葉をいただいた。恐縮しつつも、やはり嬉しかった。
10年後 学長に 運命のしらかわホール
私がその音大の学長になったのは、この演奏会から10年後のことであった。そうなる運命は、じつはこのときこの場所から、しらかわホールから始まったのだと思っている。
以下、当時の学長blogから見つけたしらかわホールの写真。
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