大谷翔平を育てた原田隆史の家庭教育論⑶

 「子供の夢が叶う家族」とは、家族全員が家庭内で存在感が高いと思い、家庭に対しても不安感がないことが重要である。また、親自身が自分の「父性」「母性」「子供性」のプラス面、マイナス面を知り、バランスを取って子供を育てる必要がある。
 実際に子供が夢を描き、その夢を実現するために家族ができることは一体何か。原田は次の6つのメソッドを提唱している。

<メソッド1>
 家庭教育の基本は⑴時を守る、⑵場を清める、⑶礼を正す、という「心のコップ」を上に向けるための「再建の三原則」であり、⑴は時間厳守(相手を尊重する行為であり、信頼を得られる)、⑵は掃除・整理整頓(自分自身と向き合う行為であり、心づくりができる)、⑶は挨拶・返事・感謝の気持ち(人間関係が良好になる)である。
<メソッド2>
 ・夢を4つの観点で描けば、強い思いが生まれ、夢は枯れずに維持できる
 陸上競技日本一になった中学生の中には、「砲丸投げで、18メートルを記録し全国優勝。勇気を与え、翌日の女子も優勝を果たす。お世話になった人達が喜んでくださり、砲丸投げという種目の注目も高まる」とイメージして、イメージ通り全国優勝した生徒がいた。
 原田が提唱する「夢の4観点シート」は、横軸を「私―他者・社会」、縦軸を「有形―無形」で分けたものである。右上の「有形」で「私」の具体例は、家を建てたい、資格を取りたい、趣味を活かしておうちサロンをオープンしたい、海外旅行に行きたい、サッカー選手になりたい、科学者になりたい、犬を飼いたい、などである。
 左上の「有形」で「他者・社会」の具体例は、子供のほしいものを買ってあげたい、家族に経済的な余裕を与えたい、両親の老後の面倒をみたい、地域を安全な町にしたい、世界中の病気で苦しむ人達を救いたい、などである。
 右下の「無形」で「私」の具体例は、楽しい毎日を過ごしたい、毎日を充実させたい、満足したい、上司に信頼されたい、健康的な暮らしをしたい、達成感を味わいたい、などである。
 左下の「無形」で「他者・社会」の具体例は、子供に幸せになってほしい、両親を安心させたい、子供の夢を叶えたい、地元を活性化したい、後輩に自信を与えたい、チームメイトのモチベーションを上げたい、などである。
 大谷翔平が高校時代に作成した「目標達成シート」にもこの4つの観点が採用されているが、「無形」のキーワードは以下の50である。
・自信がつく・自己実現・達成感・満足感・充実感・誇り・憧れ・喜ぶ・自立する・期待・自己肯定・前向き・明るい・幸せ・やる気・元気になる・源になる・いきいきする・ワクワクする・勇気がわく・信じる・感動する・嬉しい・感激する・感謝する・癒す・認める・責任感・美しい・好きになる・自由になる・やりがい・使命感・安心する・活気・積極的・エネルギッシュ・安定する・楽しい・笑顔・確信する・リフレッシュ・希望・導く・名誉・自尊心・恩返し・夢中・意欲的・歓喜する
<メソッド3>
・子供のやる気を育てる魔法の「ストローク」一⑴効果的なストロークで子供のやる気を引き出し、自己肯定感をアップさせる⑵どのように褒めたら嬉しいかをよく観察して、子供の心に響くプラチナストロークを見つける
 「ストローク」とは心理学用語で、言葉や行動による「関わり」のことである。原田はこの「ストローク」を「心の栄養」と捉えている。ストロークには相手をほめたり認めたりする「肯定的ストローク」と、叱ったり注意したりする「否定的ストローク」の2種類がある。
 子供の心に響き、やる気が一気に高まり、特に記憶に残るほめ方が「プラチナストローク」である。原田は冷蔵庫のドアにホワイトボードを付けて、毎日子供や奥さんにメッセージを書く「サンキューカード」を作成し、企業や学校、家庭で使われている
<メソッド4>
 ・成功体験で自然と身に付く「継続する力」一ルーティン表を使って内容を見える化する
 夢を叶えるためには、日々の生活で正しい習慣や夢の実現に必要な習慣を身に付けることが重要なカギになる。「ルーティン」とは、毎日行う行動のことである。原田は「長期目的・目標達成用紙」と日々の「ルーティンチェック表」を使って大谷翔平を育てたが、この方法は家庭教育にも応用できる。ルーティンを成功させるためのルールは次の6つである。
 ⑴ルーティン表の項目は時間順に並べる
 ⑵ルーティン表は親のルーティンも入れる
 ⑶ルーティン表は毎日必ず確認する
 ⑷できないときは助けてあげる
 ⑸事前指導で「○」にして、ほめる
 ⑹3週間連続「○」がルーティンのゴール
 ルーティンは続けることが重要なので、無理な項目ではなく、できることから始めることが大切である。「少しの変化で、自分が大きく変わる」ということを実感できる。
<メソッド5>
・子供の夢を聞いて、まとめてみよう一「ユメ☆カナシート」に書き込もう
 同シートに最初に書くのは、「あなたの夢は何ですか?」で、その夢を枯らさず、輝かせるために前述した4つの観点で夢を広げ、「私/有形」「私/無形」「他者・社会/有形」「他者・社会/無形」の4つに分けてもう一度考えて書き、最後に、4つの観点に広がった夢を一つにまとめる。この時に4つの観点で広げた内容を入れることがポイントである。
 同じエリアにある複数の夢がある時はその中でも一番大切だと思う項目を1つ選んで、最後に4つのエリアにある夢を一文にして、「あなたの夢は何ですか?」の欄に書き込む。その夢こそが、枯れない夢となるのである。
<メソッド6>
・日誌は夢を叶える最強の武器
 日誌は毎日時間を決めて、「夢のために今日の一番大切なこと」「一番大切なことを成功させるために行うこと」「今日の良かったこと」「今日をもう一度やり直せるなら」の4項目を書き、さらに1週間のまとめをして、「今週の良かったこと」「今週の課題」「課題を改善するために行うこと」「来週への意欲」の四つを書き込む。
 子供が小さい場合や最初の内は。親が子供に質問しながら書き込んであげるのがいい。「よかったね」「すごいね」「明日も頑張ろうね」など、肯定的ストロークをする機会にもなり、子供の家庭での存在感も高まる。親と一緒に毎日3分日誌をつける習慣づくりが大切である。
 なお詳しくは、原田隆史『子どもの夢を叶える家族の教科書』(Gakken)を参照されたい。
 
 
 

 

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