「グローバル性革命」に対する抵抗勢力の国際動向(クビー著書第15章)

「グローバル性革命」に対する抵抗勢力の出現

国連、欧州連合、米国と各国政府、財団と世界的な企業及び NGO の政治力とも のすごい財政は男女両性の性別秩序を破壊させ、性規範を緩和させ、家族を解体させ、 世界の人口を減らす努力を後押ししてきた。 しかし、このようなことに対して抵抗が起こり始め、成功的な抵抗勢力が現れ 始めた。
  全世界の教会、キリスト教の NGO、個人や機関が人間の尊厳を尊重する 文化のために一緒に協力し、生命と結婚と家族のための戦いを開始した。 ドイツ社民党の知識活動家たちのセンターであるフリードリヒ・エーベルト 財団の報告書は、ジェンダーの活動家らが「性の政治」への抵抗勢力が下から起 こっていること(例:フランスの同性婚反対運動とドイツの「みんなのための デモ」)に 驚いており、これらの抵抗が欧州の幾つかの国家の国民投票を 通じて表現されていることを明らかにした。
 一方、共産主義の抑圧に耐えなければならない東欧州国家は西欧の性革命か ら除外された。 共産主義が「解放された」性を通して家族を破壊しようとして いることを考えると、本当に歴史の矛盾であるというしかない。まずスペインだ。この国は、自国の古いキ リスト教文化を破壊することができれば、何でもすると襲い掛かる過激な性革 命家を首相に選出した国である。
 第二はハンガリーで、この国は共産主義 独裁の下で多大な苦しみを経験し、1989 年以来、左派の政府になったが、選挙 での圧倒的な勝利で、2012 年 1 月 1 日から、キリスト教的憲法を持つ国に復帰 した。

●スペイン
 2004 年から 2011 年まで、スペインは、社会主義者であるホセ・ルイス・ロド リゲスス・ザッパテロが執権した。 彼は、急進的なジェンダーイデオロギーの 信奉者として自分が何をしたいのかよく知っていた。「今日は、スペインは家族 に甚大な影響を与える急進的な国際プロジェクトの先鋒に立っている。このプ ロジェクトは、長い間、スペインの社会的・歴史的アイデンティティを決定する 文化的な価値を変化させるためにした大規模なプロジェクトである。
 このよ うな「急進的な国際プロジェクト」は、現実には「解放された」自由という概念 の基盤の上に行われた。 ザッパテロの話によると、「自由が私達を真理にするの であり、真理は私たちを自由にすることがない。」 ザッパテロは総理職の間「法を文化変化の決定的な鍵」として使用した。 彼の 執権中に、次の法律が可決された。
⑴ ジェンダー暴力禁止法 ・簡単な離婚法(この法律が施行された後に、2004 年 5 万 1 千件であった離婚 件数が 2008 年には 12 万 2 千件と急増した)
⑵ 必要に応じる中絶法(中絶件数は 193 年 4 万 98 500 件から 2007 年 11 万 2 千 件に急増した) ・処方箋のない事後避妊薬販売 ・人工生殖の合法化
⑶ ジェンダー選択の自由 ・同性婚合法化 ・治療用の複製を合法化 ・多様性を擁護し「同性愛嫌悪」に反対する義務的な性教育を導入
⑷ 平等法と差別禁止法 ・ジェンダーイデオロギーに対する義務教育の導入 ⑸ 宗教の自由法改革  ザッパテロが言ったように、「私たちは旧秩序を破壊し、新しい秩序を確立す るための目的を持って、社会的変化のためのグローバルプロジェクトの前に立 っている。個人の生活を変えることができる方法をこのように短い時間でこん なに多く成立させたことは一度もなかった」。          
 しかしスペインの内部で、これらの政策に反対する強力な反対運動が組織さ れ始めた。この運動は、生命、結婚と家族、親の権利、宗教の自由、そして学校 で市民教育という名目で子どもたちに新しいジェンダー教義を注入する ことに反対して戦った。
 2005 年 6 月には、200 万人以上のスペインの国民が家族を支持して同性婚に 反対するデモをした。この運動は、かつてカトリック国であったスペインを 3 度 訪問していた教皇ベネディクト 16 世の強力な支持を受けた(教皇ベネディクト 16 世は 2006 年 6 月には、バレンシアで開かれた世界の家族会議、2010 年 11 月 には、サンティアゴとバルセロナで聖家族教会の聖潔化のために、そして最終的 に、2011 年 8 月マートリードで開かれた世界青少年者の日にスペインを訪問し た)。
 ザッパテロ政権は突然の結末を迎えたが、文化的な破壊と極度の財政運用の 失敗で 2011 年に追放されたのである。新首相は、保守主義政党マリアーノ・ラ ホであった。2012 年 1 月 31 日、新任教育部長官は、学校の教科過程で市民権教 育科目をすべて取り除いた。家族のための運動は、5 年間の苦労の末、最 終的に偉大な勝利を得た。 ザッパテロの夢は終わったが、7 年間の執権期間に作られた文化革命は、スペ イン社会に深い傷を残した生命と家族、不可侵的な人間の尊厳性に対する戦い は、まだ完全な勝利をおさめることはできなかった。今、欧州連合は加盟国に居 住する 5 億の国民を対象に、スペインで行われたものと非常に類似した生命の 破壊的な目的を追求している。

●ハンガリー
 左派自治州の政権 5 年後の 2010 年 4 月には、保守青年民主同盟が総選挙で圧 倒的な勝利を収めた。 彼らは議席の 3 分の 2 を占める多数党になってオルバン 首相の下で憲法を改正することができるようになった。
 ハンガリー憲法によれば、
・神を認める:憲法の最初の文が「神がハンガリーを祝福されること」とし て始めたため。
・国家と国家の伝統を認める:憲法が 10 世紀ステファン国王の「聖なる冠」 について言及しているため
・伝統的な家族を認める:憲法が家族を「社会の根幹を構成する力であり、各 個人の栄光」と認め、「結婚は一人の男性と一人の女性が生涯結ぶ誓約である」 であるということのため
・胎児の生命権を認める:胎児の生命は妊娠した瞬間から保護されなければなら ないため
・人を神の創造物であると認める:人間の複製、人体及び臓器売買を政府次元で 禁止しているため 新しい家族法は家族を「一人の男性と一人の女性から成り立つ自律的な共 同体であり、子どもたちを養育する重要な役割をもつ共同体」として定義してい る。
 国家の存続のために、家族は、国家から尊重され、子どもたちを養育する最 も重要な 1 次的権限が親にあると法律で規定している。 ハンガリー人は皆のために、ハンガリーは死の文化を崩し、生命の文化を育 て、基本的なキリスト教的価値を再確立することを願った。 ハンガリーは神を 認め、正しい国家観と家族観、そして妊娠した瞬間から死に至るまで、人間の生 命の尊厳性を認めた。
 
●フランス
 2013 年、新しいジェンダーアジェンダーに反対する「皆のためのデモ」(La Manif Pour Tous)という大衆運動が始まった。社会主義者であるフランソワ・ オールランド大統領が「皆のための結婚」(Marriage Pour Tous)というスローガ ンで同性婚を合法化させようとする計画を発表すると数百万の反対者たちがパ リをはじめフランス各都市の道に出て来た。この法律は結局に成立したが、家族 の定義を変えようと試みた新しい家族法を防ぐことができた。「皆のためのデモ」 は、現在、欧州の多くの国々で急速に広がっている。

●ドイツ
 フランスの「皆のためのデモ」運動がドイツにまで伝播され、学校で国家によ って強制的に行われている児童の性愛化に抵抗する戦線が形成された。この運 動はドイツ語で「Demo Fur alle」(皆のためのデモ )という。それから 20 万 人の市民が、すべての非異性的ライフスタイル(LGBTQ)を受け入れさせようと 子どもたちに教えようとしたバレン・ブウィテムベルクのカリキュラムに反対 する請願書に署名をした。それ以降、シュトゥットガルトでは、次のようなスロ ーガンを掲げるデモが定期的に開かれている「結婚と家族を優先に!ジェンダ ーイデオロギーと子どもの性愛化を中断せよ!」

●スイス
 スイスは幼稚園の過程から子どもを性愛化するために拍車をかけている。 そ んな中、「バーゼルのセックスボックス」のタブロイド記事がスイスの国民を驚 愕させた。 このボックスには、幼稚園児を啓蒙させるために製作されたプラ スチック製の男女の生殖器が入っていた。2011 年 6 月には、これに反対する市 民の主導で子どもの早期性愛化に反対する請願書が作成され始め、3 ヶ月の間に 9 万人以上の署名を受けており、国民投票のために発議された。この ような市民の圧力に屈服してルージェルン州教員大学で運営していた「性の教 授法の能力センター」が閉鎖された。

●スロバキア
 スロバキアは、市民の結合や同性結婚を合法化しておらず、2014 年に現法で 結婚を一人の男と一人の女の結合であると定義した。 スロバキア議会で同性パ ートナーシップを合法化しようとする試みが 3 回もあったが、すべて失敗した。 2015 年、春には、憲法に同性愛者の養子縁組を禁止し、欧州連合の干渉を防ぐ ために、親が学校の性教育の時間に子どもを参加させないことを可能にする国 民投票が実施されたが、投票にわずか 20%の人だけが参加したので無効とされ た。

●ポーランド
 カチンスキ政府(2006 年 7 月-2007 年 9 月)のポーランドは欧州連合の改革 条約に反旗を翻した。ロマン・キエルチーク教育部長官は、中絶と同性婚合法化 に反対の声を出した。 ポーランドでも中絶と同性パートナーシップ合法化のた めのキャンペーンが起きたが、2014 年まで依然と禁止された。 学校では、性教 育の代わりに「家族生活教育」が実施された。 しかし、このような、ポーラン ドでも、キリスト教的価値は、転覆の危機に瀕している。 2011 年 10 月には、 ヤヌス・パリコートが率いる新党が政治の舞台にデビューして最初の選挙で 10%の得票率を得た。この億万長者は、中絶、同性愛者の権利、麻薬の合法化及 び体外受精と無料避妊薬提供のために積極的に闘争している。

●クロアチア
 2013 年、クロアチアでは、市民が立ち上がって憲法に結婚を一人の男と一人 の女の結合で定義するようにして国民投票を実施することを要求し、左派政府 に圧力をかけた。 政府とメディアの無慈悲で一致団結した抵抗にもかかわらず、 国民投票の結果、伝統的な結婚の定義が反映されるよう憲法を改正することが できた。 これらの保守主義の勝利の後、政府は同性パートナーシップを合法化 するために急いでいる。

●ノルウェー
 性主流化の先駆者であるノルウェーで予期せぬ抵抗が起きた。この抵抗は、ノ ルウェーの人気コメディアンであるヘラルド・イアから始まった。 彼はノルウ ェイのジェンダー平等の信条が現実に合っているか人々が確認するように促し た。 
  イアは、「ジェンダーの逆説」に正面から対抗し、ジェンダー、同性愛、暴力、 ノルウェーのテレビで放送されているセックスと人種のホットな話題を盛り込 んだ「ジェンダーパラドックス」というタイトルの 7 つの俳優のとても有用な 30 分間のビデオを製作した。 彼のビデオは、全国的な議論を起こし、ノルウ ェー政府がジェンダー研究に投資する資金を減らすのに貢献した。

●欧州連合
 欧州議会では、LGBTI の家族破壊的アジェンダーに対する抵抗が新たに起生じた。最初の転機の成果は、生殖 の権利に関する「エストレラ報告書」を拒否したことである(エディットエスト レラは、ポルトガル出身で 、欧州議会の社会主義議員である)。この報告書は、 子どもたちに早期性教育をさせることと中絶する権利を主張し、医師や看護師 の良心の自由を制限することを促した。このとき、ヨーロッパの全域にある家族 親和的 NGO の間の新たな協力が欧州議員議会の最も保守的な政党、欧州国民の 党(EPP)で提案された代替報告書を採択するように方向転換を主導した。
 「私たちの一人」(One of US)という市民運動がすべての EU 加盟国で起 きたが、これは欧州全域で胚を破壊する研究のための資金支援を禁止させるこ とを目的とする。この運動は、これまで 170 万人以上の署名を受けた歴史の中 で最も成功した市民運動である。

●アメリカ
 米国は中絶、LGBTI に付 与された特権、同性婚、性教育などのテーマについて多くの州で分裂している。しかし ギャラップとラスムセン世論調査は全て「選択親和的」とした人の数よりもはる かに多くの記録的な数のアメリカ人が自らを「生命に優しい」と思っていること を示した。 実際には、大半のアメリカ人は中絶に反対した。さらに、中絶件数は、 1978 年「ロデウェイド事件」判決以来、最低水準に落ちた。 2008 年から 2011 年まで米国全域で中絶件数が 18%に減少したが、これは毎年数十万人の人々を ワシントンに呼び集めた生命に優しい運動の偉大な結実だった。
 主流メ ディアは、このイベントを完全に無視したが、2009 年 25 万人から 2013 年に は 65 万人と、イベントの参加者が大幅に増えた。 一方、オバマ政権は急進的な LGBTに 親和的でありながら、家族と生命の価値に 反する行跡は以下の通りである。 米国保健社会福祉省は、オバマ大統領の健康保険改革を通じてすべての雇用 者が保険に加入した従業員に処方避妊薬である事後避妊薬と不妊手術費を無料 で支援しようした。 このことでオバマ政権は、予期せぬ激しい抵抗に直面した。
 オバマ政権に訴 訟、抗議の手紙、署名請願などが巻き起こった。 すべてのカトリック司教と 65 人の正教会の司教、2 千 5 百人のプロテスタントの牧師、福音教会の指導者、大 学総長及びその他の多くの人々がオバマ大統領に、自分たちはこの法律に決し て屈しないことを示した。 オバマ大統領の就任式で説教したリック・ウォーレ ン牧師は、「神が私たちに命じられたことに違反して、政府の命令に屈するので はなく、むしろ刑務所に行きます(使徒言行録 5 章 29 節)。あなたもそうし ますか? 」と人々に一緒に参加することを促した。
 米国 18 州の司法長官は、保健福祉部を相手に訴訟を提起すると宣言した。保 健福祉部キャサリン・シベリウス長官と他の閣僚に送る公開書簡で 13 州の司法 長官は次のように書いた。「保健福祉部の命令は、憲法修正第 1 条に定める宗教、 マスコミ、結社の自由の最も基本的な要素と相反する…、私たちは(保健福祉 部の命令が)米国の歴史の中のどのような場合よりも より容認できない水準で 憲法修正第 1 条に違反したと信じる」。
 保健福祉部の命令は、自由なアメリカ人の神経に触ったことは間違いない。国 家権力による深刻な児童虐待を通して強行された人間のアイデンティティの攻 撃は、ドナルド・トランプ大統領の下で動力を失ったようである。彼は、オバマ 大統領が下した公立学校でのトランスジェンダートイレの使用命令を取り消し た。

●カトリック教会
 世界の道徳的な脱線に抵抗するために最も先頭に立って声を出している集団 がまさにカトリック教会である。そのため、カトリック教会は性規範を緩和しよ うとするメディアと権力者たちの継続的な攻撃を受けている。
  2013 年末から複数の司教会でジェンダーイデオロギーに対抗して、人間は男 と女に創造されたという聖書の教えを確証する妥協できない宣言文を発表し始 めた。 ペルー、ベネズエラ、パナマのような幾つかの南米諸国で開催された司教 会議でもジェンダー主義と児童性愛化に反対する声を出した。 スイスの司教たちの中で一人で寂しく闘争した人はヴィトス・ホンド博士で ある。
 2013 年 12 月 10 日、「ジェンダー:その重大な理論的誤り」(Gender: Die tiefe Unwahrheit einer Theorie)を発表し、彼はカトリック女性団体の 激しい抗議とデモに直面した。 2013 年以降、複数の司教会議でスロバキア、 ポーランド、クロアチアで発表されたのと同じく妥協することはできない明 確な牧会的な宣言を相次いで出し始めた。

家族の危機をもたらした自由の誤解

 その一年前の 2012 年 12 月 21 日、教皇ベネディクト 16 世は教区庁と司 教大学でのクリスマス演説で「(教会)は、教会が根本であり、妥協不可能だと 認識している価値を明確に提示しなければなりません」と述べて覚醒させた。 彼のスピーチは、彼が「人類学的革命」と名付けたものの深さを明確に説明して いる。 今のところ、我々は人間の自由の本質に対する誤った理解が家族の危機をも たらした原因の一つと考えてきました。 ところが、今は、まさに存在自体、人 間は何かであるかとい本当の意味自体が疑問視されている。
 彼(フランスの 偉大な師であるジルレス・ベルンハイム)は、「女性は生まれるのではなく、造 られるものである」というシモン・ド・ヴォボワールの有名な言葉を引用した。 この言葉は、今日、性の新しい哲学としての「ジェンダー」という用語の根拠とな った。
 人間として相互補完するように造られた男性と女性という性別が今、議論を 呼んでいる。しかし、万一、創造の時に男性と女性という先天的に与えられた 両性がないとしたなら、家族も、もはや創造の時に造られた現実になり得ない。 同様に、子供たちも家族の中で自分たちの位置を失い、 自分たちの中にある 尊厳も失われる。

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