私の「臨床教育学」論解説一新堀通也氏による

 臨床教育学の先駆的研究者である広島大・武庫川女子大名誉教授の新堀通也氏は、私の臨床教育学論について次のように解説している。

<高橋はわが国における臨床教育学の発達を髙橋著『臨床教育学と感性教育』(玉川大学出版部)の後半で詳細に段階付けて説明している。「臨床教育学の課題」と題する19節では、京都大学教育学部の大学院にわが国最初に設置された臨床教育学専攻の組織と、その創設に当たった河合と和田の臨床教育学論を紹介している。20節は「臨床教育学の『臨床』の意味」と題され、皇の臨床教育学論を紹介する。21節「臨床教育学の性格と教育病理への視座」では、武庫川女子大臨床教育学研究科の創設に当たった新堀の「臨床」論と教育病理論が紹介される。22節「ホリスティックな臨床教育事例モデル」では、同じく武庫川女子大学で臨床教育学を担当する小林剛が学園長を兼務する兵庫県立神出学園の実践例が紹介される。23節「教育相談の新しい視座」では、「病理・治療モデル」思考から「成長一促進モデル」思考への転換を推進する東京学芸大学の松村茂治(『教室で生かす学級臨床心理学』福村出版、19949や東京大学の近藤邦夫などに共鳴する高橋が、教育現場との長い交流経験の結果、到達した自らの「ホリスティックな臨床教育学」を説明している。・・・10年以上全国各地の教育現場を回り、不登校児の指導に関わるようになって、現場の切実な課題から教育学を見直すに至った。大学における教育学研究と教育現場との乖離を痛感した結果、臨床教育学に到達し、その存在理由を「教育者自身と教育学の新生」にあるとする和田や皇に共鳴している。
 高橋が臨床教育学に到達するに当たって最初に基礎となった理論は、哲学、教育哲学であったが、その哲学の中では特に実存哲学の影響が大きい。実存哲学克服の道を教育に求めようとしたボルノウの教育哲学に高橋は傾倒したのである。彼はボルノウの説く出会い、覚醒、飛躍、中でも教師と児童との間の「教育的雰囲気」の概念を、臨床教育学の基底と考えるようになった。このように実存哲学から理性、科学、分析、客観性、効率などを重んじる近代文明の行き詰まりを学ぶとともに、個、全体、生の統一、非合理性等を人間の本質であり、現実であると考え、理性に対し(正確には理性と共に)感性の役割を重視するホリスティック教育に、高橋は救いを見出した。・・・高橋はまた「臨床心理学と教育学を統合した新しい実践的教育学としての臨床教育学とホ―リズムとの関係について考察し、ホリスティックな臨床教育学を樹立するためには、まずアドラー心理学とホ―リズムとの関係を明らかにすることが第一歩になる」と、アドラー心理学に注目している。>

 詳しくは、新堀通也『教育病理への挑戦一臨床教育学入門』教育開発研究所、平成8年、同編著『臨床教育学の体系と展開』多賀出版、平成14年、を参照されたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?