岸本吉生「SDGsと道徳」特別講義⑵
情緒は生まれてから育まれる。環境によって情緒の育まれ方は異なる。明治維新の前と後では情報が違う。明治政府の役人は武士の情緒がある世代が含まれていた。
昭和一桁生まれ、戦後の団塊の世代、生まれた時からテレビのあった世代、団塊の世代の子供たち、生まれた時からインターネットのあった世代、生まれた時から携帯端末があった世代、それぞれ情緒は違う。
違う情緒を持つと価値観や行動が変わる。違う世代と通じ合うために、自分の個性を心を込めて表現する。それが「常若」「他己社会」である。「他己社会」の根底にある気持ちは、世の中の役に立ち、誰かの役に立ちたい、誰かの期待に応えたいという気持ちである。
●高校1年生のビジネス基礎
そこで、「ありたい自分」とそこに向かう道筋を発表する高校1年生のビジネス基礎では、人生の目的について400字程度の作文し、その作文を動画に制作する。2年生のマーケティングでは、1年生で制作した動画を出発点に、自分自身を顧客としてドラッカーの5つの質問への答案を作り、その答案を動画に制作する。
1 キャリアアンカーの結果確認
診断結果は( )タイプ、自分は( )タイプだと思うことにした
2 過去の棚卸し、人生の目的
自分の過去を棚卸ししてみる:過去を振り返って自分が好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、苦手なこと、成功したこと、失敗したこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、怒りを感じること、後悔していること、幸せを感じたこと、自分の良さなどを書き出してみよう。
人生の目的を自覚する:過去を棚卸しすることで、人生の目的が自覚できる(例:何かを明るくする。何かで苦しむ人を助ける、誰かの生活を支えるなど)。
3 人生の目的に応じた道のりをデザインする(1年生)
目的を自覚することで、ありたい自分の姿が明らかになり、そこに向かう道筋をデザインできる。目的を遂げるために、自分はどうである必要があるのか、ありたい自分の姿をイメージしよう。過去の棚卸しや自分らしさと紐づけて何をするか、目的に欠かせないものは何か、今をどう生きるのかを書いてみよう。
世の中との関わり、世の中の役に立つ行動などを書いてみよう。自分事に引き付けてデザインすることが大切である。キャリアをデザインするにあたり、デザイン思考の手法を使ってもよい。
⑴ 目的に至るためにありたい自分の姿(例:何かで活躍している自分、何
かを作っている自分など)
⑵ 何をするか、欠かせないものは何か、今をどう生きるのか
⑶ 世の中との関わり、世の中の役に立つ行動
4 自分の考えを友達と磨き合う
自分の考え、自己評価に他者の視点を取り入れて改善する:自分で作った資料を友達と見せ合い、話し合う。自分が気付いていない良さ・強さを友達から教えてもらい、付け加える。成長したいことを共有して励まし合う。これを何度か繰り返して内容を磨き上げる。
⑴ 気が付いた良さ、強さ
⑵ 成長したいと思うこと
5 発表
富山商業の3つの理念(自主協調、明朗誠実、進取敢闘)、愛と正義を基に動画を製作する
⑴ 人生の目的
⑵ 人生の目的と紐づいた「ありたい自分」
⑶ 卒業式当日にそうありたい自分
⑷ そうありたい自分になるために2年間励むこと
●高校2年生のマーケティング
人生の目的を具体化する2年生のマーケティングの作業の流れは以下の通りである。まずドラッカーの5つの質問、すなわち、①あなたの使命は何か②あなたの顧客は誰か➂顧客の価値は何か④あなたの成長は何か➄あなたの計画は何か、に答える。
次に、①課題の発見②意思決定と合意➂合意に従って協働④振り返りのFIDSと、①観察②問題定義➂創造④プロトタイプ➄テストのデザイン思考で,①人生の目的と価値②使命(ミッション、行動)➂もたらされる成果④大切にしたいこと、そのためになすべきこと(計画)についての答えを考える。
友達と磨き合い、自分の考えに他者の良いところや視点を取り入れ、内容を磨き上げ、400字以内で、①人生の目的とその価値②あなたの人生の目的を顧客とするサービス(あなたのミッション、成果、計画)について発表する.
<課題図書>
⑴ 岡潔『春宵十話』の日本的情緒(49-59頁)
私たちがもっている情緒は打算のない行為の元になっている。打算のない行為は善行である、善行を繰り返すと、情緒が美しくなる。この本は、学校にいる間に培う能力について書いている。
⑵ 谷口正和『文化と芸術の経済学』のはじめに(8-37頁)、コンセプト・トレーニングからu-18(889-1104頁)
自分を表現して人生を生きる「生活芸術家」という生き方を紹介している。量的拡大から質的成長へと社会が転換することに伴う社会現象である。チームワークや中高生の活動が大切であると書いている。