「こども未来戦略方針」は「こどもまんなか」か?

 本日14時半から18時まで「まやかしの少子化・子供政策、亡国のLGBT法案」をテーマに、発起人として長くかかわっているチャンネル桜の討論番組に出演する。
 昨年の出生数は80万人を割り込み、過去最少となる見込みで、政府の予測よりも8年早いペースで少子化が進行している。2030年に入ると、我が国の若年人口は現在の倍速で急減し、少子化は歯止めが利かない状況になることから、2030年代に入るまでの6~7年で少子化傾向を反転できるかが問われている。

●「こども未来戦略方針」の三大課題・基本理念

 6月13日、政府のこども未来戦略会議は「こども未来戦略方針一次元の異なる少子化対策の実現のための『こども未来戦略』の策定に向けて一」を公表した。
 同方針によれば、こども・子育て政策の三大課題は、⑴若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない、⑵子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある、⑶子育ての経済的・精神的負担感や子育て世帯の不公平感が存在する、である。
 少子化対策の基本スタンスは「個人の幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させること」にあり、こども・子育て政策の三大基本理念として、⑴若い世代の所得を増やす、⑵社会全体の構造・意識を変える、⑶全ての子育て世帯を切れ目なく支援する、を掲げている。
 私はかつて第一次安倍政権下の政府の「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議(内閣官房長官を議長とし、関係閣僚9名と有識者7名で構成)の「地域・家族の再生分科会」委員として、「すべての子ども、すべての家族を大切に」という基本的考え方に立脚して、「結婚したいけどできない」若者、「子供を生みたいが躊躇する」若い家族を支援し、どのような厳しい状況に置かれていても、この社会に生まれたすべての子供たちが希望をもって結婚し人生を歩んでいける施策の策定に尽力し、合計特殊出生率を1,75程度まで改善することを目指した。
 
全国に広がった「親になるための学び」

 少子化の主要因は未婚化・晩産化と3歳までは家庭で子供を育てたいと考える「典型的家族」の主産・育児が困難になっている対策が欠落している点にある。
 従来の少子化対策の重点は、主に都市に住む正規雇用者同士の共働き夫婦のための「待機児童ゼロ作戦」とワーク&バランス政策にあった。
 欧州ヒト生殖学会(2010年)で発表された国際調査結果によれば、「36歳を境として女性の妊娠力は低下するか?」という問いに対する正解率は英加は7~8割であったのに対して、日本は3割以下であった。
 この現実を踏まえて、「欲しい時にではなく、産める時に赤ちゃんを」という一大キャンペーンを政府・医学会・民間一体となって展開し、妊娠・出産に関する「生物学的な適齢期」の周知徹底を「親になるための学び」として行う動きが全国に広がった。

●「こどもまんなか」ではない子育て支援策

 また、多子世帯が少ないことから、多子世帯の子育て費用に対する経済的支援を重視し、「多子加算」の充実を図ってきた。「こどもまんなか」「子供ファースト社会」の実現を目指す「こども未来戦略」が、果たして、子供の最善の利益、ウェルビーイング(幸福)を第一に優先しているかが最大の問題点である。
 6月4日の「ノート」の拙稿「子供の幸福を犠牲にする『異次元の少子化対策』」で詳述したように、「ママがいい!」と叫び、保育所の午睡時にすすり泣いている子供の声に耳を傾けないで、子供の幸福を犠牲にした、経済優先、労働政策偏重の「保育サービス」の充実策は少子化対策にはならないことに気づくべきだ。
 第一次安倍政権下の政務官会議「あったかハッピープロジェクト」が発表した中間報告に「経済の物差しから幸福の物差しを取り戻す」と明記したが、このウェルビーイング優先の少子化対策こそが求められている。
 親のみならず、地域社会全体で子供を育てる「共同養育」も重要であるが、「母としての病」「父としての病」が蔓延している現状も踏まえて、親が親として育つことを支援する「親育ち」支援、親のウェルビーイングの向上、教師のウェルビーイングの構築策も時代のニーズと言えよう。
 

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