【その29】愛車とのおわかれ

今年の夏に大切にしていた車を乗り換えた。
付き合いが長いわけでもない、たくさん乗れたわけでもない愛車。
週末しか乗れなかったけれど。

家業を継いで1年経ち、いろいろ考えて法人に組織変更することにして。
でもお金もないし、自分で定款を作ったり、登記を独学で勉強したりして。ハードル低いけど日商簿記3級もちゃんととって。
父が自己流でやっていた仕事も全部きちんとしないとって。
翌年に家族以外のスタッフも迎え入れようとしていて、薬局のありようを違うものにしていく覚悟をしたというか。雰囲気も、規模も。
全部自分で決めたことだから、誰にも頼らずやることを決めて。
(とはいえ税理士さんに途中からアドバイスをいただいて、本当に今でもあの時に寄り添ってくれたことに感謝の念が尽きません)

ちょうど子どもが生まれたばかりで、でも日曜日も仕事をしないと追いつかないくらい大変だったので妻にも迷惑をかけたりして。
だんだん増えてきた在宅や施設、補助金の申請でやってもやっても仕事が終わらない日々が続いて、もう無理だなぁって涙が出ることもあったりして。

それでもやり切ったんです、その日々を。
決算が終わってけっこうな黒字が出て。サラリーマンの時の感覚でスタッフがあと数人いないと回らないくらいの仕事量だったので。
今までそういう数字の概念で仕事をしてこなかったけど、自分ががんばったことが明確に評価された初めての出来事で。

心身をすり減らしたから、何か自分の中で納得できることをしようと思った時に、
「会社員の時には買えなかっただろう、よい車が欲しい」
と思ったんです。
そうじゃないと負担に耐えられなかったし、妻にもそれくらいの結果が出たことを見せたくて。

だから、その車は自分の一番つらかった時期そのもので。
その苦労が全部形になったものだったので。

今回色々な思いがあって手放すことにして、その日々が完全に過去になったんだなと気付いた。
今はたくさんのスタッフさんがいて、あの頃の絶望的に仕事が終わらなかった日にはもう二度と戻らないのだと。
今は二代目の愛車ともっと前向きに仕事をして、家族で楽しんでお出かけしようと思ったりもしています。

最後まで愛車に似合うような自分にはならなかったんですけどね

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