ポンコツハケンとスーパーハッカー⑨
どうやら及川 逸郎に何か起こったようだ。 スマホが示す 彼の位置情報は、普段 彼が行かないような地区を示している。
僕は 引き続き あの商材 会社を調べていた。そうしてあることがわかった。 どうやらあの会社はビットコインが1万円ぐらいの時から投資していたようで、今やその価値は千倍以上に膨らんでいた。 ざっと計算しただけで 百億円以上の資産を所有している。
しかし、どうやら 北朝鮮のハッカーにハッキングされてほとんど 奪われてしまったようだ。
あの会社からの接触はない。 ないが 、この沈黙は奪い返せというメッセージだろう。 あの会社は 、及川の背後に強烈なハッカー集団がいると勘違いしている。 及川を解放するためには、あの 仮想通貨を奪い返さなければならない。 それについて 僕はかなり悩んだ。 ダークウェブ内で行われたであろう 仮想通貨の取引 追跡はとても難しい。 途中 いくつかの ウォレットを経由していることだろう。 たとえ ダークウェブ内であろうと最終的なウォレットを突き止めれば、奪い返すことはできるかも知れない。 しかしそれは盗まれたものを盗み返すという行為で、ネット上に何も残さない、侵入さえ気づかれない、という僕の心情には反する。 そして仮想通貨が移動するという事実は決して消せない。僕はネット上に 足跡を残すことになる。
色々と悩んだが、僕は 及川 逸郎を助けることにした。 彼は拉致されていて、 ヘタをすれば殺されるかもしれない。 僕の周りで、僕のしかたことが原因で、結果的に 人を死なせることはできれば 避けたい。 これは長い戦いになるかもしれない。