![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/140802056/rectangle_large_type_2_94582be8a94510977f7aa6b952ae7df9.jpeg?width=1200)
ポンコツハケンとスーパーハッカー⑧
昨日あの少年がまた私を訪ねてきた。 そしてここ 2、3日は気をつけろ、とか 意味不明なことを言って去っていった。 彼は自分でハッキングが得意だとか言ってたな、それで私のことを調べて 知っているのだろう。 まあ、それはどうでもいいことだ、もう彼と関わることはないだろう。
そんなことよりも、明日から3日間 仕事がない。 今月は半分しか シフトが入っていない。 生活が不安だ。
そんなことを考えながら歩いていると、何だか 黒ずくめの怪しい男数人に囲まれていた。
「及川一郎さんですね?」
「そうですけど。」
「ちょっとご同行願いますか。」
そういうと彼らは私を 車へ押し込んだ。こんなことなら 学生時代に何かスポーツをやっておけばよかった、柔道とか空手とか ボクシングとかそのあたりのスポーツをやっていればこんなにも無抵抗に車に押し込められることはなかっただろう。何という弱さだ、 今回改めて自覚したが、私はこれからもずっとその弱さとともに生きていかねばならない。私は無力だ。もうどうでも良かった。
ところが 男たちは私に対して全く 暴力的ではなかった。 スマホは 取り上げられたが、彼らはとても 紳士的に私を扱った。私は、おそらく 郊外にある 5階建てのマンションの一室に連れて行かれた。2 DK の普通の部屋だった。 風呂も水道もあり、キッチンの冷蔵庫には冷えた飲み物も入っていた。 そして快適なベッドもあった。 私はどうしてここに連れて来られたのか、 わからなかった。 男たちに聞いてみたが 、彼らは何も答えなかった。
どういう細工をしたのかわからないが、ドアは内側からは開かなかった。それでも 恐怖を感じなかったのは、部屋に十分な設備があったからだ。 そして 午後7時になると食事が運ばれてきた。 ウーバーで注文しているような食事で、 ハンバーグのセットだった。 私はそれを食べて寝た。 予想に反してぐっすりと眠った。