月が綺麗ですね、って誰が言ったの?
今は昔、夏目漱石が、英語教師をしていたころ。
教科書に載っていた「I love you」を「月が綺麗ですね、とでも訳しておきなさい」と言ったとか言わないとか。
直接ストレートに愛を語るのではなく。
綺麗な月を「あなた」と一緒に見ていたい、とさりげなくアピールしてみたり。
白くやわらかく光る満月、あるいは凛とした佇まいの三日月に「あなた」を重ねてみたり。
さすが漱石先生、風流ですねぇ。
そんな感じなんだと…思う。たぶん。知らんけど。
あ、ケンカ売ってるわけではございませぬ。
『私なら「愛」「好き」という言葉を使わずに、どうやって愛を伝える?』と考える言葉あそび自体は、おもしろいし、好き。
自分の持っている世界観や経験から、言葉を重ねてふくらませて…っていうのも大好物。
その上でね、「一次資料プリーズ!!」と、大学でレポートの書き方を叩き込まれた身としては、ムズムズもするのです。
引用のルール守りたい…どこからこのエピソード出てきたんだろう…ヘイSiri、教えてよ!
漱石の教え子の言い伝えだって話を、どこかで聞きかじったことあるような、ないような。←ほらこうやってまた、無邪気に無責任に切り離されていくのよ
当時も「漱石先生めっちゃクール。わかりみ深すぎてぴえん超えてぱおん」なんて感じで、バズりまくったんだろうか。←あくまでも妄想です
え、はっきりした文献が残されてない、都市伝説だって話も出てきたぞ。
仮に、漱石(的な詩的センスあふれるすごい人)が言ったとして。
漱石は、どんな文脈の中の「I love you」に対して「月」という単語を持ち出したのか?
太陽ではなく花ではなく猫でもなく、月じゃなきゃダメだったのか?
適当に選んだのがたまたま月だったのか?
実際に「私」と「あなた」の頭上に月が出ているシーンだったのか?
そこを深掘りしたくなる。それこそ月の果てまで。
そういう背景から切り離され、コピペされ、拡散されていくのが、なんだか、ちょっと惜しいような。
『あなたなら、「I love you」をどう訳す?』という拡散ツイートが、気にはなりつつ、ハスに構えてしまうのです。
明日は十五夜。
漱石せんせー、こんな月のことですかねぇ?
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漱石は
哀しからずや
文脈から
切り離されて
拡散されて
(高橋)