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今まで作製したカメラまとめ

挨拶と概要

カメラばかり作りすぎて、肝心の写真がなかなか撮れていないのが現状です。「ステートメントのためにカメラを作ることは、エンジニアとしての嗜みである」と常々思っていますが、制作に時間をかけすぎて撮影にまで至らないのは、自分の大きな弱点だと感じています。

とはいえ、これまで頑張って作り上げてきたカメラたち。私にとって、カメラは単なる道具ではなく、それ自体が作品と呼べる存在になりたい――そんな思いもあります。

今回の記事では、これまで作製したカメラと、それを使った作品群をまとめたポートフォリオを公開しています。少々長めの記事ではありますが、私がカメラ制作に至る変遷を辿る意味でも、読みごたえのある内容になっていると思います。お時間のある方はぜひご覧ください。


1)スリットシャッターマウントアダプター

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記念すべき第一弾の自作作品がこちらです。私のスリットスキャンはここから始まりました。2015年に制作したこのカメラは、当時としても(そして今でも)画期的なアイデア――マウントアダプターにシャッターを組み込むというコンセプトに基づいています。

この時期はマイコン制御についての知識がなかったため、モーターのスピードをプラネタリギアで減速させ、さらに電流量でスピードを制御するという、かなり独創的で驚きの手法でスリットスキャンに挑戦していました。この初期の試行錯誤が、後の技術的挑戦の原点となっています。

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いまだに、シャッターを内蔵したマウントアダプターを作っている人を見たことがありません。この点では、自分のアイデアの独自性を誇りに思っています。

とはいえ、この作品には多くの問題も抱えていました。実は、このカメラでセルフポートレートを1枚撮影したのですが、HDDクラッシュの際にその写真データが失われてしまったようです。本当に残念でなりません。


2)スキャナカメラver.01

スキャナカメラ2

私が初めて作ったスキャナカメラは、大判サイズのものでした。使用したスキャナはCanonのLiDE20(CIS)。このカメラを2015年のリアルポートレートで作品と共に出展しました。

もともとはスリットシャッターこそが「私の正義」と思っていましたが、調べているうちにスキャナカメラという存在をブログで見つけたのがきっかけでした。

このカメラにはいくつかの問題がありました。CISスキャナの宿命とも言える大きな筐体サイズや、モノクロしか撮影できない点、そして何より「まっとうなカメラ」ではなかったことです。8×10サイズに対応する設計にしたものの、私自身が8×10カメラを持っていなかったため、完成した筐体は正直かなりお粗末なものになりました。特にホロ部分には穴が空いていて、暗い部屋でしか撮影できないという状況でした。

それでも、このカメラで撮影した写真はどれも最高にカッコよく仕上がっています。ぜひ、見てみてください!

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3)スリットシャッターカメラ

スリットシャッターカメラ

スリットシャッターをマウントアダプター化したものの、ギアの変速によるスピード変更には無理がありすぎました。また、スリットが絞りの役割を果たすため、センサから離れた位置に細いスリットを配置すると、回折光の影響で実際のスリット幅以上に広がって見えてしまうという問題がありました。

そこで改良を加え、センサ近傍にシャッターを設置したこのカメラを作製しました。

スキャナーカメラを作った私が再びスリットシャッターに挑戦することを決意した理由の一つは、当時【撮って出し至上主義】だったからです。まあ、今でもその考えに近い部分はありますが…。

この考え方の背景には、フィルムでも同様の写真が撮れるという点や、exifデータが残ることの重要性がありました。スキャナでもexifデータは残りますが、それが紙媒体をスキャンしたものだと誤解されるのは少し悲しい気持ちになりますよね。

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4)スキャナカメラver.02

スキャナカメラ

撮って出し至上主義を捨て、スキャナカメラに注力した2016年。この年に作製したカメラは、最も使用頻度の高いスキャナカメラとなりました。詳細は下記をご覧ください。

2024年現在、私が使用しているスキャナカメラは、2016年当時に作ったものと大きく構造が変わっていません。そのため、これが私にとっての「スタンダードモデル」といえる存在です。

真っ赤なカメラを三脚にセットし、Macを広げながら外で撮影していた日々が、今でも懐かしく思い出されます。このカメラは、私の撮影スタイルを象徴する一台と言えるでしょう。

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5)自作デジカメケースver.01

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フィルムカメラのような操作感をデジタルカメラで実現したいという思いからスタートしたこのデジカメケース。当時、スキャナカメラのような特殊撮影以外では、特にローライ35が私の好きなカメラでした。そのローライ35のような撮影体験を目指して、このプロジェクトを始めました。

目測式、換算40~50mmのレンズ、絞り優先オート、そして余計なボタンを一切排除したシンプルな構成のカメラを作りたくて、最初に手掛けたのがこのカメラです。シャッターボタンすら木製という、どこか小学生の自由研究を思わせるような手作り感あふれるカメラですが、そこにこそ自分らしさが詰まっていると感じています。


6)MIRAGEレンズ

写ルンですレンズ

これは、写ルンですのレンズをボディキャップに取り付けただけのシンプルなレンズです。当時、写ルンですのストロボユニットを集めていた際に余ったパーツを活用して作った記憶があります。一応技術的な話をすると、中央のレンズだけはフランジバックに合わせて設置し、青と赤に塗ったレンズは、意図的にピントを外す位置に取り付けています。

もともとはモデルの方を撮影する予定だったのですが、天候が思わしくなく、急遽代わりに撮影できるアイテムとして作ったという背景もあります。

このレンズで撮影した写真の描写は個人的にとても気に入っていますが、私のステートメントとは一致しないため、普段は単なるボディキャップとして装着されていることがほとんどです。

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7)自作デジカメケースver.02

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「らいおん丸」という唯一無二のカメラを作り上げた、いなばゆたか氏に触発され、「自分も新しいデジカメを作る!」と意気込んで制作したカメラです。基本的な構造は前作と同様ですが、ストロボを設置し、ファインダーの位置をレンズ近傍に移動させることで視差を小さくする改良を加えました。

「絞って撮るならレンジファインダーは不要」「男は黙ってストロボを焚く」という精神で仕上げた、私なりの挑戦作です。

詳細は下記をご覧下さい。

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8)ぷりくらカメラ

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2018年、最も注力したのは、私にとって最初で最後(の予定)の個展でした。今でも「あれは自分史上最高の展示だった」と自負しています。その際、展示用に作成したのが、このカメラ。通称【ぷりくら】です。

このカメラについて詳しく説明すると長くなりますので、詳細は下記をご参照ください。


9)各種レンズのEマウント化

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通称「毒にも薬にもならないレンズたち」。個展の前後にたくさん作りました。これらのレンズを作った理由は、描写の面白さを追求するだけでなく、オールドレンズが単なる汚れや変形による癖があるだけで高価に取引されている現状に疑問を感じたからです。それなら、世の中の最良のジャンクレンズたちをいじって意図的に「改悪」することで、新たな価値を生み出そうと考えました。

途中で3Dプリンタを手に入れたことで、表現の幅が大きく広がり、さらに多くのことに挑戦できるようになりました。

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10)サーキットベンディングカメラ

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デジタルカメラのセンサーにあるアナログ回路を改造し、意図的にバグ写真を生み出すことを目的としたカメラです。撮影時に発生するノイズは圧倒的で、まさにロックそのもの。

このカメラは「きれいな写真だけが全てではない」ということを改めて実感させてくれる存在です。

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11)ターレットマウントアダプター

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レンズをマウントアダプター化したものの、全く使わないままになっていた状況を打破するために制作した、まさにロマンの塊のようなカメラです。



12)スキャナカメラver.04

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モデル【Integration】。パソコンとの一体型を試みたスキャナカメラです。3Dプリンタのみで作成した筐体は、大きさの割に軽そうに見えますが、実際はやはり重たい仕上がりに。そして、組み込んだ小型パソコンが性能不足で全く使えなかったという、少し悲しい結果に終わりました。

それでも、このカメラは当時の私にとって大きなブレイクスルーになるはずだった一点です。詳細は下記をご覧ください。


13)定点観察カメラ

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我が家の日常を、本当にありのまま記録するために作ったカメラです。いわゆる定点カメラで、我が家のリビングで常時撮影が行われています。

定点カメラは本当に面白いので、もし同居人の同意が得られるなら、ぜひ始めてみることをおすすめします。きっと新しい発見があって、楽しいですよ!

ちなみに、このカメラで撮影した写真は、以前ひとり暮らしをしていた頃の記録写真が作風のベースとなっています。これらの写真は「男のセルフポートレート展」に出展した際にも使用しました。

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14)スキャナカメラver.05,06

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スキャナのスピードに変化をつけたいという目的で改良を加え、バージョンアップしました。この変更により、スキャナカメラの自由度が飛躍的に向上し、より多様な撮影が可能になりました。

15)スキャナカメラ2024【SEPA】

ついにHASSELBLADのスキャンバック化に成功したカメラです。スキャナカメラ【Integration】や【Ver05,06】と比較すると、カメラ以外の部品を切り離す設計に変更したことで、操作性が大幅に向上しました。


16)サーキットベンディング対応スキャナ(SJ-01)

スキャナをサーキットベンディングで改造することで、スキャナ特有の写真を組み合わせたミキシングや、ノイズを活かした表現が可能になった作品です。


おわりに

このポートフォリオページは随時更新していく予定です。実は、他にも作成済みで作例もあるカメラがいくつかありますが、諸事情により掲載できないものも含まれています。

以前もお伝えしたことがありますが、カメラはあくまで「道具」です。必要に応じた道具を使うことが最も重要だと考えています。

私自身、カメラが好きであることは否定しませんが、カメラを作る際の発想は常に「写真ありき」です。「こういった写真を撮りたい、だからカメラを作る」という考えを基に制作しています。そのため、市販品で撮れる写真であれば市販のカメラを使用すれば十分だと思っています。また、市販品に対抗するようなカメラを作るつもりもありません。市販のカメラは、多くのエンジニアの方々が長年積み重ねてきた努力の結晶であり、それを超えるものを自作することは到底できないと感じています。

私のカメラ制作は、量産や販売を目的としたものではなく、完全に自己満足の領域です。しかし、だからこそ、私が作ったカメラは私らしい作品として昇華されるのではないかと考えています。

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takahashitoshio
自作で機材作ったり、展示物のギミック作るとお金かかるんです…。ストレスで甘いもの食べまくるから…。そんなわけで、俺に少しでも甘いもの食べてもらいたいって人はよろしくお願いします!