[dual] #1 ガム
自分の中の矛盾が憎い。
曖昧さに嫌気がさし、つい極端になってしまう。
そんな感覚を対話させる試み、これをdualと名付けた。
味のしなくなったガムは、生きることに似ている。
もう味がしないと思っていたのだが、一噛みだけ味がした。
そんな記憶のせいで、まだ味が残っているのかもしれないと期待してしまう。
人生の過程で、幸福に思えることも、不幸に思えることも、全ては不規則に思わぬタイミングで訪れる。
そこに意味がないことに気付いたとしても、私は噛むことをやめられない。
無意味であるということを、完全に信じることができないから。
私は不幸にも、無味の中にある一瞬の幸福を知ってしまったから。
噛む動作は退屈だ。
しかし、口の寂しさを凌ぐことはできる。
私はいつガムを捨てるべきなのだろうか。