タカハ劇団『美談殺人』公演延期のお知らせ
タカハ劇団第17回公演『美談殺人』公演延期のお知らせ
(文責:タカハ劇団主宰 高羽彩)
昨日(2021年1月4日)午前、「政府は週内にも緊急事態宣言発出の予定」との報道があり、また菅内閣総理大臣の年頭記者会見でもその旨が表明されました。
それを受け、21年1月13日から17日まで開催を予定していたタカハ劇団第17回公演『美談殺人』の公演は、延期することにいたしました。
楽しみにしていて下さった皆様、ご声援下さった皆様、またこの公演の為にご尽力いただいた多くの皆様、ご期待を裏切る形となってしまい大変申し訳ありません。
ただいま、チケット払い戻しのための準備を進めております。
チケットの払い戻し方法等につきましては、準備整い次第速やかにお知らせいたしますので、もう少々お待ち下さいませ。
以下で公演延期決定へいたる経緯をご説明いたします。
少し長いですが、ご高覧頂けますと幸いです。
この企画は当初より「政府から特別の要請がない限り公演は決行する」という判断基準のもと準備して参りました。(この判断基準の意図については、こちらで記事にしておりますのでよろしければご覧下さい)
年始の2日、「一都三県の知事が政府に緊急事態宣言発出を要請」と報道があった時、私は動揺しました。ついにその時が来てしまったのか、政府から特別の要請来るのか?!と。しかし、その後の西村経済再生担当大臣と四知事の合同会見を受け、さらに動揺し、混乱しました。
西村大臣曰く「緊急事態宣言発出が視野に入る厳しい状況との認識を共有した」とのこと。
……つまり?
出るの? 出ないの?
この時最も私を苦しめたのは「公演が出来るか出来ないかわからないまま、稽古最終週という創作の苦しみも喜びも全てが最も高い純度で現れる特異な期間を乗り越えなければならないのか」という予感でした。やれば出来る、その自信はありましたが非常に苦しい戦いになる事は明らかでした。その覚悟がようやくでき稽古場へ向かう準備をしていた4日朝、「政府が週内にも緊急事態宣言を発出する方向で検討」との速報がありました。
脊髄を冷たい水がすぅと流れ落ちるような感覚がありました。と同時に、もう迷わなくていいんだという安堵も、情けないことに感じてしまいました。稽古場に向かう道中、すでに私の心は固まっていました。公演が出来ないのなら、なるべく早く公演延期の準備に取りかかろう。この作品を立ち消えにはさせない。必ずもっと良い環境で、高いクオリティでお客様の元に届けよう。
稽古場に着き、現場にいたスタッフたちとの話し合いを手短にすませた後、私は出演者達に公演延期の旨を伝えました。公演は延期にします、稽古場は今日でひとまず解散です、これまでかかった経費・ギャランティの支払いや延期の段取りについては、おってご連絡いたします……。
出演者達のマスクに隠された表情。目元は「しょうがないよ」と優しく笑っているように見えましたが、その心中はいかばかりのものか。「残念だったね」と肩を抱き合い酒を飲み交わすことも出来ないまま、カンパニーはひとまずの解散となりました。
稽古場の片付けを簡単に済ませ帰宅した頃「映画館や劇場は規制の対象外にする方針で検討」との報に触れました。
正直、もう本当に正直に申し上げますと「やっちまったかもしれん……」と思いました。「これはもしかしたら、公演できるやつだったかもしれん」「判断が早すぎたかもしれん」「間違ったかもしれん」そんな思いが胸に泡立ちました。が、延期の決定を覆すつもりはありません。
まだ緊急事態宣言の詳細な内容は発表されていませんが、仮に劇場公演が許される内容だったとしても、それが創作に、観劇に、望ましい環境をもたらすものとは、私には思えなかったからです。
もちろんこの状況で公演決行を選ぶカンパニーは多いと思います。その判断は素晴らしいものです。全力で支持します。応援します。『美談殺人』のスケジュールが空いたので、そこを観劇にあてようと思ってます。
ただ「中止でなく延期」そのカードが切れるのなら、タカハ劇団はそちらに賭けることにします。
演劇興行の延期には大きなハードルがあります。
しかし、この企画に参加してくれた素晴らしい出演者達、素晴らしいスタッフ達、そして小劇場演劇のバリアフリー化という新しい試みに協力してくださった、PalabraさんTA-netさん、全員でまた再び劇場でお客様をお迎えできるよう力の限り尽くしてまいります。
どうか、これからもタカハ劇団を応援してくださいますよう、よろしくお願いいたします。
2021年1月5日 タカハ劇団主宰 高羽彩