歓喜と後悔入り交じる悲願
2023年のプロ野球交流戦は、4球団が同率首位となった大接戦の末我らが横浜DeNAベイスターズが悲願の初優勝を果たした。1998年の日本一以降あらゆる優勝から遠ざかってたDeNAがやっと掴んだ栄光。交流戦とはいえ素直に嬉しい。
そもそも今季のDeNAは近年でトップクラスのスタートダッシュに成功した。開幕4連敗を喫したものの、3・4月は16勝7敗と大健闘し首位に立っていた。しかし5月に入ってからは4連敗と6連敗を経験し8勝12敗1分と失速。阪神の快進撃もあり阪神からかなりのゲーム差をつけられて首位から陥落してしまった。かなりよろしくない状態で交流戦を迎える形になった。
1カード目は仙台で東北楽天ゴールデンイーグルスとの3連戦。則本、田中将大、瀧中と好投手たちと戦い2勝1敗と2週間ぶりのカード勝ち越しに成功した。3戦目に関しては11-3と大勝していいスタートを切った。この大勝が優勝に繋がっていくわけであるとはこの時には考えもしなかった。
2カード目は本拠地横浜スタジアムに戻って埼玉西武ライオンズとの3連戦。このカードは「GET THE FLAG! SERIES 2023」と銘打たれ、最後に日本一を果たした1998年当時のユニホームで戦うことになった。5年前だかにもやったがその際の記憶はあまりいいものではなく、正直かなり不安だった。
しかしそんな不安もなんのその、バウアーの好投・4点差大逆転とこのカードも勝ち越すことができた。この時バウアーが今のユニホームをいずれ98年のもののようにベイスターズの歴史に残るようにしたい(概要)という発言には心を打たれた。
3カード目は福岡にてソフトバンクホークスとの対戦。ここでDeNAは苦戦を強いられることになった。二軍でもあまり調子が良くなかった状態で急遽登板することになった有原航平に完全に抑えられてしまったのだ。試合は9回裏に伊勢がサヨナラ打を許してしまった。翌日は石田健大がソフトバンク打線に捕まり敗戦。最終戦は東が好投してオースティンが3打点と大暴れした。8回9回とソフトバンク打線の追い上げに苦しめられたもののなんとか逃げ切って3タテは回避することができた。
4カード目は京セラドームにてオリックス・バファローズとの対戦。正直このカードがターニングポイントといっても過言ではない。初戦はバウアーと山下舜平大との投げ合いだった。当時舜平大はプロ初勝利から破竹の5連勝と凄まじい成績を残していた。5回までにDeNA打線は1点しか奪うことができず苦戦を強いられた。しかし6回表に打線が攻め込み、相手の守備のミスに乗じて3点を奪って逆転しまさかの形で勝利。
2戦目は落として3戦目は侍ジャパンにも選出された宮城大弥との対戦。宮城は前回登板で中日相手に完封していたため厳しい試合を予想していた。しかし初回から打線が爆発し、今季それまでHRを被弾していなかった宮城から3本塁打などで5回8得点。 思ってなかった形でこのカードも勝ち越すことが出来た。またこの試合はバウアーが観客席に現れて一騒動が起きた。応援団の旗を振りたかったってまじかよ。
5カード目はハマスタで北海道日本ハムファイターズとの対戦。この時点で残り試合は全てハマスタとなり、巨人と同率で首位のチームは三浦監督の号令のもとで優勝を意識した6試合に挑んだ。
初戦は関根大気・桑原将志の1・2番コンビが躍動し、それに今永昇太が応える形で投打が噛み合い勝利。2戦目は初めての中4日登板となったバウアーが完投勝ち。いい形で6連戦をスタートできた。3戦目は雨が降っている状態で試合が始まった。初回に牧秀悟の3ランで先制したものの投手に酷な環境なのはお互い様だったようで追いつかれてしまい、最終的にはノーゲームとなった。
最終カードはパ・リーグ首位の千葉ロッテマリーンズとの対戦となった。初戦は長らく調整していた濵口を投入した。交流戦に強い濵口で勝負に出たが初回にいきなり3失点と苦しい立ち上がりになってしまった。終盤に1点差まで追い上げたものの直後に突き放されて敗北を喫した。
この時点で交流戦優勝はかなり厳しいものとなりつつあった。首位巨人が残り2戦を全敗した上でDeNAは2勝以上しなければならなかった。人事を尽くして天命を待つしか無くなった。2戦目は序盤と終盤に打線が爆発して1-10で快勝して巨人が敗北。
まだ可能性が残された形になったDeNAに難関が立ちはだかる。皆さんご存知の佐々木朗希だ。前回登板で165km/hを記録した怪物右腕と相対することとなった。序盤は豪速球に苦しめられたDeNA打線。監督も積極的にリクエストを活用したが不発で終わってしまい2回でリクエストを使い切ってしまった。3回表には中村奨吾にソロHRを被弾し、苦しい始まりとなってしまった。ところがどっこい、ここまで交流戦で何故か並みいる好投手を任してきたDeNA打線がここから襲いかかる。4回裏、まずはそっくりさん軍団が見守る中で牧が同点タイムリーを放ち、6回裏は先頭の関根が四球からチャンスメイクしてまたもや牧が逆転タイムリー、さらに直後の宮﨑が佐々木朗希の159km/hの初球ストレートをライトスタンドに弾き飛ばして一挙勝ち越しに成功した。更に8回裏には今季苦しんでいる神里に2点タイムリーが飛び出し、崖っぷちから一気に優勝戦線最前線へ躍り出た。この神里のタイムリーが最後優勝決定打になるとはまだこの時も思っていなかった。
この時点でDeNAは1試合残して、全試合消化した巨人、オリックス、ソフトバンクと勝ち星で並んでいる状態であった。DeNAは残り1試合、勝てば文句なし優勝、引き分けでも勝率で優勝確定、仮に敗戦しても点差次第では優勝の可能性が残されているとの状態だった。今回かなり話題になったTQBという指標である。計算方法は、(得点/攻撃イニング)-(失点/守備イニング)とめちゃくちゃ複雑な指標である。ファンとしては、ごちゃごちゃめんどくさいし勝って決めようぜとしか思っていなかった。現場もそうだっただろうと思う。
そんな大事な一戦で番長は上茶谷を先発で起用した。上茶谷は今年は中継ぎとして帯同し、ロングリリーフに火消しに欠かせない存在となっていた。今季初先発となった上茶谷は期待に応えて4回無失点。上々の立ち上がりであった。
この日の試合後3日間試合がないDeNAはここから中継ぎ総力戦を選択した。5回に三嶋にスイッチした。今季難病から復活した三嶋だが、交流戦に関しては少し打たれる場面があり6月10日以来9日ぶりのマウンドとなった。正直そんなこと全く意識せず見てたがいきなりハンソンにソロHRを許してしまった。それだけにとどまらず山本祐大の落球と2本の安打で無死満塁となり、1アウトも取れずに降板となってしまった。大誤算だったのは否めない。DAZN越しにみてて目が死んでいるように見えてしまった。
これ以上傷を広げたくないDeNAはここで森原を投入した。今年の森原は準勝ちパターン格として回転していた。しかし、5月31日の楽天戦の試合前に球場での不慮の事故により抹消を余儀なくされた。そこからまた復帰していたのだ。最初に対峙した清宮幸太郎をセカンドライナーからの併殺に仕留め、続く去年の首位打者の松本剛を見逃し三振と最高の火消しをしてくれた。日ハムにいきかけた流れを最高の形で戻した形になった。
6回表は入江がきっちり抑え、直後にDeNAが誇る得点圏の鬼・大和の同点タイムリーで試合を振り出しに戻した。
7回表はウェンデルケンが抑え、直後に安打とエラーと死球によってチャンスを作りキャプテンの佐野恵太が値千金の勝ち越し2点タイムリー。これであとは勝利の方程式に当てはめるだけだった。
8回表、満を持して伊勢がマウンドに上がる。しかし、先頭に安打を打たれ、続く2者に四球を許して無死満塁。もう信じるしかなかった。しかし現実は残酷で、マルティネスに同点タイムリーを許してしまった。この時点で控えには山﨑康晃、坂本裕哉、エスコバーしか残っていなかった。しかし何としても逆転だけは許していけない。現場も苦渋の決断だったであろう。現場はエスコバーにスイッチすることを選択した。三嶋に続いて伊勢も1アウトすら取ることが出来ずに降板する形になってしまった。もうこれまでか...と思った。しかしまだ諦められない。ここでエスコバーが渾身の投球を披露した。先頭のハンソンをまずは遊飛、続く谷内亮太を一邪飛、最後の細川凌平を見逃し三振。土俵際に追い詰められたチームを救う投球だった。今季打たれる機会が多かったエスコバーであったが、エスコバーの底力をみた気がした。
直後に2死満塁と追い詰めるも得点は奪えず、エスコバーは回跨ぎ。もう死力を尽くした戦いだった。
10回表DeNAは守護神・山﨑康晃を投入した。なんとしてでも抑えてほしい場面だった。しかし、ここで万波中正にソロHRを献上してしまった。これが決勝打となりチームは敗戦。あとは楽天の結果を待つことになった。
TQBを鑑みてこの時点で交流戦優勝は堅いものとなった。しかし、勝って優勝を決めたかった。最終的には翌日楽天が敗北して悲願の交流戦初優勝を果たした。自分が考えるに、大勝はあれど大敗をしなかったこと、最終戦以外は延長戦もなく勝負が決したことがTQBで上回った要因だろうと思う。
思い返せば'15年に3勝14敗1分と大惨敗を喫したとこから優勝までよく辿りつけた。しかし、だからこそ最終戦勝って文句なしで優勝を飾りたかった。まあ今更嘆いても仕方ないし、こういう優勝もDeNAらしいっちゃらしいなり方かもしれない。ただそんなこと言ってたらいつリーグ優勝・日本一は果たせるのかとは思う。どこか悔しい記憶も入り交じった成功体験となった。
結果的には優勝していい形でリーグ戦に戻ることになったが、最終戦を見る限り中継ぎにはかなりの不安が残った。'98年以来のリーグ優勝・日本一に向けて、まだまだ負けられない戦いは続く。
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