待望のアルバム
2023年3月12日、相撲の聖地両国国技館にて行われた戦極29章は、約1年3ヶ月振りにMCバトルに復帰したSAMさんの優勝で終わった。ファンとしてはこれ以上嬉しいことはないわけでありまして、改めて優勝おめでとうございます。ってことでございます。話が早速逸れたが、今回は戦極29章ではなく同日に配信されたSAM改め舟平さんのアルバム『NATURAL』についてお話したい。
SAMさんは2022年3月に配信したEP『Day College』より音源の名義を本名である''舟平''に変更して活動している。またこの時に1年間のMCバトル休止とアルバム制作を宣言した。そして1年間音源を少しずつリリースしたり、各地にLIVEにいったりしていた。その中で完成したのが今回リリースされた『NATURAL』である。
『NATURAL』は全11曲収録され、総時間は31分となっている。曲数は多いがあっという間に聴けるアルバムである。SAM/舟平ファンはもちろん、バトルのSAMさんしか知らない方々にもぜひ聴いてほしい。ここからは1曲ずつちょこちょこ感想をお話していきたい。
Free Style
1曲目いわゆるリード曲かと思われたが、分数(1分28秒)を考えるとリード曲じゃない可能性もある。「知識は過去、意識は今」「喋るのが知性、喋らずが品性」の部分が印象的だった。バトルのイメージからSAMさんと言うと印象に残る韻や洒落た言い回しをイメージする人は多いと思う。実際それもSAMさんの魅力に間違いないが、こういったフレーズこそ自分の心にスっと入ってきたりする。そこも魅力だと僕は思う。
BAKA(feat. 23FRS)
この音源は去年のUMB栃木予選をはじめLIVEでたくさん披露してたイメージがあり、個人的に密かにタイトルがどうなるかを考えたりしてた。「MV乗ってるオープンカー でもリースで切ってる領収書」って終わり方がすごい印象的で領収書から''receipt''とかになるかなと思ったが結果は全く違った。
リリックをみると舟平さんの音源にしては攻撃的で割と珍しいなと思った。舟平さんの音源はどちらかというと内向的なリリックが多いイメージがある。それが「それっぽい顔でそれっぽいことを言えばそれっぽい奴はついてくるっぽい」や「MV乗ってるオープンカー でもリースで切ってる領収書 え?」だったりラストの「見栄のペイント塗ったフェイス 引っ剥がすぜ根こそぎ」と、結構棘を感じるリリックが印象に残ってて新鮮に感じた。
23FRSさんとは「VISION」という音源も出しているのでチェックしてほしい。
※「VISION」のMV
⇒ https://youtu.be/uqvU0rGu_2A
Stunt Man(feat. B.I.G.JOHN)
音楽の知識が無さすぎて違ったら申し訳ないが、ドリル気味のビートで新たな舟平さんを見た気分になった。空気読マズ。の時も思ったが、普段オシャレなトラックの音源が多い中で今回のようなゴリゴリとしたビートの上でラップすると今度はめちゃくちゃカッコよくなってく様は圧巻だった。
MVではサングラスをかけてる舟平さんというこれまた珍しい舟平さんを堪能することができる。
※「Stunt Man」のMV
⇒ https://youtu.be/TKVQ7reAMl8
「空気読マズ。」のMV
⇒ https://youtu.be/1I1nVY7HNQI
skit
skitってなんだろうと思い調べたがいまいちピンとこなかった。ようは曲中の会話だったり曲間を繋げたりするようだ。捉え方違うかもだけど...()
YELLOW NIGHT
BAKA、Stunt Manとゴリゴリとした音源が続いた中でここで打って変わってオシャレな音源に変わる。意識したかは分からないがアルバムの曲順の決め方も考えてるだろうと思うし気になるところだ。
この音源は2022年11月15日、すなわち舟平さんの誕生日にMVが公開された。なんとかなる、Back Chapterに続いて3年連続で誕生日に音源リリースとなった。下に貼っておくのでほかの2曲も聴いてほしい。「なんとかなる」はfeatにSAMさんの憧れである般若さんが参加しており、「Back Chapter」は"SAM"名義で出した最後のMVである。両方とも思い出深い。
タイトルの通りMVも黄色が強調されており、舟平さんそんなに黄色好きだったっけやとは確かになったがそれでもやっぱりいつもの通りオシャレで、思わず黄色の無地パーカーとスラックスを買ってしまった。なお黄色のスラックスは2回くらいしか履けてない。
リリックに目を向けると「センスとfriends金じゃ買えねぇのさ」「言いてぇことも言えなきゃクソだが言いてぇことだけ言うのもクソだな」のところは特にくらった。また、リリックの中には舟平さんと交流のあるYouTuber「コムドット」のあむぎり氏が出てくるので聞いて探してみてはいかがだろうか。
※ 「YELLOW NIGHT」のMV
⇒ https://youtu.be/yltwalTMw4I
「なんとかなる」のMV
⇒ https://youtu.be/aOx6rsM6Qr4
「Back Chapter」のMV
⇒ https://youtu.be/36LiPVZ2104
Now on
こちらの音源はとにかくhookが個人的に好きで、リリックの途中に出てくるDuke Capoのくだりも「HOT LIFE CRUISE」のヘビー視聴者である私には思わずニヤッとしたくなる場面だった。HOT LIFE CRUISEはSAMさんとIDさんが様々なトークやゲームを繰り広げているYouTube番組であり、Duke Capoはその収録場所である下北沢のバーである。僕も東京に行く時にはお邪魔させていただいてる。それで酒弱いくせに調子こいてたくさん呑んで顔を真っ赤にしている。
coffee break(feat. L.C.)
L.C.さんのバースにもある通り2年ほど前に同じ2人で「Time」をリリースして以来の作品となった。ちなみに舟平さんが音源等でよく口にする「イケイケは謙虚であることが前提」はTimeのL.C.(当時MIKADO)さんのバースで出てくる。
舟平さんはお酒をほぼ飲まない代わりにコーヒーをよく飲む印象がある。ちなみにコーヒーの描写は「絶品Trip」(SKRYUさんとWAZGOGGさんとの共作)の冒頭にも出てくる。この音源の舟平さんのバースでも「Pick upするcoffee 数は13 Makeするcoffee 数は23」とコーヒーの描写が出てくる。
ぜひコーヒー飲める人はコーヒー飲みながら聴いてみてほしい。
※「Time」のMV
⇒ https://youtu.be/0cl1NDFvNRc
「絶品Trip」のMV
⇒ https://youtu.be/I29GK4TwG6Q
TEKITOU(feat. 椋子)
この音源は全体的に舟平さんの普段の生活を歌ったように感じられる。舟平さんがバトルでも常々言っている等身大がまさに表現されている。「埼玉生まれ栃木の育ち 地元のタメの2割が友達」とZeebraさんのサンプリングであろうラインは思わずニヤッとした。
またこの音源ではシンガーソングライターの椋子さんがfeatで入っている。この方は豊橋の出身らしく、どう接点を持ったか気になるところだ。また他ジャンルのアーティストとの共作によってアルバムの中でも異色を放っている。
namida(namida remix)
「namida」は2020年に一度リリースされており、今回収録されているのはremixとなっている。舟平さんの幼少期から学生時代にかけてをフォーカスした内容となっているのだが、かなりシリアスな内容である。これを1ファンが語るのは筋違いであるのでインタビュー記事をみてほしい。「namida」自体はSAM/舟平ファンの中では人気があるのだが、シリアスすぎてなかなか語りづらい部分は正直ある。それをひっくるめてSAMさんを応援している。remixではトラックが変わったのだが、これもなにか意味があるかもしれないと思ったりもする。
※インタビュー(「Freakout!」より)
⇒ https://youtu.be/bcvpqnwPs_s
「namida」のMV(Remix前)
⇒ https://youtu.be/IRI-9yBV2nc
Butter
「namida(namida remix)」から流れで聴くことで舟平さんの過去⇒今現在ライフスタンスを感じれると思う。「まるで長ぇ夢見てるみてぇだな」との始まり方がまず胸をジーンとさせる気がした。全体的にポジティブな内容のリリックでトラックと相まってどこか胸にくる雰囲気があり、LIVEで初めて聴いた時正直涙が出そうになった。hookの「空は青い雲は白い 当たり前を忘れずにいたいのさ」「海は深い 世界は広いけど 俺は俺のままでいたいのさ」がすごい舟平さんらしいというか、当たり前すぎて見えなくなる瞬間がある日常を思い出させてくれるのが個人的に好きである。その直後の「このlifeは心電図 上がる下がる繰り返し今を生きる」というラインがこの音源で一番好きな言い回しで、よく「人生山あり谷あり」的な言い回しを耳にするが、その山あり谷ありの様子を心電図で表現することで珍しい言い回しながら情景が一瞬で思い浮かぶのがほんとに凄いなと思った。
thanks a million(thanks a million remix)
この音源は元々同じレーベルのBCSTさんの「thanks a million」のremixとなっている。「CHANEL PRADA BALENCIAGAよりもHUFのアウター」から始まるのだが、舟平さんは高級ブランドも高そうなネックレスも身に纏っていない。もちろんそういうものをつけるのも自由だしいいと思うが、金銭的価値ではなくあくまで着たいものを着るというのが等身大をそのまま体現しているように思えて、またそこが僕が舟平さんに抱くちょっとした親近感に繋がっている。
※「thanks a million」のMV(BCSTさん ver.)
⇒ https://youtu.be/ro7xZTwKqXY
「thanks a million(舟平 remix)」のMV
⇒ https://youtu.be/eo9jkAKzFgU
最後に
タイトルの「NATURAL」の通り全曲通して舟平さんの自然体が表現されているように感じた。一ファンに何がわかるんだという話ではあるが。僕は虜になった時から等身大のままの舟平さんの音源が好きで、舟平さんの音源が何度も心を軽くしてくれたからこそ、舟平さんが褒められてたら自分のこと以上に嬉しいし批判されてたら悔しくなる。これは僕のエゴなのかなと思ったりもする。どうしてもバトルで注目を浴びるSAMさんだが、SAMさんの音源もいい音源ばかりだからぜひ聴いてほしい。最後に改めて1stアルバムリリースおめでとうございます、これからもバトルも音源も楽しみにしてますということで締めとさせていただく。