【FX】「年度末仲値」の傾向を探る
年度末、つまり「3月最終営業日」の仲値は傾向が出やすいとされています。
本当にそうなのか、過去の年度末仲値の値動きから傾向を探ってみると「年度末仲値は上がりやすい」という強めの傾向がありました。
5000文字を超える長い記事になってしまいましたが、後半になるほど実際のトレードで気をつけるべき、大事なことが書いてあります。ぜひ最後までお読みくださいませ!
※冒頭は仲値についての一般論です。「そんなの知っているよ」という方は「年度末仲値は本当に上がるのか?」からお読みください。それでも長いので最後の「年度末仲値の傾向まとめ」だけでも構いません!
もし参考になる部分がありましたら、サポートもぜひぜひお願いします!
レジェンドにふられた「年度末仲値」の課題
まず前提として「なぜ年度末仲値に着目するか」を簡単に説明しておきます。
そもそもの発端は、FX界のレジェンドである山手さんのツイートでした。
「年度末仲値をまとめる? そんなに難しくなさそう」と思って手をつけたのですが、調べてみるととても興味深く、本格的に調べていくうちに想像以上の時間がかかってしまって通常の仕事に影響が出るくらいだったのですが、おもしろい課題をくださった山手さんには感謝しかありません! ありがとうございました!
そもそも仲値ってなんだっけ
仲値とは銀行が行なうその日の為替取引の基準となるレートです。9時55分のレートが仲値になります。
もしその日にドル買いの需要が多ければ、銀行は事前にドルを買っておき、仲値を高く決めることで、サヤを抜くことができます。逆もまたしかり、です。
仲値前の売買は「ドル売り<ドル買い」(仲値不足)になることが多いため仲値に向けて上がりやすい、とされています。
ただ仲値に向けて上がっても仲値を通過すると反対売買が行なわれ、仲値を頂点として下がりやすい傾向があるともされます。いわゆる「仲値天井」です。
仲値のチャート
ゴトー日、四半期末、年度末の仲値
仲値の特徴は、とくに金曜日やゴトー日(末尾がゼロや5の日)、月末に出やすいと言われています。いずれも輸出入企業の決済需要が集中しやすそうな日です。
前倒しゴトー日のチャート
下記は2024年2月9日のチャートです。9日なのでゴトー日ではありませんが、翌10日が土曜日であるため、「前倒しゴトー日」として扱われる日であり、金曜日です。
9時50分から買われて54分の足で上ヒゲをつけて下げていきました。全体的に小動きですが、仲値天井の典型的なチャートです。
四半期末、年度末の仲値
こうした実需がゴトー日よりもさらに集中しやすいのが3、6、9、12月の四半期末、なかでも多くの企業にとって決算期末でもある年度末の3月末です。
3月末を決算期末とする企業も多いことから、貿易決済に加えて海外売上の本国送金(レパトリ)であったり年度末の仲値ではさまざまな需要が出てくるようです。
この記事で見ていくのは、そんな「年度末仲値」の米ドル/円の傾向です。
年度末仲値は本当に上がるのか?
ここからが本題です。
年度末仲値は本当に上がるのか? 上がるならいつ、どのくらい上がるのか? 上がらない年はどんな傾向があるのか? 実際のチャートはどうなっているのか? そんなあれこれを見ていきます。
分析に利用したデータは2007年からの1分足です
今回使ったデータは主にGMOクリック証券のBidレートです。GMOクリック証券の口座保有者は2007年からの1分足データがダウンロードできます。
1分足レベルのヒストリカルデータが無料でダウンロードできるFX口座は貴重です。
GMOクリック証券はスプレッドが狭いのは当然のこと、市場が荒れたときにも安定して狭いスプレッドを提示してくれることが特徴です。どのFX口座でも仲値前後はスプレッドが不安定になりますが、その影響を最小限に抑えながら検証できるかと思います。
17回のうち仲値に向けて上げたのは11回
仲値は本邦勢がつくりだす値動きなので東京市場が始まる9時から始まると理解しています。そこで2007年から2023年まで17年間の年度末仲値について、最初に東京市場が開く9時から9時55分までの騰落を見てみます。
9時と9時55分のレートを比べて、上がったケースは17年中11回、下落は6回でした。
17年中11回なので上がる確率は64.7%になります。円安トレンドだった期間が多いことを踏まえても、かたよりがあるようです。
仲値全体の傾向と年度末仲値を比べる
でも、そもそもの話が「仲値に向けて上がりやすい傾向がある」とされていることを最初に紹介しました。
「年度末以外の仲値でも同じくらいの確率で上がっているのではないか?」との疑問もないわけではありません。
念のため、年度末仲値とそれ以外の仲値を比較してみます。
2022年から2024年2月までの仲値(全549日)のうち9時と9時55分のレートを比べて上がったのは293回でした。上がる確率は53.4%です。50%よりは上ですが、大きなかたよりは感じられません。
今度はゴトー日にかぎった場合でも確認してみます。
ゴトー日(日本の祝日は除外。前倒しゴトー日は含まず)だと112日中66回で上昇していました。上がる確率は58.9%。仲値全体よりは、かたよりが大きくなりました。
「通常のゴトー日仲値は上がるか下がるか半々に近いが、ゴトー日仲値は上がりやすい。年度末仲値はさらに上がりやすい」と言ってよさそうです。
期間の取り方や前倒しゴトー日を含む・含まないで数字は変ると思いますが、感覚的にもおおむねこのくらいだろうな、という数字になりました。
年度末仲値、何時何分に高値をつけるのか?
このnoteを読んでくださっている人には、より細かなデータを求める人も多いかと思います。
今度は「年度末仲値の動きは何時何分に発生するのか(本当に仲値での上昇なのか)」を確認します。
ここでは9時台の値動きを1分足の終値で見てみます。
平均化すると年度末仲値の傾向がきれいに出た
全体的は傾向は下記のグラフを見てもらうのが手っ取り早いかと思います。これは9時のレートを基準に10時までの累積変動幅を平均化してラインにしたものです。
言葉だと理解しづらいですが「年度末仲値の日の9時台って、平均的にこんな値動きをするよ」というイメージです。
グラフからは「9時からジリジリと上がり、50分から角度が急峻になり、55分で天井をつける」という傾向が読み取れます。
実際、9時から55分にかけて上がった11回のうち、9回は9時53分か54分の足で頂点をつけていました。「仲値の9時55分に向かって高値をつける」という傾向ははっきりしているようです(あとの2回はともに9時43分でした)。
1分足高値でも傾向は同じ
「年度末仲値の日は9時53分か54分に高値をつけやすい」という傾向であれば1分足の終値ではなく高値も見る必要もあります。
そこで1分足高値を確認すると、仲値に向かって上がった11回のうち8回で54分か55分の足で高値をつけていました。残る3回も53分と56分、59分と仲値に近い時間です。
終値での検証と同じく、高値で見ても年度末仲値では仲値の9時55分間際に高値をつけやすいという傾向ははっきりしています。
「何時何分に高値をつけたのか」の一覧
仲値に向かって上がらない年の傾向
ここまでをお読みいただくと「年度仲値の日の9時台は買い中心で攻める」という方針を立てたくなるかと思います。
そのときに怖いのは年度末仲値に向けて上がれないことです。17回のうち6回は上がっていないので、下がってしまうリスクもそれなりにあります。
「年度末仲値に向けて上がらなかった年の傾向はなにかないか?」と見てみましたが、6回のうち5回で9時5分までに9時台の高値をつけていました。
9時5分までにつけた高値を超えられないときは「今年はハズレの年か」と判断できるかもしれません。
2019年からの仲値チャートを年ごとに見ていく
ここまでは17年分のデータ全体の平均などを取り上げてきました。
ただ、実際のトレードでは平均や中央値があてにならないことを皆さんは経験的にご存知のはずです。そのため過去の年度末仲値のチャートを個別に見ていきます。
2019年から5年連続で上がっている
この表は各年の9時から9時55分にかけての変動幅です。黄色くハイライトしたのは上がった年です。
黄色いハイライトの集中ぶりからわかるとおり、年度末仲値の傾向は2015年から強まっています。
過去17年では11勝6敗でしたが、11勝のうち8勝が直近9年間に集中し、直近9年間では8勝1敗と高い確率になっています。2015年を境にして外的な環境が変わったのかもしれません。
年度末仲値はどのくらい上がるのか?
値幅についても注目されます。
米ドル/円1時間足の平均的な値幅は20銭弱です。しかし、先ほどの表で示したように年度末仲値に向けた55分間では20銭を超える値動きが頻発しています。
とくに2020年は9時から仲値にかけて60pipsも上がりました。21年、22年も30pips以上と1時間足の平均よりも強く上がっています。
とはいえ値幅についてはバラツキが大きいため、出たとこ勝負になりそうです。
ここからは2019年以降の米ドル/円1分足チャートで仲値に向けた値動きを個別に確認していきます。
2019年の年度末仲値
「9時50分からの5分間が上がりやすい」という全体的な傾向のところで述べたとおりの傾向がきれいに出ています。54分の足で高値をつけ、直後から反落していく教科書に載せたいような仲値天井です。
2020年の年度末仲値
これも9時50分から上昇していますが、コロナショックの直後だったためか、5分で55pips上がるという壮絶なボラティリティです。
2021年の年度末仲値
2021年は9時からジリ上げのイッツー(一方通行)となり、9時50分から加速して54分の足で高値をつけました。
2022年の年度末仲値
ヤバっ!と思ったのが2022年です。150円へ向かう円安が始まった直後だったためでしょうか、ボラがとんでもないことになっています。
9時と9時55分を比べればきれいに上がっているのですが、その道中、9時34分から3分で52銭の急落を挟んでいることに注目してください。
安易な逆張りナンピンが致命傷となりそうな急落です。なにか下げを誘うようなファンダメンタルズ材料が出ていないか確認しましたが、とくに見当たりませんでした。
ただ戻りも早く、即座に半値戻し、52分、53分の足で全戻しを完了、仲値直前では高値を更新しました。ただ34分の足でつけた高値を1.5pips更新するだけの「ブルトラップ」(高値ブレイクのダマシ)です。
急落やブルトラップのリスクも頭に入れておきたいところです。
2023年の年度末仲値
2023年の年度末仲値は動き出しが早く、37分から44分まで上がり、仲値直前の10分は16銭幅の高ボラレンジ(高値→安値→高値→安値→高値の2往復)となりました。
54分の足では高値を更新したものの、44分の高値とほぼ同レベル。前年に続いての「ブルトラップ」です。
ラスト10分の「乱高下レンジ→高値ちょい抜け」という暴走を誘いそうなチャートは勝てる気がしません。
「年度末のスポ末仲値」について
月末や四半期末、年度末などの「末」シリーズには「スポ末」もあります。詳しくはググっていただきたいのですが要は「2営業日前」です。
年度末に対するスポ末であれば3月29日になりますスポ末についても、いちおう調べましたが、強く上がっている年もある一方、下がっている年も多く、強い傾向はなさそうでした。
参考までに過去17年分のスポ末(年度末2営業日前)を一覧表示したグラフを貼っておきます。
年度末仲値の傾向まとめ
以上、年度末仲値についての傾向を見てきました。最後に過去の年度末仲値の傾向と、気をつけたいポイントをまとめておきます。
今年の年度末仲値は3月29日
今年は3月31日が日曜日なので年度末仲値は3月29日となります。直近だと2019年が「前倒し年度末仲値」となり3月29日でした。
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長い記事となってしまいましたが、この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
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