からメシ 第151話 紫陽花の詩
しとしとと雨が降り続ける。日曜日。
昨日から俺の家で高木さんと勉強してる。のだが。
「ああもうきつい!勉強ばっかり」
いくら高木さんと一緒でもこうも勉強ばかりしてると気が滅入る。
「雨も降ってるしね~。」
そう、この梅雨のしとしと、ジメジメが余計気を滅入らせる。
かと言って外に遊びに行くのも…雨だし
「西片、思い切って外で遊ぼっか今日。せっかくだから高松の方まで行ってさ。」
「えーでも雨だよ?今日」
「じゃあ家でセックスでもする?」
「セックスって言わないでっ///大体、親いるし今日…」
「じゃあ外で遊ぼうよ。…まあ西片がどうしても家でえっちなことしたいなら御奉仕するけど」
「そ、外で遊ぼう!///」
というわけで昼前だがフェリーに乗って高松まで行く。
「どこいくの?高木さん。」
「んー。ひみつ。」
「気になるんだけど」
「ラブホテルとか言ったらどうする?」
「なっ///」
「あはははは。安心して、違うから。西片の部屋でさ、西片の匂いが染み付いたベッドでするからいいんだよ~。」
「そ、そういうことじゃないでしょ///」
高木さんに連れられバスに乗る。
着いたのは高松市の結構奥の、栗林公園とかいう場所
「高木さん、傘ささないの?」
「これくらいの雨ならさ。西片と相合傘したくてさ」
高木さんがくっついてくる
「自分の傘あるんだったらさした方が…///」
「えー。せっかくの機会逃したくないもん。それにさ」
「西片のやさしさ、感じられて幸せなんだ。なんだかんだ相合傘してくれて、傘私の方に傾けて、私が濡れないようにしてくれてさ」
「べ、別に…」
「ほら、ついたよ。今日ここ来たのはね。」
見ると紫陽花の花が一面に咲いていた
「これ、西片と一緒にみたいなー。って思ってさ」
「ほんとだ。綺麗だね」
ちょっとピンクがかった紫色の紫陽花が綺麗だ
「あとほらあっちには花菖蒲もあるんだよ」
青紫色の花菖蒲も咲き誇る
梅雨の花だからか、雨の庭園に栄える。雨音や雨の匂いと合わさり…こういうのを風情がある。とかいうのかな。
でも、こういうのをしみじみと良いと感じられるのも、高木さんと一緒に見てるからだ。
隣に高木さんがいるから。
「そうだよ。西片。雨の音や匂いを心地よく感じるのも、雨空のモノトーンと紫陽花や花菖蒲の紫色が綺麗だなあって感じるのもさ、西片と一緒に見てるからだよ。西片と一緒だから気づけた事。沢山あるよ」
「だからさ。ありがとね。西片。私と一緒にいてくれて。」
「こちらこそ。……絶対ずっと一緒にいるから」
ぐぅぅ~
お腹がなる
「っぷ、あはははははは。なんてタイミングでお腹鳴るの西片はw。かっこいいと思ったら、すぐさまかわいいの。反則だよw」
「そうだね~。花は綺麗だけどまずは花より団子だよね」
「昼飯まだなんだから仕方ないじゃん///」
「悪いなんて言ってないよ~。むしろかわいいって褒めてるんだよ。もっとお腹鳴らしてみてよ」
「自由自在にいくわけないだろっ///」
「もみもみしたら鳴るかな?」
そういうと高木さんはお腹をもんでくる
「ふぁう!ひゃっやめて///くすぐったいからっ///」
「ふぁう!ひゃっって何その反応w」
「とにかくもうご飯食べるよ!」
とりあえず公園内の飲食店に入る。
「どうしようかなー悩むな。あ、これにしよっかな天ぷらぶっかけうどん」
「西片。それは私にぶっかけたいってアピール?」
「?ぶっかけたいって何を……///って違うからっ!///単純に食いたいだけだからっ///」
「あははははは。顔真っ赤。じゃあわたしはとろろぶっかけうどんにしよっかなー」
「だいたい高木さんも似たようなの頼んでるじゃないか!自分で言っといてそれって」
「そうだよ?アピールだよ?西片にとろろのようなものぶっかけてほしいなあって」
「なっ……///」
「あははははは。からかい返そうと思ったの見え見えだよ~際どいえっちなからかい返しって西片なりに頑張ったのは分かるけどさ。からかい返し返しも視野に入れとかないとさー。」
「ま、とろろ好きだから頼んだんだけどね」
「知ってる」
「さすが。」
頼んだものが来た
「西片。」
「わかってる。わけっこだよね」
「私、西片と食べ物シェアするこの瞬間が本当に大好きなんだ。」
「一度に二つの味食べられるしね。…でもなにより高木さんと一緒にご飯食べてるんだって感じられてさ」
「うん。西片と一緒に生きてるって感じがして嬉しいんだ。」
「…大袈裟じゃない?」
「大袈裟じゃないよ~。あ、これキスの天ぷらだ。美味しい!西片、つまりキスしたいって事?」
「そ、そういう意図で頼んだんじゃないけど……したくは...ある...///」
「正直でよろしい」
「…ていうか天ぷら食べすぎじゃない!?高木さん!?」
「ごめんごめん。あとでキスしたげるからさー。」
「俺も高木さんのとろろいっぱい食っちゃうよ?」
「あー。そういう事するなら、大人のキスでとろろ分けてもらおっかな」
「…///」
「あははははは。冗談だよ。西片、とろろいっぱい食べていいよ。好物でも西片に食べてもらうんならいいや」
「…やっぱこれくらいにしとくよ。高木さんが好物食べてる姿見たいし」
「とろろがえっちな感じだから見たいんじゃなく?」
「違うよっ!そんなスケベじゃないから俺っ///」
昼食を食べたがまだお腹がすいてる。
「西片、じゃあさ。ソフトクリームでも食べようよ。」
ソフトクリームを選ぶ
「私はこれにする!」
高木さんが指さしたのは、嫁入りソフト
まあいわゆるおいりソフトってやつなのだが
おいりはいわゆる、あられで
結婚式の引き出物として使用されることが多く、嫁入り道具としても有名
「西片、なんでこれ頼んだのか分かるよね?」
「...うん///」
お嫁さんにしてってことだろう。
そろそろ俺も、結婚出来る歳になる。卒業する頃には二人とも結婚できるわけで。
中学の時、告白した時
幸せにするって誓った時
あの時から、絶対に高木さんを幸せにするって思い続けてる。そのために生きている
高木さんが誕生日を迎えたらその日にプロポーズする。それもいいかもしれない。
高木さんにとってそれが最高の誕生日プレゼントになるのも俺は知ってる。
ただ、高木さんと結婚するということは高木さんの人生を背負うということ。
高木さんと結婚は絶対するが、けじめとして、高木さんを、養っていけるようになってからすべきことなのか
仕事が決まって...教員採用試験に受かった時、のがいいのかな。とも思う
今すぐ結婚したいけど...難しいところだ
「おーい、西片はなにソフトにするの?」
「へ?な...えーとじゃあ栗ソフト」
「...西片。それは私のクリを触りたいってアピールかな?」
「私のクリってな......///ち、違うからっ!///だからそんなスケベじゃないから俺っ!///」
「チアガール衣装でした時激しかったけどなあ。どの口が言ってるのかなあ。」
「そ、それは///と、とにかく今はもっと真剣なこと考えてたんだからそんな意図は無いって///」
「うん。わかってるよ。からかっただけ」
高木さんめ~!
「西片、いつでもいいからね。西片が思うままでさ。...もうすぐ夢が叶うってのもめちゃくちゃ嬉しいし、...西片の隣にいられるなら待つのは待つので楽しい時間だし」
「...すごいや。高木さんは…本当に俺が何考えてるか分かるんだね」
「うん。昔からさ。西片のことはなんでも知ってるよ。西片も変わってくとこはあるけど、そういうところも含めて全部好きだし知りたいって思うから。」
「だから...西片。大好きだよ。」
「うん。...俺も...。大好き」
ソフトクリームを食べる
「わけっこだよね。」
「うん。西片。これは特にわけっこしたいから。...私の気持ち。」
高木さんと、嫁入りソフトをシェアする。
これがどんな意味を持つのか俺にもわかる。
嫁入りソフトの最初のひとくちを高木さんが食べ、その後俺が食べる。まるで和装結婚式でお酒を飲み交わすやつみたいだ
……というか高木さん。そういうつもりなのかもしれない。
「嫁入りソフト。おいしいよ。高木さん。」
「うん。……味だけじゃなくて、西片と嫁入りソフトをシェアしてるってことがね。凄く美味しいや。」
「うん...///...俺もそう思う。」
「西片の栗ソフトもおいしいよ」
「美味しいね。」
「うん。」
そんなこんなでおなかいっぱいになったので
また、栗林公園を散策する。
一応相合傘で傘さしていたが、雨が止んだ。
「高木さん。そろそろ傘ささなくてもいけるんじゃない?」
「...降ってなくてもさしてたいな...。」
「でも動きにくくない?傘さしてると。」
「でもさ。」
高木さんが傘をさしたまま、とじる
そうすると傘に高木さんと俺の顔が囲まれる感じになる。そして
ちゅっ。
背伸びをして高木さんが俺の口にキスをする。
「さっきキスしてあげるね。って言ったでしょ?傘さしてるとこういう事も出来るからね。」
「傘で隠せば、外でも西片も恥ずかしくないでしょ?」
「...た、多少は。…///」
「それに傘で隠してキスってなんか風情あるよね」
「そ、そうなのか?」
「...もう一回、しよ」
雨の匂い、雨の雫がぽたっと落ちる、紫陽花と花菖蒲が咲く中。
俺と高木さんは腕を組んだり、手をつなぎながら、風景を眺めたり、たまに立ち止まってキスをしたりした。
第151話 完