からメシ 第146話 お弁当と応援合戦
「ねえ、西片。みて、いっぱい作ってきたんだよ。お弁当。春巻きに、唐揚げにおにぎりに、これ肉野菜炒め。どうかな?食べてみて」
「…」
「おーい。西片。」
「へ、あ、ごめんごめん!お、おいしい!この春巻き、お弁当なのにまだ皮がパリパリしてる!」
「でしょ~こだわって作ってるから。唐揚げも美味しいよ。」
「おにぎりが進む進む」
「肉野菜炒めもね、ちょっと味噌入れてみたんだ。自家製の味噌だよ」
「……え、自家製!?すごいよ高木さん!どおりで美味しいと思った」
「褒めすぎだよ~。……ところで、西片。なんか気になってることがあるみたいだね」
さすが高木さんだ。なんでもお見通し
話は体育祭の種目決めの日まで遡る
実は応援合戦とかいう種目があるのだが
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体育祭実行委員「希望者は応援合戦チアガールの衣装で参加できます。衣装は購入になりますが。購入の際は私の方にお声がけ下さい。」
そう、チアガール。
応援合戦で任意だけど着る衣装
正直、高木さんがチアガールの衣装着たらとても素敵だと思う。
でも...チアガールの衣装ってなんというか
スカートは短いし、足を上げる動作とか多いから際どいとこまで見えちゃったりするわけで。太ももの付け根とか...
……ていうかパンツ見えちゃうんじゃないのか?なんか履いてるのか?チアガールってあれ。ブルマっぽいやつとか?
つまり要するに、高木さんのチアガールは凄く見たいんだけどほかの野郎共には見せたくないのだ。なんて言っても全校生徒だ。
そして高木さんが実行委員の女子に声掛けてなんか記入してるのが見えた。...そっか、高木さん...チアガールの衣装で応援合戦出るのか。
しかも応援合戦、練習何回かしたが(練習は皆ジャージ)男子は後ろに陣取るので
(しかも本番は男子は中学、学ランだった人はなぜかそれ着れたら着るみたいな)高木さんの後ろ姿しか見れないし、しかも結構遠いわけだ。近くで見れない。
なんで俺が後ろからちっこくしか高木さんのチアガール姿見れないのに学校の野郎どもは高木さんのチアガール姿を色んな方向から見れるのか
正直かなりモヤモヤする。かと言ってやめてとも言えない。
男心も結構複雑なのだ。
……結構独占欲強いんだな俺……
そしてそんな悩める男がもう1人
浜口「なあ、西片。ほ、北条さんがチアガール着ちゃったらどうしよう。」
西片「うん……」
浜口「あのさ、見たいか見たくないかで言えばすごく見たいんだよ。でもさ……見せたくないんだよ」
めっちゃくちゃわかる。やっぱそうだよな。
西片「……聞いてみるしかないんじゃない...?」
浜口「そ、そうだよな。き、聞にくいけど。...わかった。西片も聞けよ高木さんに。そしたら俺も」
西片「高木さんはさっき実行委員の女子に声掛けてたから、応援合戦の時着るつもりだよ……」
浜口「……そっか。」
浜口が北条さんの方に向かっていく
なんか喋ってる
すると
北条さん「き、着ないわよ!チアの衣装なんて///あ、ああいう露出多いの私の好みじゃないし///」
浜口「良かった~。俺みんなに北条のチアガール姿見られるのちょっと抵抗あってよ」
北条さん「言っとくけどあんたの前でも着ないからね!///そもそも買わないから」
浜口「ああ……そうか。」
浜口の方は一件落着したかな
でも俺の方は……
高木さんがチアガール憧れてたりしたら
それを止めるなんてできないし。
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とモヤモヤしたまま今に至っていたのだ
「あ、あのさ、高木さん。」
「ん?」
「チアガールの衣装って買ったの?高木さんは」
「……うん。着てみたかったからさ……」
「そっか。……じゃあチアガールの衣装着て応援合戦でるんだね」
そっか。やっぱり高木さんはチアガールの衣装着たかったんだね。複雑な気持ちだけど。それなら止めることはできない。
「どうだと思う?西片は」
「へ?」
「……着ないよ?応援合戦はこのままジャージで出るよ?」
「え。でもさっきチアガール衣装買ったって。あれ、なんで買ったのに着ないの?今日の応援合戦のためじゃ……」
すると、やさしくにっこりとこっちを見つめながら高木さんが
「さて、なんでかねぇ。」
と呟いた。
そっか。
そっか。高木さんは
応援合戦のためにチアガール衣装買ったんじゃなかったのか。
高木さんは……俺にだけチアガール姿を見せたかったんだ。
だったら……
「高木さん。次の週末さ。俺の家来てよ...///」
「うん!西片から誘ってくれた!うれしいや」
高木さんが俺にだけチアガール姿を見せたいなら
俺はとことん高木さんのチアガール姿を見てやるんだ。
……ちょっと恥ずかしいけど///
そしてお弁当を食べ終わり、応援合戦。
高木さんはそのままジャージで、俺は学ランを羽織るが
「あはははははは。に、西片、中学の時の学ランパッツパツ。か、体のラインが浮き出てるwお腹痛いw」
「わ、笑わないでよ!は、恥ずかしいんだから///」
「西片も成長したんだねえ。随分背が伸びたってことだよ。たくましくなったや。...ぷっ……あはははは。でもつんつるてんでぴっちぴちなのはたくましいっていうよりかわいいかなw」
「だからさあ///」
「いいじゃん。ぴっちぴちの西片も私は、好きだよ。」
「うん。」
「……ぷっ……あははははは」
「笑いすぎだから!」
こうして応援合戦を無事終えた。
全ての競技が終わる。
赤組は3位、ちょうど真ん中の順位だった。
片付けをして
帰り道。
「……これで体育祭も終わりかあ」
「うん。」
「大学だと体育祭とかないから、少なくとも学生としては人生最後の体育祭だね。ちょっと寂しいかも」
「……でも中学、高校と、高木さんとずっと一緒に体育祭やれて良かった。」
「うん。私も。特に二人三脚で、二人の共同作業で競技やって、勝ったのが嬉しかったや」
「……寂しいなあ」
「西片はでも、先生になるんだからさ、そうしたら体育祭しょっちゅうやれるでしょ?それにさ」
「それに?」
「もうちょっとしたらさ、今度は私たちの……子供の……体育祭を楽しもうよ。あ、最初は運動会か。私そしたら西片と、子供のお弁当、張り切って作るからさ。」
「……そうだね。」
「……早く赤ちゃん欲しいってことだよ?わかる?」
「は、恥ずかしいからっ///」
「あはははは。やっぱこういうの弱いんだね。」
でも、そっか
高校三年生。
俺と高木さんの体育祭はこれで最後だけど
だいぶ先だけど、そこには。
高木さんとの...子供の///……体育祭があるんだ
……楽しみになってきたな
第146話 完