からメシ 第157話 オープンキャンパス
急遽、入った麻雀部の全国大会が明後日からに迫った土曜日
俺と高木さんは倉敷大のオープンキャンパスに来た。
「始発で出て倉敷大着くのが10時過ぎ、やっぱ倉敷地味に遠いや」
「そうだね。」
「帰りの時間も気をつけないとね。最終便乗り遅れたらお泊まりだよ?私はそれでもいいけど、当然お泊まりになったら...する事は分かるよね。西片❤」
「最終便の時間は厳守するから!///てか明日は高速バスで東京まで行かないといけないんだし」
「あはははは。西片顔赤いよ。...そういえば制服で行くか私服で行くかで意見割れたよね。」
「高木さんは私服でいいんじゃない?って言ったけど、念の為制服のがいいかなあって俺は思って……俺入れてもギリギリだろうから少しでも減点されそうなポイント作りたくないし」
「西片が制服姿の私を舐めまわすように堪能したいって言うから、それなら仕方ないなあって制服で来たけど」
「一言もそんなこと言ってない!」
でも本音言うと、それより...
大学のキャンパスで高木さんの制服姿、なんてオープンキャンパスじゃないと見れないだろうからってすごい邪な理由だったりする
「あははははは。そんなのいちいちチェックなんてしてないよー。あ、あと、大学生になっても、夫婦になっても西片が着て欲しいなら制服着てどこでもいっしょに行ってあげるよ」
「恥ずかしいからっ!///ていうか心読むのやめてよ!///」
「あ、やっぱそういうこと思ってたんだー。やらしー。」にやにや
というわけで受付を済まし
早速倉敷大学教育学部の学部説明会を受ける。
もちろん高木さんとは隣の席で。
教育学部の授業内容とか、大学の生活などいろんなことが聞けた。
で、その後模擬授業も受ける。結構力入れてるみたいで90分だ。教育学部は基本教師志望教師の学部なので、心構えとか大変なところとか授業の組み方とかを最初の20分程度でいろいろ教わった。
で、新鮮だけど緊張したのが教える側に回る体験。
黒板に書かれているのは簡単な問題だけど、それを分かりやすく解説していく実習だ。そう、解くのではなく「教える」のがポイント
に、苦手なんだよな。おれ、恥ずかしいし...///
高木さんは教えるの上手そうだから大丈夫かもだけど
高木さんは
次のうち脊椎動物を全て選びなさい。
人間 ウシガエル イシダイ マボヤ アオリイカ
という問題を「教える」ことになった。
問題自体は割かし簡単(マボヤは脊椎動物亜門が属する脊索動物門となっており、脊椎動物の姉妹群なので少々引っかけだが)
だがこれをどう教えるかが問われる。
高木さん「簡単に言えば背骨、つまり脊椎を持っている動物となります。つまりこの5種の生物では、人間、ウシガエル、イシダイが当てはまります」
高木さんはずっと俺の方を見ながら解説する。
しかしこの実習はこれでは終わらない。
授業というのは生徒から質問される。教授が鋭い質問を受けるのだ
教授「イカの内部にはイカの骨って呼ばれる硬い骨みたいな部分がありますけど、どうして脊椎動物じゃないのですか?」
このように...
高木さん「実は、イカの骨は貝殻の名残といわれています。アンモナイトやオウムガイなどはイカと同じ頭足類ですが、貝殻がありますよね。」
教授「でも、カンブリア紀の最初期の頭足類と思われるネクトカリスには貝殻ないですよね。これは一体どういう事なんでしょうか?」
高木さんが俺の方をずっと見続ける
高木さん「...えっと...か、貝殻の消失が頭足類の進化で二度起きたか...ね、ネクトカリスが頭足類でないとする説も...あるので...す、すみません。詳しくは分かりません」
教授「いいですね。分かったふりして不確かなことを教えるのではなく、分からないときっちり言える所、評価します。」
これ地味にキツくないか
こんな突っ込んだことまで質問されんの!?
つか高木さん詳しくないか!?
余計緊張してきた。
こんなのをみんなの前でやるの!?
次は俺の番だ
俺の問題は
次の連立方程式を解きなさい。
x+6=7
y-x=1
仮にも国立大学の受験勉強をしてる俺からしたら
中1の内容だし簡単ではあるけど
み。みんなの前で発表なんて……緊張で声が出せない。またあんな突っ込んだ質問来たら...ダメだ。俺やっぱ先生向いてな...
高木さん「西片先生ー!がんばってー!大丈夫だよー!」
た、高木さんだって大勢がいる中、こんな事言うの恥ずかしいだろうに...
そうだ。俺には高木さんがいるんだ!高木さんがいるなら怖いものなんて何も無い!怖がってなんかられない!!
西片「え、えっと。まず x+6=7ということは、6を左辺に移行してx=7-6という式を作れます。」
ここで教授のツッコミが入る
教授「どうして移行すると符号が+から-にかわるんですか?」
やっべえええ質問来ちゃったあああ
なんでだ?なんで...
ちょっとパニックになりかけた時
高木さん「西片先生!こういう時は式をよーく見て!移行ってのが何をしてる作業なのか、省略してると分かりにくいかもだけど。丁寧に式を見てみて」
式を見る
...あ、そっか、両方から6を引いてる。等式だから...
西片「まず等号の=で結ばれた等式なのでつまり=の右側と左側は等しいということです。つまりx+6と7が等しい。そして等しい数から全く同じ数字を引いたものは等しくなりますよね。」
西片「つまりx+6-6=7-6が成り立ちます。6-6は0なのでx+0=7-6=1となりx=1となります。このx=1をy-x=1に代入するとy-1=1となります。ここで両辺にまた同じ数を足しても等式が成り立つので」
西片「y-1+1=1+1つまりy=1+1=2となります」
教授「1+1=2になることは証明できますか?」
西片「へ?1+1は」
いや1+1は2じゃん。...証明......どうやって?
西片「1の次の数が2だから...??」
教授「次とは?数式で証明とか出来ないでしょうか?」
ええええええええ!……わ、わかんないぞこれ。1+1=2もわかんないのか俺は...は、恥ずかしすぎるぞこれ。こんなんで先生なんて...
高木さん「西片先生!1+1を証明するのはペアノの公理ってのを使うかなり難しい証明なんだよ!分からなくても恥ずかしい事じゃないから!!」
西片「...あ、ありがとう高木さん。...す、すみません、分かりません!」
教授「生徒に慕われる良い先生になりそうですね。」
とまあこんな感じで体験授業が終わる。
「き、緊張したああああ」
「最初相当硬くなってたね。西片。」
「軽くパニックになったよ。ありがと。高木さん。自分だって恥ずかしかっただろうに、励ましてくれて。でも大勢の生徒を教えるってこういう事なんだろうなあ」
「いえいえ。おやすいごようです。でも、教えるって勉強だけじゃないしね。学生生活って色んな深刻な問題がおこったりする場でもあるしね。いろんな人が通う場だから、合わない人とか嫌いな人とかも出てきて、衝突したりとかもあるだろうし」
「そうだよなあ。怖いなあ。」
「でもさ、私と西片みたいに心の底から分かり合える、大好きな人に出会えるかもしれないんだよ?そう考えると、学校っていいよね。
私も西片に出会えて本当に良かったもん。だからね、学校は私にとって生きる意味を見出せた場でもあるんだよ。」
「照れるから...///でも、そうだね。...生徒にはそういうことを伝えられたらいいかもね。」
「生徒に慕われるいい先生になるよ。西片先生。」
「恥ずかしいからっ///」
「あはははは。」
続いて学食体験で学食を食べた
ちょっとこれやってみたかったからあえてお弁当は持参せず。
「俺これ気になるかも。マイルドスパイシーカツカレーってやつ」
「マイルドなのかスパイシーなのかって話だよねw」
「たしかに。高木さんは何にする?」
「鴨出汁ラーメンにしよー。替えっこね。」
「分かってるよ。」
向かい合って席に座る
「「いただきまーす」」
「おお、ホントにマイルドスパイシーだこれ」
「そうなの?ちょうだい?」
「うん。」
「本当だ。ピリってしてるけどマイルドだね。このまったり感は唐辛子結構使いつつ牛乳入れてるのかな?」
「私の鴨出汁ラーメンも美味しいよ?この値段で鴨肉スライス入ってるのはすごいね」
「ほんとだ!出汁もきいてるし!鴨肉って美味しいんだね」
「今度買ってきてたっぷり食べさせたげるよ」
「...でも。高木さんの料理が一番美味しいや。」
「……ありがと。えへへ。もう西片の胃袋掴んじゃったんだね。私。うれしいや。」
こうしてオープンキャンパスを堪能した
帰りのフェリー
「楽しかったね。西片」
「模擬授業は緊張したけどね。」
「大学生になっても...2人で一緒に、楽しもうね。」
「うん。」
「……ああああ!いけない!」
な、なんだ高木さん。どうしたんだ
「アパートとか下宿先見てくるの忘れてたや。オープンキャンパスだけに気を取られてたけど……私と西片の愛の巣……」
「あ、愛の巣って……///……だ、大学受かってからでいいんじゃないかな?それは」
「そうだね。……それに2人の愛の巣はじっくり決めたいしね」
「だから言い方///」
「あははははは。西片顔真っ赤だよ」
その後高木さんを家まで送った。
明後日はついに高木さんと全国大会で東京入り
大都会すぎて不安もあるけど、高木さんと旅行と思うと楽しみでもある
第157話 完