からメシ 第119話 秋祭り
小豆島には秋祭りがある。
いつもちらっと観覧することはあったし
高木さんと出逢ってからは一緒にちょっと廻ったりしたこともあったけど、今年は一味違った。
話は少し前に戻るが、近所の人に「秋祭りに出てくれないか」と打診されたのだ。
出るというのは客側じゃなく、参加する側である。要するに太鼓台を担いだり、太鼓を叩いたりするやつだ。
でも正直…祭りの練習準備期間と中間テスト期間がもろ被りするし...正直そこまでして一人でお祭り参加したって……と思ったのと、それにいつもテスト前に高木さんに勉強教えてもらってるので、高木さんにも相談しないと。と思い
とりあえず一時保留にして高木さんに相談した。
そうしたら高木さんは
「むしろ西片と一緒に出てみたい。」
と言った
さらに太鼓担ぐ方と叩く方どっちがいい?と言うと
「西片と一緒に太鼓台担ぐのも太鼓叩くのもやってみたいなあ」
と
てなわけで近所の人の打診には
高木さんと一緒に出れるなら、という条件、あと出来たら太鼓叩くのと太鼓台背負うの両方なら参加したいと話した。
太鼓叩くのは本来は子供の役目でもうちょい小さい子(小学生が多い)が多かったり、太鼓台背負うの女の子だと危ないんじゃないかとか色々難色は示していたが
太鼓叩くのは高校生だしギリギリOK、太鼓台背負うのも「俺がしっかり怪我しないように守りますので!」と言ったらOKになった
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そんなこんなで秋祭りに参加することになったのだが、
太鼓なんて叩いたことないから上手く叩けないのだ。...そもそも太鼓叩いたことない人がやっていいのかこれ。
「西片~それならいい練習法があるよ」
と高木さんと俺は放課後マルナカに
え、マルナカ?なんで?
マルナカの中にあるゲーセンに
「西片。これだよ。」
そこにあったのは
太鼓の鉄人っていうゲームだ
「曲に合わせて画面が流れてくるからこの線のとこに赤い丸が来たら太鼓を叩く、青い丸が来たらフチを叩く感じかな。」
「音ゲーってやつだよね。やった事ないわそういえば。」
「これで練習してみようよ」
早速100円を入れてスタート。曲が流れる
流れる雲~を~♪追いかけて走る♪
画面流れるのはやすぎるんだが。
結局全然上手く叩けなかった。
「じゃあ私やってみるね。」
流れる雲~を~♪追いかけて走る♪
すごい高木さん。曲に合わせて完璧なバチさばきで太鼓を叩いていく。かっ...カッコいい。
高木さんは高得点を出した。
「西片負けたから後で罰ゲームね」
「ええええええ」
「まあそれはさておきこれで練習しようよ」
そんなこんなで何回かやった。がなかなか上手くいかない。
「高木さん。ほんとこれ上手くなるの?太鼓叩くの。」
「うーん。秋祭りの太鼓はこんな変則的な叩き方しないし、あんま上手くはならないかな。」
「上手くならないのかよ!」
「あはははははは。でも太鼓を思い切り叩くことに恥ずかしさというか抵抗はなくなったでしょ?」
「……それはそうだけど……」
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某日
俺の部屋にて
「テスト勉強も疲れちゃったし、ベッドでご休憩しよっか西片」
「言い方!///」
「あはははは。そのままベッドに横たわるって意味だったんだけどなんで顔真っ赤なのかな西片」
「……///」
「そっちの休憩でもいいけどねー。...2回目、しちゃう?///」
「し、しません!///」
「頑なだなあ。あ、そうだ。この間の西片の罰ゲームやってないよね。あれ実行しよう。」
「……変な罰ゲームよしてよ?」
「大丈夫だよ。太鼓の練習だから」
「まず向かいあってだね」
高木さんと向かい合う
「わ、私のお、おっぱいを太鼓みたいにたたいてみてよ。あ、太鼓みたいにおもいっきりやっちゃダメだよ?肋骨折れちゃうから。やさしくソフトタッチね」
「そもそも叩かないからっ!///」
「罰ゲームなんだからダメだよ」
「……」
高木さんめ!またこういう...
服越しだからまだいいか
服の上からぽすっとそっと高木さんの胸に触れるとふにっとした感触が...突起の感触まで...
「あっ♥」
「変な声ださないでよ...!///」
「仕方ないでしょ。気持ち...よくて...///……もっとやって」
ぽすっ...ふにっ...「あっ♥」
ぽすっ...ふにっ...「あっ♥」
ダメだ耐えられん。今すぐ押し倒して脱がして……ああああ
「もうやめ!と、トイレ行ってくるから!」
「あははははは。ごゆっくりー。」
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ふう...
全く高木さんは
部屋に戻る
「高木さん、こんなの練習にならないよ。」
「そうかなー。本番になるとわかると思うよ」
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そして本番当日
俺は青い法被。高木さんはピンク色の法被を着た。
...か、かわいい。
まず、太鼓台を担いで俺たちが通ってた中学の校庭まで練り歩くわけだが
高木さんは左列の一番前。押し合いへしあいにならないように一番前という配慮とあとは...単純に栄えるからだろう。
その高木さんのすぐ後ろに俺。高木さんが転んだり怪我したりしないように。支えられるように。
「「えいしゃーしゃーげ」」
「「えいしゃーしゃーげ」」
掛け声とともに町を練り歩く。
「西片。えいしゃしゃげってどういう意味だか知ってる?」
「知らない。」
「心臓を捧げよ」
「怖っ!」
「あははははは。まあそこまで大袈裟な意味じゃないけどね、さあ捧げようみたいな意味かな」
「…私も西片にはこの気持ちだよ。西片に全てを捧げる。心臓だって捧げちゃうよ?」
「そ、そんな物騒なのは望んでないからっ!」
「あははははは。でも、気持ちは...心は西片に捧げるよ」
「えいしゃーしゃーげ!」
……それだったら俺だって負けないよ
気持ちも心も全部高木さんに捧げるよ
「えいしゃーしゃーげ!」
「えいしゃーしゃーげ!」
……
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中学の校庭につく。
太鼓台が集まっている
太鼓台を置きしばし休憩
10月中旬と言えどまだまだ暑い。
俺と高木さんは用意してもらっている飲み物をがぶがぶ飲んだ。
「ぷはー。生き返るね西片。」
「うん。喉乾いてたからね。」
「なんか一緒に食べようよ西片」
「うん」
たこ焼きとかフライドポテトとかあと奮発してオリーブ牛の牛串を食べる
「はい。あーん。西片」
「ひ、人いっぱいいるから恥ずかしいよ///」
高木さんがあーんさせてくれないの?って目でこっちを見ている。この目に俺は弱い
「わ、わかったよ。」
あーんしてもらってたこ焼きを食べる。こんな人が多い中、恥ずかしいけど高木さんにもあーんして食べさせる。恥ずかしいけど……心地よかったりする。
次は牛串。1本の牛串を2人で分け合う。
「やっぱオリーブ牛だけあって美味しいね。脂もさっぱりしてる感じというか」
「うん。それもあるけどさ。...二人で一つの牛串を分け合ってるから余計美味しいんだよ。」
「……そうかもね。」
そう、俺と高木さんは二人で一つ。牛串だけじゃない。人生に至るまで。それが嬉しかったりする。
そんなこんなで昼食を取り、太鼓台に乗ってた小学生と変わって太鼓台の上に乗る。
高校生で太鼓台の上に乗るってあんま無いのかな?ちょっと恥ずかしくなってきたぞ。それに間違えたり下手だったらどうしよう。
「西片、私との練習思い出して。」
高木さんとの練習
...
……///
余計恥ずかしくなってきたじゃないか
高木さんが耳元で囁く
「今、太鼓叩く状況と、私のお...おっぱいで練習した時の状況、どっちが恥ずかしい」
「そ、そりゃ胸だよ...///」
「じゃあ大丈夫でしょ?思い切り太鼓叩こうよ」
高木さん。まさか...そのために
俺に緊張させないように、あんな方法で練習したのか...?
いや、からかいたかっただけだろ!
「えいしゃーしゃーげ!」
掛け声が始まる
掛け声に合わせて太鼓を叩く
ドン!ドン!ドン!
下手くそでリズムが合わないけど。
でも楽しい。高木さんも笑ってるから。
「高木さん。太鼓台、真横に傾けたりするから気をつけてね!しっかり掴まって」
「うん!」
太鼓台が左右に傾く
「あああっ」
「わっ凄いね西片。楽しいね」
「うん!」
そんなこんなで秋祭りが終わる。
「たのしかったね。西片」
「うん。」
そのあと、高木さんが俺の部屋に寄った。
「もうクタクタだよ」
「汗だくだよ~。大人たちはこの後みんなでお酒飲むみたいだね。」
「元気だなあ」
「私達も...また、大人っぽいことしてみる?せっかくこの衣装なんだしさ。これ着たまま……」
「ダメだって!借り物なんだから!」
「まだ何すると言ってないのに西片は何想像したのかな~」
「……///」
「それに借り物衣装じゃなきゃ是非したいみたいな口ぶりだね~」
「...そ、そういうわけじゃ...///」
「まあいいや。汗かいたからシャワー浴びるね。……一緒に入る?」
「入りません!」
「あははははは」
全く。高木さんめ。相変わらずだ。
でも、秋祭り。楽しかったな。
高木さんと一緒だと。
第119話完