からメシ 第177話 博物館デートと豚骨カレー
「それでね、西片。調べたんだけど香川県には恐竜コーナーが充実した博物館ってないんだよ。」
「そうなの?どうしよう。」
「でもね岡山に、岡山科学大学 恐竜学博物館ってさ…」
化石発掘をしに行った日
飯食って風呂に入って、もうなかなか真夜中だが高木さんとスマホでビデオ通話だ
アプリで通話料かからずwifiでやれば通信量も食わない。便利な世の中だなあ。っておじいちゃんみたいな思考か
「便利な世の中になったなあって思ってるでしょ。おじいちゃんみたいな思考だね、西片。」
「な、なぜそれを///」
「西片のことはなんでも分かるもん」
「///」
「それじゃ、西片。また明日。フェリーは始発、早いからね。」
「うん。じゃあね。高木さん」
「あ、ちょっとまって、画面に顔近づけてくれる?西片。」
?なんだ?
言われた通りに顔を近づける
すると高木さんも顔を近づけてきて
「ちゅっ」
「……なっ……///」
「ほんと、便利な世の中だね。じゃ、西片。また明日。」
た、高木さんめ!
そんなこんなして早朝。
高木さんが俺の家にやってきた。
「おはよう西片。」
「おはよう。」
眠い目をこすりながら土庄港に向かい
そこから一度高松へ
今回は交通の便が割とよく、始発だと開館時間より前に付いてしまうから始発の次の便だ
とはいえ昨日の疲れからか高木さんも俺もフェリーではお互いの肩にもたれかかって寝てしまう
かなり爆睡してしまった。
起きたらよだれが垂れていてこともあろうか高木さんの肩に付いてしまっていた
「ご、ごめん高木さん!」
「えー、なんで謝るの?むしろ私、嬉しいくらいだけど」
「えっ、そうなの?」
「好きな人のものだもん。」
「そういうもんなの?」
「そうだよ。西片だって私が寝てて服によだれ垂らしちゃっても嫌な気持ちにならないんじゃない?」
たしかに。かわいいとすら思う。
「ありがと。かわいいって思ってくれて」
「なっ...///」
高木さん、なんでこんなに俺の心が読めるんだ
「好きで好きでしょうがないからだよ。好きすぎてさ。自然と分かっちゃうんだよ。西片の考えてることが」
また心を読んだ!
「オレの心の声と会話するのやめてよ///」
「あははははは。でもせっかくこの服に西片がよだれたらしてくれたんじゃ、この服洗いたくなくなっちゃうな~」
「そこは洗ってよ///ていうかそういうの恥ずかしいから!///」
「あははははは。そうだね。西片顔赤くしてるしね。」
そんなこんなで電車に乗る
今度は高木さんが俺の肩にもたれ掛かりながらよだれを垂らして寝ている
...か、かわいすぎる
高木さん、オレの前じゃないと絶対こんな姿見せない。これも信頼と愛情の証なんだなあとつくづく感じる。
愛おしさしかない。こんなにオレのことを愛してくれる、こんなに愛しい人を絶対に一生離さないぞ、一緒に生きていこう、と強く思う。
高木さんの温もりや香りを感じながらオレも寝てしまった。
ここでもなかなかの爆睡。
なんとか岡山駅で起き降りた。
「ごめんね。今度は私が西片の服によだれ垂らしちゃったみたいで」
「いいよ別に」
「むしろ嬉しかったり?」
「なっ///そんなことは無いけどっ///」
「嫌?」
「いや...嫌...じゃないっ///」
「あははははは。顔真っ赤」
高木さんめー!
そんなこんなしてバスにのり
岡山科学大学 恐竜学博物館に付く
なんとここ、大学内の博物館だからか
無料なのである。
守衛さんに見学の旨を伝えると中に入れてもらえる
まず、展示ホールに差し掛かる
プロトケラトプスの頭蓋骨のレプリカがドーンと出迎える
「おおー!ダイナソー!」
「西片、目がキラキラしてるね。この大学、恐竜学科があるんだって。こっちにする?受験」
「い、いや、たしかに恐竜には興味あるけど、ここ私立大学で高いし、それに一応先生になりたいからね」
いや、まあ本音言えば高木さんと一緒の大学であるならば、どこだっていいんだけど、
まあ実際問題資金面で私立大学は厳しいとか、先生になりたいと一応思ってるから教育学部とかあるわけで
「本音を言えば私と一緒ならどこでも、って顔してるね。私もだよ。というか私は西片のいる場所が居場所だから」
「……///」
「さ、顔赤くしてないで博物館楽しもうよ。あと、自由研究に使うから撮影出来るとこはしたり、ノートにまとめたりしようよ」
「赤くしてないっ///」
「あははははは。」
さすが、恐竜に力入れてる博物館だ
いろんな恐竜の全身骨格標本に世界最大級の足跡化石なども見られる。
展示だけじゃなく発掘地の3Dデータを操作したりとかなかなかテンション上がるコンテンツもある
そんなオレを高木さんがじっと見つめてる
「どうしたの?高木さん」
「いや、恐竜でテンション上がってる西片、かわいいなって思ってさ」
「か、からかわないでよ///」
「あはははは。からかってないよ。ほんとにそう思ってさ。」
「……///」
「やっぱり恐竜の研究より西片の研究したいなあ。私」
「だ、ダメだからそれは///大体提出するんだし」
「分かってるよ。でも個人的に書いちゃうかも。出来たら見せてあげるね」
「い、いいって///」
「あはははは。顔赤いね」
幼体の恐竜化石とかもあってなかなか面白い。撮影出来るところは撮影したり、出来ないとこはメモとったりする
また、研究施設と直結しており、研究員の方が化石のクリーニングをしたり、顕微鏡で観察したり、CTスキャンを撮って内部構造を調べたりしている所を間近で見学できた。
続いて標本室も見学
恐竜だけじゃなく当時の哺乳類の化石や復元図なども展示されていた
「西片、恐竜時代は私たちの祖先こんな感じだったんだ。ねずみみたいだね」
「うん。哺乳類は、恐竜が居なくなってから爆発的に多様化したからね」
「さすが詳しいね。西片。……この子たちが子孫を繋いで、その子供がまた子孫を繋いでってやったから私たちがいるんだね」
「うん。」
「私たちもさ、こうやって子孫を繋いでいこうね。」
「ちょ...///高木さん///」
「赤くなっちゃったね。西片。でもね、私ほんとにそう思うんだ。西片との...赤ちゃん欲しいって...///」
「うん…い、いつかね……///」
「でも本当、いつかは……///」
「...楽しみにしてるよ。西片っ///」
正直オレだってそうだ。
高木さんとの、子供欲しいなって思う。
早く、高木さんを支えて養っていける男にならないとな。
そんなこんなして一旦昼休憩にした
「お昼どうする?ここの学食、カレー屋とラーメン屋が人気みたいだけど」
悩むなあ。
両方みて回るとラーメン屋は博多ラーメン、長浜ラーメンがメインの豚骨スープ
カレー屋は普通のカレーからグリーンカレー、ココナッツカレーなど色々ある。
「西片悩んでるね」
「高木さんはどっちがいい?」
「私?私は西片が好きな方がいいなあ」
「いや、迷ってるからさあ」
「そうは言っても私も西片の選択について行きたいからなあ」
高木さんは俺についてくって姿勢は愛されてる実感もするしいいんだけど
迷ってる時でもこうなってしまうんだよなあ
高木さんの意思を尊重したかったりもするのに
「私たち似てるよね。こういうとこも」
「うん。」
「でもさ、ラーメンかカレーかなんて気楽に決めちゃっていいと思うよ?人生において大事な事だけ絶対に手放さなきゃさ。私と西片が一緒にいること、とか」
「そうだね。」
うーん、ラーメン屋のが高木さんとのデートで行きがちだし、カレーのがレパートリーに幅があるかな~
とか考えていた時
ラーメン屋の方のメニューを見ると
豚骨カレー
と書かれた文字が
豚骨カレー?めっちゃ気になるんだが
「豚骨カレー、たしかにきになるね」
「これにしよっか」
というわけで店内に入る
しかし、ラーメン屋に入ったらラーメンも食べたいよなあ
どうしようか
「西片、じゃあさ、2人で豚骨カレー頼まない?で、ラーメンの種類も変えてそれぞれ替えっこしようよ」
「あ、それいいね!」
「じゃあ私博多ラーメンにしようかな。明太子トッピングで」
「じゃあ、俺は長浜ラーメンにしよ。...高木さん明太子好きだよね」
「うん。あ、でも西片のがずっと好きだよ」
「く、比べないでよっ。大体オレ食べ物じゃないだろ」
「たしかに食べ物じゃないけど、ある意味食べちゃえるね❤」
「そ、それって///どういう…」
「今日ふたりでお泊まりしたら、わかると思うよ」
「……///」
や、やっぱりそういう意味か!
「き、今日はそのまま帰るからっ///」
「ちぇー。まあ、夏祭りの日、よろしくね」
「……うん///」
夏祭りの日は、するの決まってるのか。そうだよな。丁度、初めての日から一年になる訳だし。は、恥ずかしいけど///...でもちゃんと...高木さんの気持ちに答えよう
そんなこんなで博多ラーメンと長浜ラーメン、そして豚骨カレーが来た。
「「いただきまーす」」
分けっこしてラーメンとカレーを食す。
まずは長浜ラーメンと博多ラーメンを食べ比べ、オレは長浜ラーメンから行く
「豚骨スープが美味しいね。臭みとかもなくて、でも旨みが濃厚で」
「長浜ラーメンと博多ラーメンって変わるのかな?見た目おなじだけど。んー明太子とも合うよ。西片。」
「どれどれ、ほんとだ。美味しい!でもあんまスープの感じは変わんないんだね。」
「明太子合うでしょ」
「うん、めっちゃ合う!豚骨のクリーミーさが明太子にピッタリだよ」
「でしょ?さてと。豚骨カレーライスなるものを行ってみよっか。はい、あーん」
「あーんするの!?///」
「当たり前だよ~はい、あーん」
恥ずかしいけど、あーんして食べさせてもらう
ぱくっ
「結構合うかも!」
「へー。私も食べてみるよ。あーん」
「オレもあーん、って食べさせるの!?///」
「当たり前だよ。ほら」
恥ずかしいけど、高木さんに食べさせてみる。
「ほんとだ。結構合うね。カレーにしても匂いとかも気にならないし、それでいてこのコクと甘みが豚骨なのかな?はい、西片、あーん」
「のびちゃうから///ラーメン///」
「わかったわかった。これで最後にするからさ」
そんなこんな一緒に昼食を食べた
「「ごちそうさまー」」
そうして午後からは別棟や図書館の恐竜の展示を見に行ったりした
タルボサウルスの巨大な全身骨格標本を見たりとか、サウロロフスの後脚の骨格標本(後脚だけで人間の身長の倍くらいはある)を見たり
恐竜の系統関係や、進化を表した図をノートにメモったりとかをした。
博物館デートを楽しみながらもあくまで自由研究の目的もあり、普通に回るよりかなり沢山の時間をかけた
それでも、やっぱり楽しいのは、高木さんと一緒だからだと思う。
最後に博物館に付属してる図書館で資料をまとめる。
図書館ではExcel、Word、PowerPointなどが入ってるパソコンを貸し出してくれるので
それで、カードリーダーでスマホの写真を読み込み
資料を作ってく。昨日の和泉群層の化石発掘の記録、この博物館で見た様々な恐竜化石、化石の発掘から標本にするまでの肯定、恐竜の系統関係、そして恐竜時代に生きていたオレや高木さんの遠い祖先の話
いっしょにあーだこーだと相談しながら資料をまとめあげる。
「よし出来た。後はこのデータをSDカードに入れ直して、印刷したら自由研究は完了だね。」
SDカードに移し、気付くともう4時半近く、博物館閉まる時間に近い
「印刷は私の家でしてくるよ。ありがと、西片。自由研究、共同研究してくれてさ」
「いえいえ、こっちも助かったし」
「西片と一緒にやったから、すごく楽しかった。」
「俺もだよ。高木さんと自由研究一緒にやると楽しい」
「好きだからだね。お互いにさ。」
「……うん///」
そうして博物館を後にする。
ずっと手を繋いで。
「西片に触れてると、心が落ち着くや」
「うん。…おれも」
「ずっと繋いでようね。」
「うん。」
バスの中も電車も、フェリーの中でも
高木さんとずっと手を繋いでいた。
土庄港に着くともう21時過ぎ。真っ暗だ
高木さんを家まで送る。
「夏祭りの日よろしくね。西片」
「うん。」
「……夏祭り行く前にすることも...だよ...?///...私と西片が...初めて……してから、ち、ちょうど一年なんだからさ...///」
「……うん///」
「恥ずかしいからって逃げちゃダメだよ?」
「わ、分かってるよ!///」
「あははははは。西片顔真っ赤。じゃあまた明日。西片」
「うん。また明日。」
いよいよ今年も夏祭りが間近に近付く。
高木さんとオレの高校最後の夏祭り。
…その前に高木さんと...する事考えると...ちょっと……いやだいぶ恥ずかしいけど
でも、夏祭りの日、楽しみだなあ。
第177話 完
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