からメシ 第156話 高木-takagi- 対局
そんなこんなで土日とその次の祝日、みっちりと多目的室で麻雀の練習した
イレギュラーな状態対応ということで
日曜日はちょっと大会とは環境が違う変則的な試合も混ぜた。
鷹川さんが西片君が入ると高木さんはどうなるのか気になっていたみたいで
一度俺も混ざってみたが
「西片、それロン!」
「西片またそれロンだよ!」
「西片、またそれロン!」
なぜか無限に高木さんに振込み続ける。
そして後半戦東四局 高木さん西家
「西片、それロン。えーと、役満だね。四暗刻」
西片 -1200
100000点あったのに飛んでしまった
すみれ「西片君が入ったら西片君が毎回高木ちゃんに振込み続けて役満直撃飛び終了って…な、何が起きたの!?今」
西片「お、俺の牌が見えてるの!?高木さんは」
高木さん「というか西片のことしっかり見てると西片の手牌とか、何捨てようとしてるかとか、どんな役狙おうとしてるかとか、何考えてるかとか常に分かっちゃうんだよね。」
「だから西片の表情とか仕草から手牌読んで捨てるだろうなあって牌を狙い撃ちすればいいだけだから簡単なんだよ。西片分かりやすいからね~。西片のことなら全て分かっちゃうよ。他の人だと全くこういうの分からないんだけど」
すみれ(...この2人…さすが学校中に夫婦認定されてるだけある。...大会じゃ西片君打てないから使える戦法じゃないけど)
また1回一荘戦もやったが
高木さん「ロン!えーとこれはホンイツトイトイドラ4で...」
すみれ「あと三暗刻と場風牌で5本場だから12500オールだね」
西場で高い手を和了りまくるようになり西場西家ではまた数え役満。そして親で連荘し三倍満で部員一人飛び終了で高木さんは343700点も取った
すみれ(これも西場のない大会では使えないけど……高木ちゃん、西場も強いのね)
すみれ(ただ、気がかりなのは…これって)
祝日の月曜は午前中で対局を終えて、部長にお見舞いがてら報告に行く。
すみれ「大丈夫?」
部員達「大丈夫ですか!?」
六車「ありがとな。みんな。大会は出れんけど…明日には退院はできそうやで。で、私の代わりに入った高木ちゃんって人の牌譜、早速見てええか?」
すぐに本題に入る。
鷹川さんがタブレット端末をスクロールしてデータを見せる。
六車「なるほど...これは凄いな。…てか金土日月と高木ちゃんと打ってお前ら一度もトップ取れんかったんかいな」
部員A(二年)「恥ずかしながら…」
部員B(一年)「こんなのどう対応したら良いのか...」
六車「...たしかに凄い能力やけん。やけど穴があるな。特に萬子筒子索子、つまり牌の種類問わず、すぐ切られる3の牌。かなり切られやすい1の牌、比較的切られやすい5の牌。ここらで手作りしたら狙い撃ちは容易や」
「だから日曜の午後や月曜の練習では一荘戦や西片君が入った試合以外は高木ちゃんの点数を+50000~+100000程度に抑えられてたんちゃうん?」
部員C(一年)「一応3狙い撃ち意識はしてましたけど…」
すみれ「理屈では対抗策あるんだけど、特性上凄く打点も速さもあって上手くいかないんだよね。」
六車「とはいえ、打ち方見るに、西を切れない、牌種問わず2と4が手牌にある時余剰分の2ないし4しか切れない。あたりは制約やろなあ。」
すみれ「破ると深刻な不具合が出るやつですよね。」
六車「あと、牌種問わず2、4が集まるんじゃなく、牌種問わずセットで2、4が集まる能力、って言った方が正しいかもしれん。ああああ、打ちたい!打ちたい!打てへんのがもどかしいわ!」
すみれ「あんま病院で騒ぐと…」
六車「ここ個室やし、多少は大丈夫やろ。一応統計解析はやったんか?」
すみれ「うん。するまでも無いけど、高木ちゃんが和了った全ての局で西を暗槓してる事象、和了した全ての局で牌種問わず2と4を暗刻で揃えてる事象、
配牌に必ず西牌と、牌種問わずの24牌が1セットはあること、ツモ牌の西、牌種問わず24牌の偏り具合など
気になる要素全てでカイ二乗検定したところP値は0.01以下どころか0.000001以下と出ました。明らかに西と牌種問わずの24牌のセットが著しく集まりやすいです」
六車「ついに来たか...牌譜全部見る限り現時点で見受けられそうな高木ちゃんの能力をまとめるとこうやな」
①和了り牌には必ず西が暗槓子で含まれる。故に西が物凄い勢いで集まる
②筒子萬子索子問わず2と4がセットで集まる。
③他家に西が絶対行かず、他家には2と4がセットで来ない。筒子萬子索子問わず2があれば4は来ず、4があれば2は来ない
④西家では西が必ずドラになる。また西家では和了スピードが物凄く速く火力も上がる(もしくは西家では必ず和了る可能性もある?)
⑤※全国大会では西場なしのため大会で使用不可
西場では物凄く強い(実は西場はドラが必ず西になり和了スピード及び火力があがる。西場の西家はカンドラも乗り2~4巡目に和了る)
⑥※対西片戦の西片に対してのみ有効なため大会で使用不可。
西片の全てがわかるため、西片の配牌や手牌、ツモり牌、切る牌や役作りなどの作戦、思考などが全て分かる。
すみれ「これ、羅列してみると凄すぎるね。」
すみれ(高木ちゃん。西片君が大好きって気持ちだけで、ここまで凄いことできるなんて…)
六車「よし決めた。大会オーダーは私以外は香川大会と変更なし。高木ちゃんには先鋒に入ってもらうで」
部員C(一年)「えええ。た、高木さんってまだ麻雀牌触って1週間もしない素人ですよ?え、エースポジの先鋒なんて」
六車「そのセリフは勝ててから言うんやな。実際、うちの部全員素人に完敗したんやで」
部員C(一年)「……。」
六車「というかめっちゃ強力やで。...千里山の椋や朝酌の白築も上手く行けば抑えられるかもしれん。椋は高木ちゃんの西家に奴の東家が当たれば確実に完封できるやろうし...前半後半両方外れたら悲惨やが、白築も南3~4局に高木ちゃんの西家が当たれば抑えられる」
すみれ「部長は分析すると今回優勝は朝酌か千里山でほぼ間違いない。もちろん優勝する気で行くが。って言ってたよね...2チームともノーシードだけど。でも…」
六車「去年は白築も椋も中三でインターハイどうやっても出れんかったからな。でもインターミドルで史上最強の二人とか言われた奴やで」
すみれ「そんな...すごい人に高木ちゃんが勝てるかもしれないって...」
六車「そうや。エースポジションは一番多いのが先鋒、次に大将や。現に白築は中学時代は先鋒、椋は先鋒か大将のどちらかや。他校も考えたら高木ちゃん置くのは先鋒やろうな。」
すみれ「今回シードの姫松とか中堅に長年エース置いてるけど、一部だよね。そういうの」
六車「せやから先鋒や。バッタバッタとなぎ倒すで。頼んだで高木ちゃん。」
高木さん「はい...」
西片「高木さんあんま喋んないね今日」
高木さん「ちょっと何言ってるか分からないし、西片以外だと私こんな感じだよ」
部員A(二年)「そういえば練習試合たくさん決まったんですよ。」
部員B(一年)「それなら練習試合に高木さん出して実戦積ませてみません?香川王者になったから全国団体戦出場出来なかった強豪校に、申し込み受けて貰えたり、申し込んでくれたりしてて。」
大会規定で団体戦において全国大会に出る高校、選手同士の練習試合は禁止されている。
しかし、代表校同士じゃ無ければ練習試合は許されている。
部員B(一年)「木曜日に広島3位の鹿老渡、金曜日に岡山4位の讃甘、土曜日に兵庫2位の劔谷、そして日曜日に上記3校と全国団体戦ルールでの対戦を取り付けてます。高木さんの実力見るのも兼ねて実戦練習を」
六車「ダメや。練習試合はダメ。...強いがこれだけ分かりやすい打ち方、能力だとすぐ対策される。弱点もわかりやすいし是正しようがない以上、ぶっつけ本番で弱点無視で翻弄した方がいい
練試して牌符が外に漏れたら終わりだ。……というか全国じゃ半荘二回の先鋒戦のうちに対応してくる可能性もあるな。ここは策を考えないと...」
すみれ「ほんとに切り札って感じですね」
六車「むしろ急造で募集した初心者で先鋒は捨てるってアピールして油断させた方がいいかもしれない。本当は最強の切り札だけどな。」
という訳で、高木さんは練習試合には出なかった。
ちなみに練習試合の結果は大会結構悲惨な感じだったらしい、全国大会ルール(ただし、先鋒次鋒副将大将の四人仕様)
鹿老渡1位 劔谷 2位 讃甘3位、そしてうち、小豆島総合がラス。と
俺らは俺らで高木さんが麻雀の基本ルールや打ち方などを勉強しつつ、俺と受験勉強をしたりしていた。
「高木さん、練習試合でれなくて悔しかったりする?」
「ううん。元々数合わせで出ただけだし。そもそもそういう作戦だって言う話だからなんも思ってないよ」
「そっか。」
「ただ、期待されすぎちゃって怖いかなちょっと。素人で、打ちたいように打っただけなんだけど切り札みたいにされちゃって」
「でも凄いよ高木さん。西とにしが集まりすぎというか」
「西片が好きなだけなんだけどな。私。でも...それで西とかが集まってくるって話でしょ?聞いてると、恋ってすごい力だよね。」
「そりゃあ...毎回隣の席になる奇跡を掴むような力だからね。」
「そっか。考えてみたらそうだよね。」
「...いいのかな。練習しなくて。私。牌触らなくて」
「高木さんがいいようにしたらいいと思うよ。」
「そっか、ありがと。...西片、私のパイ触る?」
「えっ...///」
「ほら、牌ってパイって読むでしょ?私のパイ、2つあるやつ、触ってみる?息抜きに」
「...///じゅ、受験勉強するよっ!高木さん」
「あははははは。西片やっぱこういうの弱いね。」
た。高木さんめー!
第156話 カン!