からメシ 第118話 大学選び

とりあえず図書館で大学入試関連の、最新資料を借り、また、ネットも併用してどの大学がいいか調べることにした。
どの大学がいいかっていうか、どんな大学があるかも大学ではどんなことをするのかもよく実感が沸かない。

そもそもあまり興味を持ってこなかったとすら言える。東大がめちゃくちゃ頭いい!位しか知らないのだ。

「まず、先生になるなら四年制大学の教育学部がいちばん近道かなあ。多分…もちろん他でもできるけどね。」

「とりあえず教育学部のある大学にすればいいのかな」

「うん。あとはどこの大学にするかだね。通いなのか、…えへへ...二人暮しなのか」

高木さん。二人暮しっていう前についにやけてしまったのだろう。

「小豆島からだと通いって現実的じゃないよねあんまり。」

「一応讃州大学は高松にあるみたいだけど...教育学部は観音寺キャンパスだって。しかも豊浜の方。ほぼ愛媛。通うには遠いなあ。」

「あと、西片。国公立と私立どっちがいいの?」

「うーん。私立は高いからなあ。昨日父さん母さんに相談したらなるべく国公立にしてって言われちゃったよ。」

「私立大は高いもんね~」

「神樹館大学ってのもあるみたいだね。教育学部も坂出駅から割とすぐだから通えるとしたらこの辺りが限界かな?」

「西片、神樹館って私立大だよ。神樹館附属ってよく甲子園出てるじゃん。……国公立で通いはやっぱ厳しそうでやんすね」

通いが厳しいって指摘する高木さんがえらい楽しそうだ。やんすね。なんて一度も言ったことないだろいままで。もう頭の中で一緒に暮らしてるんだろう。

「さ、通いが厳しいとなると候補は日本全国に広がるね。どうする?なるべく近いとこにするか、すごい遠いとこにしてみるか」

「うーん。難しいよね。」

「遠くに行ったら行ったで駆け落ちみたいで楽しいかもよ。」

「もっと穏便な感じで行こうよ」

「あと都会にするか田舎にするかってのもあるよね」

「……田舎に住んでると都会に憧れる。って言うけど俺あんまそれないんだよな。」

「私もかな~なんかちょっと怖いっていうか...でも西片がいればやっぱ怖くないかな。…ただ...私も田舎のが好きかな~」

「俺も……ていうかさ……」

「「この島が好き」」
2人で同時にハモってしまった。

「……だって...この島はさ。西片と出逢った場所だもん。」

「……俺も…も、もとから結構この島好きだけどさ。一番の理由は…た、高木さんと出逢えた場所だから///」

「ありがと。同じ気持ちなのうれしいや」

そういうと高木さんがキスをしてきた。

「……ならさ、西片。割といつでもこの島に帰れるような場所にしない。」

「そうだね。あとなんかちょっとでも馴染みのある所の方がいいかな。親近感湧くって言うか」

ふと。その時ひとつの大学が目に入る。
倉敷……大

「倉敷!ってどう?」

「いいねそれ。私たちが初めて島外デートした場所。」

「うん。中二のクリスマスの時…。あれからもう三年くらい経つんだね。」

「想い出深いし、いいんじゃないかな。ここに一緒に住んで、一緒に通うの。」

「でも、どこで一緒に住みたいかなんて理由で大学選んじゃっていいのかな…思い出がある場所とかってさ……」
「普通大学って学力とかその大学でしか学ベないこと、とかこの教授の授業受けたい。とかで選ぶんでは」

「そんなの人それぞれだよ~。私たちの想い出がある場所だから。なんて私たちらしいじゃん。そもそも西片は私たちの想い出がある場所だから母校の中学の先生になりたい訳でしょ?」

「確かに...そう考えると俺と高木さんらしいのかなこれ。」

「ちなみに倉敷大学は国立大らしいけど、難易度は国立大の中では難しくないみたいだよ。偏差値55くらい。」

「...あの。高木さん。偏差値ってなんですか?」

「...そうだよね。……私たち当たり前のように島の高校だけ受けたし意識してなかったから、あんま分からないのも無理ないか。...私も漠然としか意味知らないし」
「あのね。受験生の平均点を偏差値50としてどれくらいの位置にいるかを表す指標っていうか......55だと上位30%くらいかな」

「よくわかんないな。上位30%っていったら70とかになるんじゃないの?」

「うーん。感覚的にはそうなんだけどなんかやたらややこしい数式で算出するものだから」

「……ちなみに俺は今どのくらいなの……?」

「...模試ってやつ受けないと分からないんだよねそれが。だから私も自分の分からないし。」

高校受験では当たり前のように島の高校入ったし、高木さんは頭良かったとはいえ、俺の行く高校の俺の行くコースじゃないと絶対嫌。ってことで当たり前のように島の高校の普通コース(文理コースと総合コースに分かれるのは二年次)受けた。

そりゃあ落ちたくないし多少は勉強したけど、俺も高木さんも塾なんかいってないどころか、模試とかいうのすら受けたことないし
高校はそんな感じで入ったし、高二の秋の今になるまで、高校卒業後進学しようとすらあまり考えてなかったこともあり
そもそも進学するという実感がないというかあんまり受験って概念も分からない感じだった。

なるほど。色々大変なんだな。進学するのも。

「で、西片。三年次のコース志望どうする?今の総合コースにするか、文理コースにするか、特進まで狙っちゃうか。文理コース、特進コースに移るにはテストがあるけど…。」

「うーん。たしかに文理コースのが進学には向いてるし、特進コースのが進学にはさらに向いてるけど……」

でも落ちたら別のクラスになっちゃうのはな……

「……確かにそれはあるよね。でも逆に考えると総合コースは2クラスあるからどっちのクラスになるか運要素になるけど
特進は1クラスしかないから受かれば絶対同じクラスになれるよ。」
「たしかに今までずっと同じクラスだったから、神様のくれた運命的なもので1/2の確率でも絶対次も当たる。って思いたいけどさ...」
「でも同じクラスを確定で勝ち取れるんなら、勝ち取ってみるのもいいかもしれないよね。もちろん西片の意志次第だけど。」

確かにそうだ。今まで同じクラスだったのは運命的な何かなのかもしれない。でもそれにかまけて、努力すれば絶対に一緒のクラスになれる道を見つけたのに
どっちにしろ同じクラスになる運命なんだから頑張んないでもいっかー。って意識になったら今まで同じクラスの隣の席にしてくれてた神様がいたとしたら、見放すんじゃないか?

でも…総合コースからいきなり特進?行けるのか。俺。

「西片。大丈夫だよ。私がついてるから。」
「西片が特進コースめざしても、国立大めざしても、絶対入れるように、全力で支えるからさ。」

「……でも俺勉強好きじゃないんだよな...」

「ねえ、西片。なんで勉強って苦手意識出ちゃうと思う?」

「...そりゃあ。面白くないことを長々と続けさせられるから...かな...。」

「そう。その通り。つまんないことを長時間強制させられるからなんだよ」

先生方には申し訳無いけど。その通りなんだよな。自分で勉強する気にもならないし

「西片、でも試験前に私から教わってる時ってどう?つまんない?」

いや…もし面白くなくても本人を前にしてつまんないなんて言えんだろ...でも...
ふと考えてみる

「正直に言っていいよ?つまんなかったらもっと面白くするだけだし。」

あれ...でも高木さんから教えてもらった時って……分かりやすかったし、結構楽しくなかったか?

「……ふ、普通の勉強に比べて楽しかったかも……」

「そう言って貰えると嬉しいや。ありがと。じゃあもっとおもしろく楽しく、刺激的に教えてあげるからね」

「刺激は弱くお願いします!///」

「あははははは。」
「でもさ、西片。ひとりじゃ出来ないこともさ。二人ならできるよ。西片と私の二人でいれば何だって楽しいよ。私たちは二人で一緒にいるってことが大事なんだよ。なによりもね。」

「そうだね。...よし……頑張ってみようかな」

「そうそうその意気。」

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とりあえず色々俺と高木さんで相談して俺も高木さんも全く同じ進路調査票を書いた。

希望コース
特進

第一志望
️〇国公立大学
倉敷大学 教育学部

……

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さて月曜日。学校に行く。

高尾「おー、西片進路調査票書いたか?」

西片「うん。一応。」

高尾「俺なんかあんま実感わかなくてさ~適当に面白そうな学校書いといたわ。ほら見てみろよこの国際信州学院大学ってとこ。この教授の髭がさ、めちゃくちゃ長いんだよw」

え、そんなんでいいのかよ!!結構真面目な書類だと思うんだが!

高尾「西片はどうすんのさ。」

西片「俺たちは倉敷大学受けようかなって。」

高尾「……大学よく知らないからわかんないんだがすごいの?それ」

西片「一応国立大」

高尾「え、お前国立大受けんの!すご。」

西片「ま。まあね。」

めちゃくちゃあれこれ悩んで決めたのに
まだ皆そんな定まってないんだな。でも

「3年生になっても、大学生になっても、そのあとも。よろしくね、西片。」

「こ、こちらこそよろしくお願いします。」

二人で歩く未来について、詳しく考えて行けてよかった。

第118話 完

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