からメシ 第186話 受験生の日常


「ふぅ…録音終わった。…西片これ喜んでくれるかな。」

~~~

とある日の学校帰り
オレの部屋にて

「西片はさ。結構リスニングも弱いよね。」

「うん。たしかに。…も?」

「記述も弱いでしょ?ついでに他の教科も」

「そ、そうだけどさ!///」

「あはははは。ごめんごめん。別にけなそうとした訳じゃなくてさ。ただね、私たちもかなり勉強してるけど、他の受験生も同じように勉強してるわけじゃない?
他の子達より出遅れてる私達が国立の大学に合格するのは結構難しいことなんだよ。」

「それはそうだけど。」

「かといって睡眠時間も息抜きも完全に削って、勉強以外は寝るだけ。ご飯食べる時ももちろん勉強。ってすると、西片精神的にもまいっちゃうだろうし。学習効率も悪くなると思ってさ。」
「そこで、秘策があります!西片、ちょっとスマホ貸して」

高木さんにスマホを貸す。なにやら高木さんはUSBカードリーダーから何やらデータを入れているようだ。

まさかからかうために自分で撮ったちょっとやらしい画像を待ち受けにしてるとかじゃないよな。

「そんな心配しなくても大丈夫だよ~。そういうの待ち受けにして他の人に見られちゃったりするの絶対嫌だし。そんなことするより直接西片に見せるよ」

おもむろに高木さんが制服のボタンを外す

「な、な、なにやってんの高木さん!!///」

「西片やらしー事考えてたからさ。答えてあげようかなって」

「いいからっ!///そもそも受かるまでなるべくそういうの控えるって言っただろ!///それよりカードリーダー刺して何やってたんだよ」

「これ入れてたんだよ。このファイル開いてみて」

高木さんが音声データを指さす
えっちな声とか入ってんじゃないだろうな

「大丈夫だって。相変わらずえっちなことで頭いっぱいだね西片は」

た、高木さんめ!また心を読んだな!

恐る恐る音声データを開く

『lesson 1 Listen to the word』

高木さんが流暢な英語で喋りだした。

『 No.1 ……teasing teasing からかい』

「これを西片に寝てる時に聴いてもらおうと思ってさ」

「えー!さっき勉強ずくめじゃ効率悪くなるって話してたばかりじゃん!寝てる時まで勉強するの?」

「別に聴いて寝るだけでいいんだよ。私の声なら西片すんなり頭に入ってくるかなって思ってさ」

「そうかもしれないけど…」

「せっかく作ったんだからさ。ダメかな?」

「…分かったよ。…ところでなんで一単語目がからかいなの!?。」

「それはやっぱりアイデンティティってやつかな?ちなみに単語のあとは長文リスニングもあるから」


夜中

改めてファイルを開いてみる
……!
さ、再生時間6時間17分!?
た、高木さん俺のためにこれを!?

高木さんはいつもそうなんだよな
誰よりも、何よりもオレのためにって
こんなの作るの大変だぞ。寝る間も惜しんだんじゃないのか

それをなんだオレは。寝る時まで勉強するの!?って。高木さんにしてもらうだけしてもらって。文句言って。最低じゃないか。
高木さんに謝らないと。ありがとうって言わないと。

よし。今日はこれを聞き届けるぞ!最後まで
……

しかしそんな決心もつかの間
日頃の疲れも出ており、意識を失ってしまった。

『 I love you. Please marry me.』
と高木さんの声
ガバッとはね起きる。

「た、高木さん!?」

その後、高木さんの流暢な英語で英文が続く。しばらくして再生がおわった。
な、なんだ…高木さんが作ってくれたリスニング用音声か……
でもこの朝になるタイミングでこれって…
しかも愛してるってだけじゃなく…け…結婚…
ま、待ってるってことだよな。これ

次の日。朝
教室にて

「あの。高木さん。…昨日は本当ごめん。高木さん、これ作るのすごい苦労したよね。なのにオレ、寝る時まで勉強するの!?なんて言っちゃってさ
しかも寝ちゃって全部聴けなかったし。本当ごめん!そして、ありがとう。オレの為にこんな苦労して」

「苦労なんて思ってないよ。西片。喜んで貰えたら何よりだよ。それに途中で寝てくれないと困るからね?昼間の勉強が入らなくなるし、なにより寝不足で体壊しちゃうよ」

「ごめん。ありがとう。高木さん」

「いいからいいから。あ、西片でも今日目覚めが良かったでしょう?丁度リスニング終わるあたりで朝になっただろうし」

「ええ、な、なんの事かな~///」

「顔赤いよ?」

高木さんめー!わざと仕込んだなあれ

「あ、あと、現代文の読解も睡眠学習用作ってきたんだ。良かったら…」

高木さん。ちょっと目にクマが出来てる。

「高木さん。凄くありがたいし、ぜひ使わせてもらうけど…オレのために睡眠時間削って無理するのは…」

「好きでやってるんだけどなあ」

「それでも。俺にとって高木さんの身体は大学受かることよりずっと大事だから。寝ずに作るみたいなのは…」

「わかったよ。…徹夜したのバレちゃったか。」

「バレるよ。何年見てきたと思ってるんだよ。」

「えへへ。うれしいな。そう言っても…ら…」

ね、寝てしまった。まだ授業あるけど……

教師「席に着けー」

西片「せ、先生。高木さん体調悪いようなので保健室連れていきます」

しかし、高木さん。完全に寝て身体の力が抜けてる。肩貸すのこれ無理があるぞ
…かくなる上は

は、恥ずかしいけど
お姫様抱っこだ!
今は授業始まったばかり。廊下には誰もいないはず。見られなきゃ、恥ずかしくないんだ

高木さんの肩と太ももを抱きかかえてお姫様抱っこをする。
す、少し重くなったかな。身長伸びたもんな高木さん。

あとは保健室まで、慌てず急いで、人に見つからないように

…た、体育ー!

そう
授業始まるくらいの時間でも体育や移動教室は廊下に生徒がいがちなのだ
特に体育は更衣室で着替えるから移動教室より時間がかかりがち

し、しかもよりによって
高尾ー!!
一番見られたくない奴だー

「わー!わー!なんでもない。なんでもないですからこれは!///」

高尾はじっとこっちを見たあと
引きつった笑いをして去っていった

せ、せめてなんかリアクションしてくれー!!///恥ずかしさが増すー///

高尾(もうなんというか。さすが西片だわ)

恥ずかしさに耐えつつ無事保健室まで運び、高木さんをベッドに寝かす
すると。高木さんが

「っぷ。あははははは。」

「えー!?ど、どういうこと。起きてたの!?」

「いや、本当に寝てたんだけどさ。西片が、私をお姫様だっこしてるとこ友達…高尾くん?に見られて騒いだ声で起きちゃってさあ」
「わーわー!なんでもないですからこれはー!ってさwなにあのリアクション」

高木さんめー!

「お、起きてるんだったら降りてよ///」

「起きたにしても眠いには変わりないし。それに」
「西片にお姫様抱っこされて嬉しかったからさ」

高木さん…
……言おうか…もう
ずっと幸せにするとか、一緒ににいる
ってもう言ってるわけだし
ぷ、プロポーズだって同じことだろ

…こんな勢いに任せて言っていいのかわからないけど。でも、言いたい。

「た、高木さん。高木さんが次誕生日迎えたら。お、オレとけっ…けっこ…」

すやすや

も、もう寝てしまった。
た、高木さん。

まあ無理もないけど。
オレのために2日もろくに寝ずに睡眠学習用の音声データ作ってくれたんだ。

でも良かったのかもしれない。
こんな勢いで、指輪も用意してないし
第一受験も片付いてないじゃないか!

そもそも学生なのに。まだ高木さんを養えないのに、プロポーズしていいのだろうか

色々な考えが渦巻いてしまう。

そんなこんなしていると
保健医の女先生が来たので、ちょっと心配だけど
事情を話し高木さんを任せて授業に戻ることにした

西片「先生、ゆっくり寝かせといてあげてください」

保健医「分かったわ。」

そんなこんなで
勉強の日々
しんどいけど、高木さんと一緒に勉強するのは楽しいし、それに高木さんが寝る間も惜しんで俺のために勉強用の音声データとか作ってくれたのを見ると
オレだってそれに答えないとってなる。学校や高木さんとの勉強時間以外でも、自分で勉強。
トイレやお風呂の時間だって使ってやる!もちろん寝る時は高木さんの作ってくれた睡眠学習音声データを聴きながら寝る!

みっちりと、「勉強ってこんなに密度高くすることが出来るものなの?」ってくらい勉強して10月中旬の模試を迎える

「西片、西片の目標はこの模試で全教科総合の偏差値50、受験生の平均ど真ん中を少しでも超えること。私の目標は65超え。特待生が射程範囲に入るあたり」
「これをお互いにもし越えられたら…ハロウィンはご褒美でコスプレえっちね」

「た、高木さん。そ、そういうのをご褒美にするのはちょっと…」

「モチベーションだよ西片。モチベーション。それに、私にとってもご褒美なんだから、その申し出は却下します。」

「…だよね。」

「さ、張り切って全力出していこー。」

高木さんとオレ
隣の席に座って、模試の開始時間を待つ

試験官「はじめ!」

試験官のスタートの合図と同時に
模試の問題用紙を開いた

第186話 完

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