からメシ 第122話 秋風ガール

模試で気を落としたのか、西片の元気がない。
それに結構焦って勉強してる気がする。

……それだと続かないよ。西片。
よーしここは一度思いっきり外に出て遊ぶかー。

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あのテストから一週間、週末に高木さんに誘われて1日外で遊ぶことに。
土曜日は朝から夜までみっちり高木さんと勉強した。その代わり日曜の今日はみっちり高木さんと遊ぶ。ってことにした。

「西片、もうバイク出せるんだよね」

「うん、母さんにお金返し終わったし、のる練習も結構やってたし、暗くなるまでに帰ってくれば…」

「やた。久々に西片とツーリングだ。」

そう、高1の時取った小型二輪免許と買ったバイク。色々あって暫く練習以外で乗れてなかったが、一年以上ぶりに、高木さんと2人乗りだ。(小型二輪は2人乗りできる。)

「うん。」

「楽しみー。でも、ちゃんと整備してる?タイヤすっぽ抜けて事故とかやだよ?」

「してるよ!」

「まあそうなっても私の血液型、西片と同じだから西片に輸血してあげられるよ。良かったね、西片。」

「縁起でもないこと言わない!」

「あははははは。」

しっかり俺も高木さんもヘルメットを被って
背中にこの世で最も、そして唯一大好きな女の子を感じながら走る。
この大好きな子のことを守れるように慎重に、安全運転で向か…

「えっとどこ行くの高木さん」

「まずは夕陽ケ丘行こー!」

バイクでトコトコ夕陽ケ丘に向かった。
まずガソリンを満タンに入れ、峠道を登っていく。
バイクを走らせると感じる冷たくなってきた秋風。でも背中には高木さんの。大好きな子の温もりがあるから、暖かく感じられる。

「西片。ここのみかん農園でみかん狩りが出来るんだよ」

受付を済ませてお金を払いみかん狩りをする。

「西片~上の方のみかん取りたいからさ、肩車してくれない?」

「下の方にもみかんあるのに」

「上の方と下の方で味違うのかなって気になって」

「…分かったよ。肩車するね」

高木さんを肩車するが…た、高木さんは今日スカートなので…く、首筋にぱ、パンツの感触…もっと言えばその奥のふにっとした感触が……

「ん?どうしたの?西片」にやにや

高木さんめ!これが目的か!
また俺の事ドキドキさせて!
こんな外でえっちな気分になっても耐えるしかないんだぞ俺は

その後2人でみかんを食べた

「こっちが木の上になってるやつ。こっちが木の下。比べてみようよ」

「いただきます!」

「木の下になってるやつは…甘いね。こっちは」

「木の上の方のやつのが酸っぱいんだね。初めて知った。……まあ、実は、西片の子供が出来てて、つわりで酸っぱく感じるのかもしれないけど」

「出来てなかっただろっ///」

「あははははは。顔真っ赤。昔から変わらないね~すぐ照れるとこ。かわいい」

「…///」

そんなこんなでお次はお猿の国
ニホンザルが放し飼いされている動物園みたいなとこだ

「西片、ニホンザルがいっぱいいるよ。かわいいね。」

「ここ初めて来たよ。」

「あ、フンがいっぱい落ちてるから踏まないように気をつけてね。西片。」

ぶにゅ

「ああああ、踏んじゃった」

「言ってるそばからウンコマンにならないでよ~」

「ウンコマンってなんだよっ///」

「うんち踏んだ人の称号だよ」

「やめてよそれ!///」

「大丈夫だよ。西片。西片がウンコマンになっても私は愛してるよ」

「そういう事じゃなくてさ!」

猿が映る角度で2人で記念撮影した

「これも後でアルバムにいれとこ~。ちゃんと西片がうんち踏んだことも書いて」

「記録に残さないでよっ///」

「いいじゃん。見るの私たちだけなんだからさ。それか将来的に私たちの…子供...くらい?///」

「子供にかっこ悪いとこ見せたくないから!///」

砂利で踏んでしまったフンを落として
最後に寒霞渓…の途中の美しの原というとこまで行く
寒霞渓は有名で公共交通機関もありこのシーズン混むのだ。

このシーズンというのは

「西片、見て、森が真っ赤に染ってるよ。」

そう。紅葉だ。

「本当綺麗だ。」

よく見ると赤、黄色、橙と色んな色を見せる紅葉。本当に綺麗なのだが。そんな紅葉の色さえも。はしゃぐ高木さんの綺麗さを引き立てるものでしかない。。

それくらい、高木さんは。綺麗だ。
この世界よりも、高木さんの方が、俺は…

……だから、俺の人生全てを使って、高木さんを幸せにする。

「西片~お弁当にしようよ。いっぱい作ってきたからさ」

卵焼き、レンコンのはさみ揚げ、おにぎり……
美味しそうなのがいっぱいだ。

「いただきまーす」

「卵焼き美味しい。出汁がすごいきいてる」

「西片、だし巻きのが好きでしょ?鰹節いっぱい使って出汁とったんだよ」
「で、出汁がらは甘辛く煮て、おにぎりの具にしてあるんだ~」

「おにぎりもおいしい!キノコ入ってる!」

「でしょ?炊く時に余った出汁もいれてさ。しめじご飯のおにぎりだよ。秋らしくね」

「レンコンのはさみ揚げも最高。サクッとした食感と肉のジューシーさがたまんないね。」

「ありがと。えへへ。うれしいや。いつも美味しい美味しいって食べてくれて」

「高木さんも食べてよ。」

「うん。いただくね。」

紅葉を見ながらご飯を食べる。

「西片。元気出た?……勉強なんて一緒に少しづつできるようになっていけばいいからさ。別に西片が勉強出来なくても私は大好きだし」
「西片がもし落ちて浪人するならその時は私も辞退して付き合うし。進学だろうと浪人だろうと就職だろうと、無職だろうとどんな道行こうとついて行くよ」

「いや…せっかく受かって辞退って…てか受かる気満々だね、てか無職て」

「あはははは。専業主夫やってみる?」

「いや、それは…高木さんが良くても俺が嫌だよ。なんていうか、高木さんにおんぶにだっこみたいで」

「そんな事ないのになー。でもかっこいいね西片。ただね、私は西片とずっと一緒にいることが大事なんだよ。」

……高木さんがどんな俺でもついて行く。一緒にいる。どんな俺でも大好きだから、って言ってくれるからこそ
余計無様な姿は見せられない。高木さんは何があっても俺の事好きだろうけど、それに甘えちゃダメだ。だからこそちゃんとしないと。

あと一つ気になることが

「……元気ないのは高木さんも同じだろ?」

「……やっぱ西片。こういうのは気づいちゃうんだ。……お父さん、お母さんとこないだ喧嘩しちゃってさ。ちょっと進路絡みのことで」

「え、もしかして倉敷大行くの反対されたとか」

「ううん。そうじゃない、一応。…実はうちも昔と違って今はそんなにお金無いみたいって背景もあるんだけどさ。
…私って大学行く理由が西片、だけじゃん?今でも西片が就職!って言ったらすぐに就職に切り替えるし」
「西片と一緒にいるのは私が生きてる意味だからさ、それは両親ももちろん認めてるんだけど、
大学で学びたいことが何もないのに、学費出してもらうのは筋が通ってないんじゃないかって言ってさ。」
「倉敷大学行くなら特待生制度で学費免除にするか、大学行きながら学費はアルバイトで稼ぐか、
…倉敷で西片と一緒に暮らしつつ、大学に行かないで働いて西片を支えるか。って。」
「近々大きな出費があるだろうから。そっちを疎かにしたくないから。学費は特待生で免除してもらうか、自分でなんとかしてって」
「西片との事だからつい…私も怒っちゃって。大きな出費って何?ってのもあったし」

そんなことがあったのか。高木さん。

「…ただね…たしかに特待生になればいいだけの話だし、…倉敷大には学費全額免除の特待生制度あるし……合格者数の上位2%って枠は少ないけど頑張ればなれると思うし…
まあどう転んでも西片と一緒にいられるんだけどさ。そこはちゃんとお父さんもお母さんも考えてくれてるわけだし。
それに親に学費出してもらうって、別に当たり前の事じゃないんだよね。本当の意味で親から自立して、西片と一緒になるってそういう事だと思うし。」

確かにそうかもしれない。
それに高木さんの両親も俺と高木さんの関係は尊重してくれてる上で、絶対それを崩さないようにしつつ、でもあんたたちはちゃんと努力しなさい。って話だ。

高木さんのうちより資金がないうちの方でも奨学金制度使えないときついって話はしてたし。
大学の近くで…高木さんと住む家賃は自分でなんとかしないといけない。
なにしろ高校は公立だから無償だが、大学は国公立でもそうはいかない。
俺もそのへん考えて行かないとな。...さすがに特待生は無理だろうけど。

「……なんかごめんね。こんな話。私も特待生目指して頑張るからさ、西片も頑張ろ?私が全力で支えるから。」

「うん。」

さて、まだ夕方前だが暗くなる前に帰らないと。

「あ、西片、帰る前にあの展望台登ろうよ」

変わった形の、階段が真っ直ぐ上まで続く展望台があった。
展望台をのぼっていき、上まで着く

「今誰もいないよね。」

と高木さんが周囲を確認すると

「西片ー!大好きー!」
と紅葉の絶景に向かって叫んだ。
照れる。恥ずかしい。でも
嬉しかった。

「次は西片の番だよ」

「え、俺もやるの?俺はこういうの向いてないというか…///」

「だーめ。周りに誰もいないんだし。」

「でも…///」

「だめ?」
高木さんが寂しそうな顔をする。
ええい、やってやる!

「高木さんー!好きだー!」

「声がまだまだ小さいね。」

「高木さんー!大好きだー!」

「西片ー!大好きー!…ずっと一緒にいようねー!」

「当たり前だろー!」

しかし冷静になると
なんてバカップルみたいなことをしてしまったんだ。

「西片いまめちゃくちゃ恥ずかしくなってるでしょ?」

「そりゃあ…あんなのさ。誰かに聞こえてた///」

「いいと思うけどね~。ホントのことなんだし。それに、恥ずかしい事もいっぱいしようよ。二人で」

「は、恥ずかしいことって///」

「あれ?いまのはそっちの意味で言ったんじゃないんだけど。まあそっちの意味でもいっぱいしよっか」

「…///」

「楽しいことも嬉しいことも二人でいっぱいしようよ。失敗も二人出いれば大丈夫。転ぶ時は一緒に転ぼう。手当はしてあげるからさ。」

「うん。そうだね。」

「バイクで転んじゃダメだよ?できるだけ。」

「ちゃんと安全運転で行くから!」

大切な高木さんをしっかり守れるように

高木さんを家まで送る。
夕暮れ時までには間に合った。

「じゃあね。西片。また明日。」

「うん。また明日。」

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高木さん「お母さん。お父さん。私、倉敷大の特待生目指して頑張ってみるよ。」

高木さん父「そっか。頑張れよ」

高木さん母「そう。頑張りなさい。あのね。昨日の話の続きなんだけど、どうしても疎かにできない大きな出費ってのはね…言っていいかしら」

高木さん父「ああ」

高木さん母「あなたと、西片君の結婚式のためのお金よ。」

高木さん「えっ…?」

高木さん父「娘と、娘が心から愛してる人との結婚、式ぐらいちゃんとしたの開いてあげないと。……もう、考えてるんだろ。結婚。」

高木さん「うん。もちろん、すぐにでも西片と結婚したいけど…そっか。そんなことまで考えてくれてたんだ。ありがとう。……ごめんなさい。昨日は怒っちゃって」

高木さん父「別にいいさ。それだけ西片くんに真剣だって事だし。ただ、お父さんもお母さんも、君が西片君と一緒に幸せにいて欲しいっていつも思ってるんだから。邪魔なんて絶対しないから。そこは勘違いしないでほしいな。」

高木さん「うん。分かった。」

そっか。お父さん、お母さん
そんなこと考えてくれてたんだ。ありがとう。

よし、頑張って特待生取ってやる。
それで、西片と一緒に暮らしてさ
大学一緒に通って。
西片と結婚。…結婚。西片と結婚♥。

考えただけでうれしさが止まらないよ。西片。

第122話

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