からメシ 第155話 高木-takagi- 島に降り立った天才

※※※こっからは何回かやる高木-takagi-シリーズとなります。このシリーズはシノハユ the dawn of ageとのクロスオーバーとなりかなりシノハユのキャラがでたりします。
また作中の牌表示で索子は1~9、萬子は一~九、筒子は①~⑨で字牌は東南西北白撥中、赤ドラは赤に5、五、⑤をつけ赤⑤って感じで表現します。

終業式が終わる。明日から夏休みだ。
受験生だから勉強もしないといけない。
でも、文化祭のバンドの練習もあるし
なにより高木さんと遊びたい。
受験生ながら濃密な夏休みにしたいと思っていた。そんな矢先だった。

3組の鷹川すみれさん。高木さんの友達が尋ねてきた

すみれ「た、高木ちゃん。た、大変なことになって……ちょっといい?」

高木さん「うん。」

高木さんと鷹川さんが何か話しをしだした

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すみれ「高木ちゃん。私が麻雀部入って、夏の香川県大会、うちの部が初優勝したのは知ってるよね…」

高木さん「うん。」

すみれ「実は...で、出れなくなっちゃうかもしれない大変なことが起きて……」

高木さん「えっ?なんで?」

すみれ「実は一昨日…部長が帰り道で…」


小豆島総合高校の部長六車…
練習で夜遅くまで残った帰り道……
自転車で坂道を下っていた

六車「よっしゃ。来週木曜、広島3位の鹿老渡と練習試合取り付けたで。やっぱ県優勝すると違うなあ。」♪

と、その時…道を横切る黒い2つの影

六車「わ、た、タヌキや、ひいてまう」

ガッシャーン
親子たぬきを避け自転車で盛大にこける、しかも右腕を地面にぶつけ、ガードレールで思いっきり左腕を切ってしまう

切り傷からはかなりの血が……

六車「こ、これ、腕…折れたな」

救急車で運ばれる事態に。

昨日お見舞いに行ったら
左腕は10針縫う切傷、右腕は骨折
ギプスすら最低1ヶ月は外せないだろうということ。
もちろん8月4日から開幕の全国大会には部長は出れない。左腕は少しは動かせても連続的な動きは厳しいということで医者からもドクターストップ

すみれ「で、うちの部は団体戦規定人数の5人ギリギリしかいなかったから……このままだと…出場辞退になっちゃって……」

すみれ「高木ちゃん。ごめんなさい。こんな頼みいきなりして申し訳ないけど、麻雀部、入って夏の全国大会、一緒に出てもらえませんか!?全国大会終わるまででいいから。…って全国終わったらどの道引退だけど。」

高木さん「えええっ!?」

ちらっと反射的に西片を見てしまった

たしかにすみれちゃんがやっとの思いで手にした全国。すみれちゃんの思いを無駄にしたくない。
でも、私は麻雀なんて未経験の初心者。出ても足手まといにしかならないのは目に見えている。

いや、もっと酷いことを考えてしまうと…
全国大会は東京で行われる……。結構な日数だ。
その間、西片は?……西片置いて、最大で半月くらい東京に?
すみれちゃんは確かに友達だ。西片以外では一番仲がいい。でも「西片以外」では、なのだ。私は西片が一番。西片より優先するものなど、どんなときも無い。酷だけど。

ちらっと西片を見る

高木さん「あのさ、私が出ても…足手まといになっちゃうし……」

またちらっと西片を見る

すみれ「出てくれるだけでもいいんだけど…メンバー登録が来週火曜までで……っていきなり言われても困るよね。」

高木さん「うん。まず西片に…あとお父さんお母さんに相談しないとだし……そもそも正直…」

ちらっと西片を見る
…断ろう。これ。香川県大会優勝したんだから興味がある人が入ってくれるでしょう。……というのは

すみれ「高木ちゃん。高木ちゃんが気が乗らないのは、西片君と一緒にいたいから、じゃない?」

高木さん「なんでわかるの?」

すみれ「さっきから何回も西片君の方見てるもん。長い付き合いだしわかるよ。……それならさ。西片君も一緒に入部するのはどう?」

高木さん「?」

すみれ「女子全国大会だから西片君は大会自体に出て対局はできないけど、うちの部のマネージャーになってくれたら一緒に連れて行けるよ?大会に。」

すみれ「香川県大会優勝したから、後援会も出来たり、県からの補助金も出て…うちは県立だから特にね。高木さんと西片君の宿泊費とか出すくらいは大丈夫だと思う」

高木さん「……うん。…西片と、西片の両親とうちの両親に聞いてみて、OKだったら……でいいなら。あと外せない用事が無かったらだけど…バイトの方は相談してみるとして。予定は……」

高木さん「8月2日に倉敷大のオープンキャンパスだけど、8月4日からインターハイなら間に合うね。」

すみれ「ありがとう高木ちゃん!」

---

高木さんからびっくりするような相談を受ける。
こないだ高木さんと見に行った試合で全国大会行った鷹川さんのいる麻雀部。
全国大会手にしたのに部長の骨折で出場辞退になりそうな話
高木さんが麻雀部入って全国大会に出ようかと思うって話
俺もついてきて欲しい。西片が付いてきてくれるならこの話受けようと思っている。と

……そういうことなら俺もついて行く。

「高木さん。俺も入部するよ。一緒に行こ!全国大会」

「うん!」

とまあそれだけじゃなくお互いに両親に電話して確認する。

高木さんはOK貰えた。
俺の方も最近成績が良くなってきてるしとの事で、あっちでもちゃんと勉強するのよ。と言われたがOKもらえた。

バイトの太田さんの方も
ちょっと忙しくなっちゃうけどそういう事情なら仕方ないわね。と快諾してくれた。

「西片も一緒に行けるとなると、楽しみになってきたかも!」

「東京初めて行くしね」

あとは手続き。入部届けを2人で出し、学生証のコピーと在学証明書を提出しなければならないのでそれを用意する。(補助金絡みの手続きや、大会本部に他校からの急遽引き抜きでないことを証明するため、本校に転入生ではない、または転入後一年以上経過していることを証明する書類が必要)

すみれ「さっそく悪いんだけど、麻雀のルール教えたりして何回か打ってもらいたいから、昼から多目的室に来て貰える?…お昼は、今日は部費で学校のすぐ近くのピザ屋でピザ買ってくるからさ」

なんか悪いなと思いつつも
部の恩人だから。というので買ってきてもらった。

「美味しいね。西片。」

「うん。トマトソースが最高。ここいったことなかったけど今度行ってみよっか」

「デザートのクレープも最高だよ。」

「ほんとだ!果物が新鮮な感じがして」

と、腹ごしらえをしたとこで
まずは実際に牌をつかって高木さんに麻雀のルールを説明する

すみれ「こうやってね。例えば234とか五五五みたいに3つずつセットで同じ数か続いてる数を並べていって」

高木さん「234って並んだ時に3を捨ててもいいの?」

すみれ「ルール上は問題ないけど同じ数か続きの数3つ×4セットに雀頭っていって同じ数字や文字2つが和了りの基本形だから、24だと続きにならないから和了りからは遠のいちゃうよ?222444って集めるなら別だけど」

高木さん「222444を242424って並べてもいいの?」

すみれ「ルール上は問題ないけど和了るとき分かりにくいから気をつけてね。自分からも相手からも」

高木さん「なるほど。」

すみれ「あと役はこんな感じかな」
鷹川さんが役が書かれた紙を見せ、牌もつかって役の説明をしていく

すみれ(やけに高木ちゃん2と4の並べ方とか234の切り方についてきいてきたな?なんでだろう)

この後鷹川さんは役の説明やドラ、赤ドラなどの説明、鳴きやリーチ、フリテンなど基本のルールを説明したが
難しすぎてよく分からなかった俺には。

とりあえずまず他の麻雀部員3人と高木さんで対局し、鷹川さんが高木さんのサポートに回る。

まず、東南西北の牌をシャッフルし裏にしておく

その中から1枚引く

高木さんが引いたのは
高木さん「西片!西引いたよ!西!」

高木さん。こんな偶然にまで俺との縁を見出すくらい俺のこと好きなんだな。

高木さん「つまり私がこのゲームでは西家ってことだよね?」
高木さん(西片との家、西片との家庭……ドキドキするなあ)

すみれ「違うよ?これは仮親決めっていって…とりあえず東引いた人の前に座って?」

高木さん「こう?」

すみれ「そう。このゲーム開始時の家を決めるの。あと家はゲーム毎じゃなくて子が和了る度に変わるからね。つまりずっと西家ではいられないよ?」

高木さん「そうなんだ。でも親で連荘?すればずっと西家なんじゃないの?」

すみれ「そもそも親はその局の東家の事言うからね。つまり東家じゃないと連荘できないよ。とりあえず東場と南場の半荘戦を繰返していくよ?」

高木さん「そっか……西場ってないの?」

すみれ(やけに西にこだわるな…)

すみれ「えーと。大会のルールだと半荘戦2回だから南場までなんだ。」

高木さん「そっか、それは残念」

すみれ(西場がないと残念?どういうこと?そもそもルールも昨日まで知らなかったっていう話だったのに)

全自動卓(部長の従姉のプロからの寄付らしい)のサイコロを2回回して出た目に応じて、最初の家を決める。
高木さんは北家になった。

高木さん「なんだ北かぁ」
ため息を着く

すみれ(なんだ北か?どういう…)

高木さん「西家にはいつなれるの?」

すみれ「北なら、親以外が和了れば次、高木ちゃんの西家だよ」

高木さん「そっか、じゃあ頑張らないとね。」

対局が始まる
団体戦の先鋒を想定して10万点持ちの半荘2回
2回目は点数引き継ぎになる。
なんでも全国個人戦は出れないので(部長が香川5位、鷹川さんが香川14位だったため、上位3人に入れなかった)
もう個人戦のルールでやっても仕方がないとの事

ドラ③
高木さん配牌

23469 五八九④⑧ 發北西
ツモ2

すみれ(これはまず字牌処理からね。…自風でも三元牌でもない西切りかしらね)

ところが高木さんが切ったのは

3

すみれ「ええっ…それ一番切っちゃだ…」

すみれ(いけない。部長が言ってたっけ)

~去年の一年生の入学前~

六車「ええか、すみれ。新入生が打つ時には基本の打ち方やルールはもちろん教えなあかんけど、少なくとも最初の1週間は絶対、こう打っちゃダメとかこう打つべきとか打ち方を指図したらダメやで」

すみれ「なんで?」

六車「世の中には特別な力を持った打ち手がおるんや。牌に愛された子とか魔物とか言われる連中やな。そういう連中は一般的な打ち方やない。
もし一般的な打ち方を強いたらどうなる?その子の力を全部潰す事になりかねんで。だから少なくとも最初の1週間、できたらひと月は見に回るんや」

~~
すみれ(まさか高木ちゃんが、特別な力を持った打ち手?この部には今までいなかった……)

しかし
そこからも不可解な打ち方が続く

すみれ(2連続で西引き!?)

すみれ(せっかく③④と揃ったのに③切り!?しかもドラよ?)

部員A「ポン」
③③③

すみれ(ほら、ドラ鳴かせちゃった。喰いタンでも満貫確定…しかも親)

しかし不可解なのは打ち方だけでは無かった

……しばらくして

すみれ(何この並べ方……というか引いてくる牌も明らかにおかしいわ。西と萬子筒子索子は問わないけど2と4ばっか。本当にこれが部長の言ってた…)

24242 ④6④五六 西西西 ツモ西

高木さん「すみれちゃん。これ捨てたくないんだけど、4つ揃っちゃったらどうなるの?」

すみれ「そういう時はカンしたらいいよ。暗槓っていって暗刻扱いにもなるから」

高木さん「あとこのふたつの牌邪魔だから飛ばしたいんだけど、切ればいいの?」

すみれ「邪魔だから飛ばす?ってのがよく分からないけど…」

相手に聞こえないように鷹川さんに高木さんが耳打ちする

高木さん「なんだっけ、相手の捨牌からとってバシッとするやつ。そうしたら手牌が綺麗に、にとし、になっていいかなって」

すみれ「ポンとチーね。この場合チーだから左隣からしかできないわよ」

高木さん「じゃあカン」

24242 ④6④五 六/ 西■■西 ツモ8

カンドラ 中
捨て8

そして上家から七が出ると

高木さん「チー」
捨て6

24242④④/五六七 西■■西

すみれ(明らかに変だよこれ。に&しと西ばっか集中的に来るし、言動からやけに、に&しを気にしてるし、さんは即切りだし)

そして

4引き

242424④④ /五六七 西■■西

高木さん「えっと。ツモだよね。これ。なんて役だっけ?」

すみれ「三暗刻のみだね。70符2翻で1200/2300」

高木さん「点数計算が難しすぎる。全然わかんないや」

すみれ(12巡目。並べ方で分かりにくいけど三暗刻。70符2翻とはまた珍しい和了り…いやでも1回じゃまだ分からないわね。)

高木さん「すみれちゃん。次、私が西家だよね。」

すみれ「そうだけど」

高木さん「西片。私が西家だって。西片の家って意味かな?頑張れそうな気がするや」

西片「そ、そういう意味じゃない気がするけど!?///」

すみれ(西片…まさか、西片君が好きだから西とかにしにこだわってるの?高木ちゃんは)

東二局
高木さん西家

ドラ西
高木さん配牌

②④②④③⑦⑨二九中西西西 ツモ④
捨て③

すみれ(な、なにこの配牌…しかも西がドラって。混一色狙えるし…まさか西家だから?てかまた③捨てから!?)

②④②④④⑦⑨二九中 西西西 ツモ中

すみれ(早くも中が重なった。これはどう打つ?)

捨て九

すみれ(これはセオリーどおりなのね。)

②④②④④⑦⑨二中中 西西西 ツモ②

すみれ(また有効牌引いた。二捨てで混一色三暗刻ドラ3聴牌、リーチかければ三倍満まで見える手だけど…二絡み。聴牌取るのかしら)

高木さんがまた小声で
高木さん「すみれちゃん。この二は「にし」になってない単独の「に」って事なんだよね?」

すみれ「えっと…その考え方がよく分からないけど、筒子じゃない上に「し」より1個数が多いから、そうなるのかな」

高木さん「あとすみれちゃん。リーチ中ってカンってできるの?」

すみれ「暗槓、つまり自分で引いてくるならできるよ」

高木さん「それならリーチしても大丈夫かな。西が来るのは暗槓したらいいし、これ以上「に」と「し」のセットになることないからせっかく出来た「にし」を崩すことは無いって事だよね?」

すみれ「…よくわからないけど二切りなら既にある222444以外なら単独で「に」と「し」どちらかしか手牌にない状態のわけだからそうなるね。……二残しとけば二四になる確率はあるけど」

高木さん「……それは魅力的だけど、この局、それ引く前に和了れるよ。だって、私がいるの西家、西片の家だもん。」

高木さん「リーチ!」
捨て二

すみれ(「に」…もしかしたら「し」も単独状態なら捨てられるってこと?…というか西家なら引く前に和了れる。って!?)

ツモ西
高木さん「カン!」

カンドラ發

すみれ(また西をカン!?これで和了ればドラ4確定…)

そして嶺上牌から引いたのは

②④②④②④⑦⑨中中 西■■西 ツモ⑧

高木さん「ツモ、えーと三暗刻のドラ4の…あと」

すみれ「リーチ面前混一色三暗刻自風嶺上開花ドラ4で……えっ。数え役満だよ。って、ええええ」

高木さん「そんなにすごいんだこれ」

すみれ「凄いなんてもんじゃないよこれ!」

すみれ(おそらくもう間違いない。牌の集まり方に偏りがありすぎるし、西家では西がドラになるし、配牌から有効牌引き続けて4順で役満て、これは...部長の言ってたマモノ、牌に愛された子って奴だ……牌というか「にし」を愛し愛された子って感じだけど)

そして…結果は

高木さん 253800
部員A 33400
部員B 57600
部員C 55200

他の部員は放心状態である。

すみれ(なにこれ…今日ルール知ったばかりの初心者よね。半荘2回で15万点以上も稼いだっていうの?
……とにかく西家の異常な強さと、あと、二2②、四4④、そして西、と広く特定の牌が集まってくるせいでめちゃくちゃ速いし、非常に暗刻になりやすく打点も高い。
低い手で流すくらいしか他の部員は和了れてない。これは…間違いなくうちの切り札になるわ…)

高木さん「西片。勝っちゃった。初めてなのに」

西片「すごいよ高木さん!しかもダントツ1位なんて!」

高木さん「西片が見てくれてたおかげだよ~あとこれ、西片の牌のおかげ」

21世紀、世界の麻雀競技人口は数億人を超え
プロの麻雀プレイヤーは人々の注目を集めていた。
高校でも、大規模な全国大会が毎年開催され、
そこでは、プロに直結する成績を残すべく、
高校生麻雀プレイヤーたちが覇を競っていた。

そして、ここ小豆島でも
後に西の愛の女神と呼ばれる
流星の如く全国大会に一瞬だけ現れた
一人の天才少女のお話

第155話 カン

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