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夏に備えておなかを整える 〜いつの世も微生物のお陰様〜

「発酵」という言葉を聞くと、連想するのは土と肚。

陰陽五行における土は、生育の促進と死滅の促進の、両方の働きを持つ。

何かを分解し、何かを生み出す。

それが土の働き。

土がうながす死滅と生育の連鎖が、生態系の循環、命のめぐりをうながしている。

土は、身体でいえば肚。

肚は、はらわた。

赤血球を生み出す小腸。

丹色の血液を生み出す田、丹田。

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糀という言葉の語源は、奈良時代の風土記に記される「カビタチ」。

「カビタチ」→「カムタチ」→「カムチ」→「カウチ」→「カウジ」→「コウジ」と転じていった。

カムタチのカムは「神」であり「噛む」でもある。

噛むことによって、消化=死滅と生育が促進される。

噛むことによって、唾液中に分泌されるアミラーゼを始めとする消化酵素が、食べた物と混ぜ合わされ、化学反応が促進される。

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今から三千年ほど前、中国大陸の「周」の時代、「醤院」と呼ばれる発酵を司る国家機関があり、百を超える発酵調味料のレシピが作られていた。

それぞれの発酵食品を作る国家公務員が「醢人(かいにん)」「醯人(けいにん)」という名で存在していた。

今で言えば「発酵省」があり、その中に「糀庁」「酵母庁」があり、その中に「味噌部」「醤油部」があり、その中に「豆味噌課」や「濃口醤油課」があるということだろうか。

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原爆が投下された広島で立ち上がった「ジュノーの会」は1986年のチェルノブイリ原発事故後、20年以上に渡って梅干しや味噌を送り続けている。

発酵食の中に宿る乳酸菌や糀黴や酵母、酵素は体内において腸内環境を整え、腸壁細胞を修復し、造血力を高め、血液の酸化還元を助ける。

地球に強力な放射線、宇宙線が飛び交っていた時代から生きてきた乳酸菌や光合成細菌たちは、地球生命界における大長老。

菌は、私たちの肚と、地球の土と、銀河のめぐりとを繋ぎとめている。

ハラがキマるとは、肚が土とつながって、銀河の記憶を思い出すということと同義だといわれる。

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商店街の一角に小さな作業所があり、定期的に味噌が仕込まれている。

時にはじいさんばあさんが、時には子どもたちが、集まっては味噌を仕込んでいる。

大豆を茹でながらおしゃべりの花が咲き、持ち寄りのご飯による昼食は、老若男女が集う地域懇親会であり「子ども食堂」の様相。

作業の合間に手がすいた者たちが作った惣菜は家々に持ち帰られる。

肚をすえた手仕事によって育まれる、肚を割った人間関係。

肚の座った、肚でつながるコミュニティ。

命を養うメディスンを作る力、命を支え合う養生力。

星々のめぐりと自然界のめぐみの中で、共同創造によって生み出され、分かち合われていく贈り物。

命のめぐりの中に生きるものたちによる、祝いと創造による発酵と腐敗の世界は続いていく。

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