若い人に知ってほしい、村下孝蔵さんの曲 n 選
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今から遡って21年前。1999年。僅か40代の若さでこの世を去ったアーティストがいます。
名前は村下孝蔵(むらした こうぞう)
風体は中小企業の部長さんみたいな感じ。
しかし、彼のギターテクニックは超絶技巧であり、
彼の歌声は澄み切った青空のようであり、
そして、彼の紡ぐ歌詞もメロディも優しさと、そして切なさを含んだ、美しいものでした。
しかし、令和の、いや、平成すらも若者は彼の楽曲で知っているのは
「初恋」「踊り子」「陽だまり」の3曲のみ。
後者なんか「アニソン」という枕詞がついて覚えられる始末。
そこで、今回はこの有名な3曲以外でわたしが現代の若者におすすめする何曲かを紹介していきたいと思います。
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1、夢の跡
まずもって皆様に知っていただきたいのは村下孝蔵さんの曲が失恋ソングや悲恋の物語が圧倒的に多いということです。
そして、この曲も例に漏れず、悲恋の失恋ソングでございます。
だがしかし、この曲の特徴はある街の情景がこれでもかと描かれたところであります。
四国にある、松山市の情景が歌詞には描かれております。
この曲の背景は村下さんの学生時代の経験だそうです。
歌詞を読み解くと、夢を追いかけて一年ほど放置状態にした遠距離恋愛の彼女にさよならもなき別離を突きつけられた後悔が描かれています。
あなたも夢や仕事に集中した結果、恋人や奥さんや友達をおろそかにして、取り返しのつかない後悔をしたことはありませんでしょうか?
ないというなら、そういうことを未然に防ぐためにもこの曲を聴きなさい。
あるというなら、ぜひ、その時の事を思い出すためにこの曲を聴いてください。
そして、自分の中にある大切なものはなにかを見つめなおしてみてください。
また、歌詞に描かれた美しい情景を求めて旅に出るのもおすすめします。
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2、かざぐるま 花れん
次に紹介する2曲は、やはり悲恋の物語です。「かざぐるま」と「花れん」です。
ただし、今度は実際の村下さんの体験ではなく、フィクションの物語で、ヒロインの少女の視点で歌詞は描かれて歌われます。
なんか禁断の恋をしてしまった少女が、禁断の恋の相手が遠距離化したのを機に、想いをこじらせて倒れてしまうような、そんな物語が垣間見えます。
その禁断の恋の内容は「聴いた人たちの想像にお任せする」ってやつですが、
わたしの考察を申し述べるならば、少女の禁断の恋の相手とは「兄」あるいは「従兄」ではないでしょうか。
遠距離化した理由は「兄が大学進学を機に都会に移り住んだ」ってところだろうと思われます。
少女は風や鳥になって想い人の傍に居たいとか思うようになります。
「風や鳥」は深読みすると死者の魂のメタファーでもありますから、時代の早すぎたヤンデレのようなところも感じられます。
なぜ、「就職」ではなく「大学進学」かというと別項の「夢の跡」「春雨」に村下さんの大学生時代の原体験があり、その影響が知らず知らずのうちに及んでいるという考えです。
あなたもまずはこの2曲を聴いて考察に想いを寄せてみてください。
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3、春雨
春雨とは駆逐艦の名前です。
冗談です。
しかし、村下さんは船がお好きだというところもありますので強ち出鱈目でもないかもしれません。
とにかく、この曲での春雨は春の雨。冬が終わったあたりの冷たい雨ということです。
こちらも悲恋の物語です。
遠距離恋愛でなかなか彼氏に逢えない状況の女性が別れを決断する物語です。
いや、既に彼氏に捨てられたという感じでもあります。
問題は遠距離先に別の女がいて、その女に彼氏がなびいたのではなく、
遠距離先の学門ないし仕事内容に彼氏が魅了されて集中し、恋人のことをないがしろにしてしまったということです。
気づいた方もいるかもしれません。この曲の歌詞は「夢の跡」のヒロイン側の視点の話に見えます。
つまり、大学進学を機に遠距離恋愛になった彼氏が大学での研究に夢中になり、恋人をおろそかにして、なかなか連絡を寄こさなくなり、逢瀬に関してはそのブランクは1年間すら超越するようになり、待ちぼうけを食らった少女もみるみるうちに時間を失っていく。
そして彼女はさよならもなき別れを決断する。
そんなところでしょうか。
違うかもしれません。
まずは聴いてみてください。
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4、ロマンスカー
ロマンスカーというのは小田急ロマンスカーの事です。
これは冗談ではないです。
これも村下さんの実体験を背景に描かれた作品です。
村下さんは社会人になった後、新しい恋人が出来るのですが、その恋人が不治の病かなんかで徐々に体力を失って亡くなってしまうという哀しい経験をすることになります。
その病室の窓から見えていたのが小田急ロマンスカーの走る景色だったそうです。
村下さんと恋人は果たせぬ約束をします。
「この病が治って元気になったら、小田急ロマンスカー乗って山登りしよう」と。
そして恋人は死に、村下さんはその恋人を永遠のものとするために、歌曲を創ります。
その歌を歌うたび、奏でるたび、そしてラジオで流れるたびに、その恋人は生き返り、村下さんを訪れるわけです。
そして、残念ながら、その言霊的な呪術は村下さん自身にも及ぶことになります。
そう、1999年に彼は若くして生涯をとじます。そして、彼の残した音声が何らかの形で再生するたびに彼は蘇り、聴くものに語りかけるわけです。
恋人と同じシチュエーションに自らが落とし込まれたわけです。
彼は本当に幸せだったのでしょうか。
案外、そんな呪縛にとらわれて恋人さん側は迷惑だと思ってたかもしれませんし、そういう自虐を嗤った楽曲もあったりします。
とにかく美しい楽曲なので、まずは聴いてみてください。
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5、女優
村下さんもたまにはやさぐれてダークサイドな曲を創ります。
それがこの「女優」という曲です。
恋に破れた純粋無垢な少女が口紅を塗り、タバコを吸い、今でいうところのキャバクラ嬢のような職業に身を堕とし、男たちを騙しだまされ、汚される。
そんな物語で、最後にその少女の彼氏だった男に村下さんは「あんたのせいでこの少女は不幸になったのだ」と断罪します。
そんな歌曲です。
おわり。
しかし、なんか社会風刺にしても村下さんはなんか思いやりというか優しさがあるような気がします。
とりあえず聴いてみてください。
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6、りんごでもいっしょに
「殆どが悲恋の物語」と言いましたが、こちらはハッピーエンドに終わる恋の物語です。
しかしなんか悲しみが大前提にあるような始まり方です。
遠距離恋愛による悲恋にせよ、不治の病による夭折にせよ、男は大きな失恋をしてどちゃくそ落ち込みます。
そこに、友人か幼なじみ的な立ち位置の、容姿はそんなにパッとしないような女性が手を差し伸べます。
「りんごでもむいてあげる」
ふたりは友人関係の延長線上にあるような交流で仲を深めて、いよいよ結婚しそうなところです。
そして、女性が男性にプロポーズをします。
そんな物語です。
当時、女性が男性にプロポーズするシチュエーションは「ありえないことだ」という時代だったことを頭の片隅に入れてください。
アルバイトの賃金も男性と女性との間には差異があった時代です。
まあ、いいや。
とにかくきけ。
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7、結月ゆかりさんのオリジナル曲
村下さんを尊敬し、現代を生きるクリエイターの中に
ボカロPの方がいて、結月ゆかりさんに村下さんの曲を歌わせる動画を造る方がいるのですが、
かれは村下さんを意識したオリジナル楽曲を二曲ほど造られています。
「黒髪の乙女」と「七夕恋歌」です。
YouTubeにあるのでぜひ検索してみてください。
結び。
彼の死後から約20年経っているので、そのCDの購入はなかなか困難なところです。
死後にベスト盤と称したものはいくつか出ていますが、大抵は「初恋と踊り子と陽だまりだけいれときゃいいだろうコノヤロー」みたいな雑な構成になってますし。
結婚もできず子孫もいない彼にその円盤を買っても何の貢献にもなりません。
そこで、Amazonミュージックという手を紹介します。
月額いくらでいろんな音楽聴き放題のサービスで、今回紹介したマイナー曲もあります。
大抵はアレクサのスマートスピーカーを購入した時の特典として数か月分の無料キャンペーンをやっているので、その機会にやってみると良いでしょう。
わたしの場合は2000円のスマートスピーカーの特典として6か月無料でしたが、件のスマートスピーカーが届いたのが注文の1か月後だったので実質5か月無料でした。
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