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生まれ故郷の衰退。

小中学校時代の友人が事故で亡くなった。42歳だった。

告別式に参列する為17年ぶりに生まれ故郷へと訪れた。故郷を出たのは20年前の就職の時。以後、年末年始に実家に帰っていたが、祖母の病気をキッカケに実家がまるごと大学病院のある都市部に引っ越した為、以来足を踏み入れる事すら無かった。

何しろ私の生まれ故郷は辺鄙な場所にある。新幹線の駅から3つも電車を乗り継ぐ必要がある上に、その電車の本数が大幅に減らされてしまった。だから、余程の用がない限り足を運ぶ気にもならなかったのだ。

久しぶりの生まれ故郷は駅前に人影すら見当たらない寂寞とした街に変貌していた。シャッター街どころか、既に更地になり始めており、もう衰退しきった、終わった商店街になっていた。そんな商店街の、かつての目抜き通りを行くと、小さな交差点の角に、杖を片手に老犬の散歩をしているお爺ちゃんの姿。良く見ると小中学校時代のサッカーチームの監督だった。

私は監督に近づき「私です。覚えてますか」と声を掛けたが、監督は首を傾げるだけだった。サッカーチーム時代の事、監督に怒られた事、大会で勝利した帰りにケーキ食べ放題に連れてってくれた事などなど、頭に浮かぶ限りの思い出を挙げてみた。ポツポツと監督時代の話を思い出していたようだが、私の事も、ケーキ食べ放題のレストランの事も思い出せなかった。

何だか悲しかった。というのも監督と話していた場所の真ん前に、かつて小中学生時代に何度も連れていってもらったケーキ食べ放題のレストランがあったからだ。今は柵に囲われた資材置き場に変わってしまっており、並びの建物も変わってしまった為、その陰すら残ってない。

告別式も寂しいもんだった。昔は近所中が準備に式に参加して、生まれ故郷特有の風習だと思うが、会場付近の道という道が小さな行灯を持った人で、祭りの日くらいに明るくなったものだ。だが、集会場の周辺は街灯の灯りと、入口付近の灯りのみで、周囲はひっそりと静まりかえっており、暗くなっても部屋の灯りが確認出来ない家ばかりになっていた。

告別式では久しぶりに同級生と再会した。皆、都市部に出ていってしまっていた。唯一町に留まっていたA君も、来年に親が介護施設に移るタイミングで都市部へ引っ越すそう。実家の買い手がつかなくて困っている、もっと早く売りに出すべきだった、と後悔していた。東京から来た私は、告別式後、A君宅に泊めてもらう事になった。

A君宅に向かう夜道。A君は、ポツポツと立つ街灯に微かに浮かぶ建物や元建物だった場所を指しながら、あそこは何年前に何があって潰れた、あそこは空き家になってから何年後に火事で焼失した、ここは一旦何何の店になったがスグに潰れて廃墟になった、といった町の衰退史を説明し続けていた。

私が子供の頃に比べて真っ暗になった町。でも、星が綺麗だった。昔は煩いと感じていた虫の声も、今はどこか懐かしい。人の作った物は朽ちていく一方だが、生まれ故郷にしてみれば、ただ自然に戻るだけなのかもしれない。

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【題】衰退の先
この物語はフィクションです。


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