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タイ料理には暑いからこそトウガラシ

 先日、櫻坂46(AKB48などの系列アイドルグループ)の番組を観ていたら、福岡の子が塩くじらが好きと言っていた。千葉県の南房総の食べものにくじらのたれがあるが、同じなのだろうか。また、先日、日本にいる母が鮮魚センターにくじらの刺身があったと言っていた。タイにいるとくじらはまず食べる機会がないのでピンと来ない。

 特に欧米人は自分たちもやっているくせに日本の捕鯨をとやかく言う。野蛮と言うが、その自分たちの物差しだけで物事を判断する行為も似たようなものだ。食は文化である。自分たちの文化と違うからと理解する努力を最初から放棄して頭から否定するのはよくない。たとえばベトナムの犬食も、ボクには受け入れがたい。だからといってギャーギャー批判する気もない。してはいけないからだ。

 食はその国や地域をよく表す。その成り立ちや理由もまた歴史や文化を背負っていて興味深い。タイで言えばサムンプライ(香草)を料理によく使う。そして、プリック、すなわちトウガラシだ。暑い国だからこそ、トウガラシが利用されるのに意味がある。

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 まず誤解のないように言っておきたいのは、タイ料理=辛い料理というわけではない。和食=醤油の味ではないのと同じだ。実際、東南アジア各国は暑い国ではあるが、辛い料理がない地域もある。タイ料理はたまたま他国で有名になった料理が辛かっただけの話だ。和食にだって辛いものはあるし、タイでもすべてが辛いわけではない。

 ただ、辛い料理が多いのもまた事実ではある。それは理に適っているからそうなったわけで、タイ人がみな辛い料理が好きだからという単純な理由ではない。タイ人にも辛いものが食べられない人だっている。

 辛さというのはまだ解明されていない部分もあるようだが、そもそも味覚で感じるものではないことはわかっているという。トウガラシなどの辛さは痛覚で感じ取っているので、味ではないのだ。

 痛みは訓練で慣れさせることができる。格闘家と一般人ではたぶん痛みの感じ方が違うと思うが、それと同じようなもので。タイ人も子どものころから辛いものが食べられるわけではない。徐々に辛いものに慣れさせていき、食べられるようになる。だから、富裕層などの子どもは甘やかされて育ってきたりして、大人になって辛いものが一切食べられない人もいる。

 そんなトウガラシだが、タイ料理でよく使われる理由は、気温に関係しているのもひとつの事情になる。

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 日本なら夏バテの対策にはスタミナのあるものを食べる人も多いのではないか。馬刺しやレバ刺しなんかもいい。ただ、暑さで胃腸も弱っていると、脂っこいものは受けつけないこともある。

 そんなときにちょうどいいのがトウガラシというわけだ。20年以上前の話だが、ある居酒屋チェーンのメニュー内の各商品名の横には身体を温める/冷やす料理の目印がついていた。健康ブームだったのかなんなのか。そして、トウガラシの入った料理は身体を冷やす料理に分類されていた。一見逆のような気がするが、トウガラシは身体を冷やす効果があるのだそうだ。

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 まず、トウガラシの辛さというのはカプサイシンという成分から来ている。この成分は熱に強いので、料理に入れても水に混ぜても辛さが弱まらない。

 このカプサイシンは先述の通り、舌や体内の痛覚を刺激する。すると、この痛みは自律神経に作用するという。自律神経は交感神経と副交感神経があり、身体を活発化させる交感神経に特に作用するのだとか。すると、一時的に身体が熱くなるのだが、発汗によってすぐに身体の表面の体温が下がる。だから、トウガラシは身体を冷やす食材ということになるのだ。

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 日本で辛い食材というとワサビが代表的だ。ただ、ご存知の通り、ワサビとトウガラシは辛さの質が違う。前述のようにトウガラシは熱にも強いが、ワサビの辛みは水溶性で、口に入れると瞬間的には辛いが、胃まで熱くなるほどではない。

 ボクの中ではワサビもトウガラシも同じで、殺菌作用を期待している。タイ料理が辛くなかったら、たぶん食中毒が激増するだろう。そう思っている。タイ料理の生肉料理にもたっぷりトウガラシが使われている。むしろその方が安全性が高まるような気がしてありがたい。

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 トウガラシは熱に強く、水にも負けない。そのため、胃などにもカプサイシンの効果が伝わる。だからこそ、身体全体が熱くなり、すぐさま発汗作用で体温が下がる。そんな効果があるため、年中暑いタイではトウガラシが使われる。

 ただ、空腹時や手遅れレベルで夏バテが進行しているときは気をつけた方がいい。たとえば、上の米粉麺料理のひとつであるクイッティアオ・ルアなんかはスープがノーマル時点でちょっと辛い。乾燥トウガラシが振られていることが多いのだが、それが胃を熱くする。その熱さが焼けるように痛くなることもある。そして、胃液でも分解されなかった辛み成分は腸に到達し・・・・・・。

 トウガラシは暑いタイでは必須の食材だ。しかし、タイ人でさえ、長年の積み重ねで辛いものが食べられるようになったわけなので、辛いものが苦手な人は無理をしないことも大切だ。辛みは痛覚で感じるということは、訓練なしでムエタイに挑戦するのとある意味では同じことなのだから。

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