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ジョークは朝より夜に合う

 ジョークはボクにとっては朝のものではなく、どちらかというと夜、あるいは深夜に向いたものだと思う

 この場合のジョークはタイ語だ。冗談のことではなく、粥のことである。

 タイ料理には粥、あるいは雑炊にカオ・トムがある。タイ料理の名称は多くがわかりやすく、このケースでは煮た米という意味になる。そのカオ・トムの一種がジョークになる。米が砕けるまで煮込んで作る店もあるし、タイ米を粉末に砕いて似ている店もある。いずれにしても、ドロドロに米が砕けているのが特徴である。

 このジョークはタイでは朝食、あるいは軽い夕食として食べられるけれど、どうもボクは朝にジョークが合わない気がしてならない。

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 カオ・トムは具材をいろいろと入れて食べるものもあるが、本当にただ煮ただけの白米のバージョンもある。これらはガパオや空心菜炒めのほか、パット・ナムプリックなどのわりと濃い味のおかずと一緒に食べる。バンコクの外国人向けの店ではあまり見ないが、わりと下町などの住宅街ではこういった店がある。

 カオ・トム自体に味がないので、濃い味のおかずで食べるとちょうどいい。暑さで胃腸が疲れていても、これならさらっと食べられるのでちょうどいい。

 こういうカオ・トム食堂は普通に白米もあるし、ジョークを置いていることもある。カオ・トムだと湯が多めで、ジョークは米が水分を吸っていてドロッとした感じなので、結局は好みの問題かと思う。

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 バンコクの中心においてもジョーク食堂は結構ある。その場合、というか一般的なジョークというと、この画像のようなスタイルが多い気がする。砕けた米に、日本でいうホルモン、それから刻んだショウガとネギが載っている。トッピングで半熟の卵を落としてもらう。

 ジョークはもちろんこのままでは味が薄い。なにせ米が砕けるまで茹でているだけなのだから。そのため、一般的には米粉麺のクイッティアオと同じ調味料セットを用いる。ナンプラー、粉末の乾燥トウガラシ、砂糖、酢を入れて、自分好みに味を調える。

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 店によってはシーイウ・カーウ(白醤油)も置いている。シーイウ・カーウはコクのない醤油みたいなもので、中華料理などでも使われる調味料だ。これが置いてあるのは、やはりジョークが中国由来だからなのでしょう。

 こういった粥は日本にもあるし、東南アジア各地でも見かける。主食が米の地域が多いので自然とそうなったのかと思うが、少なくともタイは中華料理の影響を受けていると見られる。

 というのも、ジョークという呼び方は中国語の「粥」の発音から来ている。粥はたぶん中国語の普通語ではジョウみたいな発音のはず。広東語ではこれがジョッみたいな。おそらくジョックと言っていると思う。ここから来ていると見られる。タイ料理に多大な影響を与えている潮州料理も広東省なので、やっぱりその辺りから来たのでしょう。

 ただ、マレーシアなどでは先述の味のないカオ・トムで濃いおかずを食べる形式を「潮州粥」と呼ぶ。ジョークの原型は潮州でない可能性が高い。もうひとつ、「広東粥」というのもあるが、米を炊く、あるいは茹でる際にごま油などを混ぜるのだとか? そうなるとそれも原型ではない気もする。しかし、やっぱりマレーシアで広東粥というと土鍋で作った米が砕けている粥を指すこともあるようなので、どちらかというとこっちが近いのかもしれない。

 ちなみに、中華系タイ人の中には(あるいは本国もそうなのか?)、春節(中国旧正月)にはジョークは食べてはいけないという習慣があるのだとか。ジョークは貧乏飯なので、春節にこれを食べると富を得ることが妨げられるから、だそうで。まあ、そもそも春節にジョークを食べたいなんて人がそういるとも思えないけれど、ひどい話である。

 とにかく、ボク個人はジョークがどうしても朝だけ合わない。水分が少ないので、ちょっと重く感じるのかもしれない。それならカオ・トムの方がいい。夕食でもちょっと物足りないと思ってしまう。ジョークが一番いいのは、飲みすぎたときの夜食だ。日本ならラーメンかもしれないが、飲んだあと、帰る前にジョークを食べるのが一番しっくりくる。

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