ウィッグでもスポーツを諦めなくて良い。日体大5区藤本選手の姿をみて

2020年の箱根駅伝

2020年の箱根駅伝は、驚きの多い回であった。

タイムがとんでもないことになっていた。

珍しく筑波大がいた(第1回優勝校であるが、今どき国立大学がここにいることは珍しい)。

もう一つ驚いたことは、病を持つ選手達が走っていたことだ。
特に、日体大の藤本選手は脱毛症をカミングアウトされていると知り、同じ病をもつ自分としても注目せざるを得なかった。

脱毛症と運動

脱毛症そのものは運動能力を阻害しない。
でも、運動をしたいという気持ちを阻害することがある。

重症な脱毛症の場合、頭髪ならばウィッグであったり、眉がなければ化粧であったりと、社会で奇異にみられないような工夫が求められる。

これらは、激しい運動をすることに適してはいない。

ウィッグはめちゃくちゃ高いオーダーメイドものならば固定もしやすいが、日本では既製品ですら購入に補助がなく馬鹿みたいに高い。しかも日々使っていれば3年ほどで壊れる。
全身脱毛になるほどだと、残った頭髪に留めるためのピンも使えず、固定がより大変かもしれないね。

野球の森本稀哲氏は隠さなかったタイプになるけれど、男性であってもあそこまで割り切れる方は稀有だろう。(運動の質からして割り切りも必須だったのだろう。いじめで前のスポーツをやめたというエピソードがどこかに書いてあったような。)

藤本選手は、山を快走する姿のみならず、ハチマキを使う固定法、そして運動を諦めなくていいというメッセージを発していた。
スポーツ選手としては相当なハンデなはずだ。それでも諦めなくていい、というメッセージは鮮烈だった。

よく、スポーツ選手で「同じ○○の方に勇気を与えられたら」という方はいる。
今回、初めてそちら側に立って、「あっ、確かに勇気を貰えますね…ありがとうございます」という思いになった。

私は目の病気の方はよくわからないけれど、きっと創価大の嶋津選手に勇気をもらった方も多くいるのだろう。

慢性病のQOL

脱毛症は、急性の小さな円形脱毛症で済まなかった場合、一生をズタズタにされることもある病と化す。
この病気に限らず、皮膚科の病気は見た目を破壊するので、人生を容易にハードモードにしてしまう。
でも、「ただちに命への影響はない」から軽んじられてしまう印象もある。

今後、そんな「ただちに影響はない」病を抱えて生きる人が多くなるだろう。「がんは再発してないけれど常に具合悪い」「薬を飲んでから発作は起きていないけど、月1回の通院を余儀なくされる」なんてのもあるかな。

急性の疾病を助けることに力を注いだ結果、不健康が何十年も続くだけになっているかもしれず、これって「思ってたんと違う」にもほどがあると思う。

「QOL」という単語がある。単語がある、といったのは、実は知らない人・知ってるけど実地としてわかってない人が多いのではと思うからだ。
今必要なのはこのQOLの意味をよく知らしめることではないだろうか。

なんなら、毎日残業や休日出勤でまともな人生を送れていない、だってQOLの問題として問えるよね。ここを問わないから「あいつら見た目健康そうなのにサボってずるい」になっている部分もあるのかもね。

病は簡単に「生活…否、「人生の質」を破壊する。
今人生の質に影響する疾病をもたない人も、是非そこに思いを馳せて欲しい。

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