WBS日記(10)
約1年半ぶりになろうかというWBS日記です。こういうのは勢いを失う前に無理なく続けられる習慣になっていないと難しいですね。
この1年半の間にはいろいろとありまして、半年修了延長し、TA(ティーチングアシスタント)をやったりしながら修士論文を書いていました。
論文やレポート執筆に関してもいろいろとあり、昨年よりキーボードを打つときにイップス様の症状が出るようになりました。具体的な症状としては頭の中で浮かんだことをキーボードで打とうとすると手が固まってしまいます。メモを取ったり、箇条書きなどの手先の作業レベルなら問題ないのですが、自身の思考をキーボードで言葉に打ち出そうとすると指が動かなくなってしまいます。
実は今も完治はしておらず、以前に比べては改善はされたものの、なかなかうまく打てていません。
「頭の中に浮かんだ考えをキーボードを打つことで言語化する」という作業のどこかにエラーが起きていることまでは分かるのですが、難しいものですね。
僕を知っている人は分かるかと思いますが、日ごろからおしゃべりすぎるほど発話は全く苦がなく、また、箇条書きの延長程度のSNSでの軽い文章ならば書けるのですが、深い思考をキーボードを通じて綴ることができなくなってしまいました。
「単にアカデミックな文章を書くのが苦手なだけでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、WBS以前にも同じく早稲田のスポーツ科学研究科で修士論文を書いていますし、かれこれ10年ほどスポーツ医科学専門誌に寄稿しているので、本来はフォーマルな文章を書くのも苦手ではありません。
いい年してこんなことを書くのは控えた方がいいかもしれませんが、たまたまテレビで見た「魔女の宅急便」の主人公キキが飛べなくなるシーンを見て胸が締め付けられた日もありました(この映画にはもともと思い入れありますが、日ごろはテレをほとんど見ないのです)。自分の強みだったはずの力が、突然奪われてしまう苦しさが重なりました。
では、書こうとすると動かなくなる手で修士論文はどのように書いたのか。それはOffice365のディクテーション機能でした。これには本当に救われました。最初はGoogleドキュメントのディクテーション機能を使ったのですが、自分の求める仕上がりとは少し差があったので、困っていたのですが、ふと早稲田大学の在学生はOffice365が無料で使えることに気づき、使ってみたらドンピシャでした。認識精度が本当に高く、ほぼ完全にディクテーションしてくれます。しかも、話す速度を落とさず、自分の話したいように話せば、スラスラっと文章が出来上がっていきます。自分なりの音声入力のコツは2つあります。
1)画面を見ないで話すこと。画面を見ると徐々に変換されていく様子にペースを合わせそうになって、ぎこちなくなります。画面を見ずに気にせず話していれば、PCのペースでディクテーションして変換されて、最終的に完成します。
2)後ろめたい気持ちを持たないこと。最初は「手を抜いているんじゃないか」「サボっているんじゃないか」と後ろめたさに似たわだかまりがありましたが、結局は手段をどうするかだけの話で、キーボードで打たないとダメ!なんてことはないと割り切りました。あくまで何を調べ、何を考えたのかが大切なのだと思います。
Office365という強い味方を得て、少しずつ書き進めて修士論文を完成させることができました。先述の通り、まだ症状は完治しておらず、今もキーボード入力はスムーズにできないのですが、幸い時間をかければこの記事くらいは打てるようまでは戻りました(この記事はキーボードで書いています)。
Office365はWBS修士論文だけではなく、自分の生産性を劇的に高めてくれました。キーボードを打つよりも、圧倒的にディクテーションの方が効率がいいです。
自分のイップス様症状の原因の一つに「頭の中を思考が駆け抜けるスピードとそれをキーボードで打つスピード」にギャップがあるのかと考えています。
例えるならば、思考が早口言葉の求めるスピードであるに対して、打鍵能力が吃音者のそれのような状態と言えば伝わりやすいでしょうか。そのひっかかり、ギャップが次第とストレスとして肥大化していって、指が思うように動かなくなってしまったようです。
心因性なのか、身体性なのか、そのミックスなのか、何とも言えませんが、もうしばらくこの症状と付き合っていくことになりそうです。
上記は自分の経験の振り返りでエビデンスなどはないのですが、正直なところです。
こういうことを書くと「大変でしたね」と気遣ってくださる方がいてとてもありがたい一方で、タブーや腫れ物のように気にしすぎる方もいます。確かに接し方に悩むかもしれませんが、気にせず接してもらえたらそれにこしたことはありません。僕自身は受け入れて、共に生きていくことを覚悟したので、落ち込んでもいないですし、隠すつもりもありません。そんな自分なんです、というだけです。
お、気づけば400字詰め原稿用紙4枚強書いていますね。これはとても励みになります。それほど遠くないうちにまた書いてみようと思います。
では、また!!
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