雨に濡れた石畳
雨に濡れた石畳
入り組む道に視野を隠される
銀箔を散りばめた様に輝く河
堀の下から**を転がした音がする
曇り空が薄らいでゆく
赤い夕陽の煌めきに紛れて
漆黒の家の壁の内に
多感の眼差しが見える
白塗りのビルはぽっと頬を赤らめた
人の背中は逃れていく(人々は逃れる様に足早に急ぐ)
胸を貫く
強い(眩い)光(光景)の轟音に背を向けて
街が沈む
人の瞳の中に
太陽の原光をただ一身に受けて
街が沈んでいく
私たちの瞳の中に
人は橙色の光の反射を見て
かつての良き思い出を懐かしむ
人の体内は必ずしも暗黒ではない
光に照らされれば
喉に差し込み
皮膚が受ければ
綺麗なピンク色をもって返す
そして身体が光を受け取れば
それは腹の中に忍び込み
輝きを響かせる
そこにこもった仄かな明かりを
誰彼も見ることはできない
しかし、もしも、そこに
忍び込むことができるのなら
そう、かつてのようにそこにいることができた頃へ
もう、戻ることができなくても
思いやることができるのなら、もう一度
人は橙色の光の反射を見て
かつての良き思い出を懐かしむ
母の体内にもたれ
息を潜め
手を胸元に
足を使って体を回しながら
浮かんでいた
一握りの存在だった頃
私たちは光を受けた母の腹から
明かりが溶け込んでくるのを見たに違いない
瞳を開かなくても分かる
瞼がまだ透明な程に薄かった頃のことだったから
私たちはどれくらい
仄かな光と戯れただろうか
そんなに遠い過去の
とうに忘れ去ってしまった一瞬の時間を懐かしむ
私たちはかつて
母の腹をすり抜けてやってきた
橙色の光を見つけ
共に遊んだのだろう
人は橙色の光の反射を見て
かつての良き思い出を懐かしむ