写真家Takaaki Sanoの第一歩:上海から高円寺Faithへ
Takaaki Sanoの写真家としてのキャリアは、2015年から2024年にかけて、多くの場所や人々との出会いを通じて形作られてきました。今回は、上海での初個展から始まり、日本国内での展示活動を振り返りつつ、その背後にあるエピソードや当時の葛藤を交えてご紹介します。
第二回 高円寺Faithでの初個展&ライブ
2015年12月、Sanoは上海で自身初となる個展を開催し、成功を収めました。この経験を経て、写真家としての道を本格的に歩む決意を固め、2016年3月に日本へ帰国します。しかし、帰国後は、写真家としての自分を誰も知らない環境での再出発となりました。
まずは、貪欲に学びを得ようと考え、以前から憧れていた写真家たちの活動を調べていた際、梅佳代さんを通じて写真家「いくしゅん」を紹介されます。いくしゅんの個展が開催されている高円寺のギャラリー「Faith」を訪れたのは、この時のことでした。
Faithは1階がアパレルショップ、地下がギャラリーという作りになっており、地下へ続く階段からすでに無数の写真が無造作に貼られていました。その大胆な展示手法や、作品から感じられる攻撃的で力強いエネルギーに圧倒されました。この経験は、自分の展示方法や表現手段について考えるきっかけとなりました。
高円寺Faithでの出会いが転機に
展示を観終わった後、店主の井上さんと話す機会を得たSanoは、上海での成功を経て日本で新たに写真活動を始めたいという思いを伝えました。そして、Faithで個展を開催させてもらえないかと相談しました。その時ふと頭をよぎったのが、ロンドン在住のシンガーソングライターGrimm Grimmのことです。
Grimm Grimmは、かつて自身のアルバムジャケットにSanoの写真を採用してくれたアーティストで、Sanoにとっては「自分の写真が初めて公の場で評価された」という大きな出来事でした。ちょうどその彼が日本に来る予定であることを思い出し、地下ギャラリーという空間を活かして「ライブと写真展のコラボレーションができるのではないか」と考えました。このアイデアを井上さんに提案すると、「それは面白い。ぜひやってみよう!」と快諾していただき、Grimm GrimmとのLive & Exhibitionの開催が決定しました。
学校との葛藤とその解決
イベント準備が進む中、思いがけない問題が発生しました。当時、非常勤講師として勤務していた学校が、Sanoのイベント開催に難色を示したのです。新任の校長は、Sanoが常勤講師だと誤解されることを危惧しており、そのためイベントの中止を求められました。
Sanoは、この制限に納得がいきませんでしたが、学校や同僚に迷惑をかけたくはありませんでした。最終的に、イベントで自分の名前を表に出さないことを条件に、校長と副校長の合意を得て、開催の許可を得ました。この交渉経験は、Sanoが写真家としてだけでなく、人間としての強さを培う重要な学びとなりました。
ライブと写真展の融合:高円寺Faithでの挑戦
2016年12月、高円寺Faithにて、Grimm Grimmとのコラボイベント「Live & Exhibition -When the Sun Goes down..」を開催しました。この展示では、上海で使用した写真パネルをそのまま活用しつつ、音楽と写真の世界観を見事に融合させました。当日は予想をはるかに上回る来場者が集まり、会場は立錐の余地もないほどの熱気に包まれました。
展示準備中、Grimm Grimmから「たーぼー(Sano)、写真上手だよ」と言われた言葉は、今でもSanoの胸に深く刻まれています。この言葉は「自分はいける」という自信を与えてくれる支えとなり、その後の活動を支える大切な記憶となりました。
また、イベント終了後、井上さんから「年末年始のギャラリーが空いているので、このまま展示を続けていい」とのお言葉をいただき、1月中旬まで展示を延長することができました。ライブチケットは完売し、Faithの売上にも貢献しましたが、当時のSanoはまだアマチュア意識が強く、自身の利益についてはほとんど考えていませんでした。それでも、多くの観客に喜びを与え、写真家としての第一歩を踏み出せたことは、大きな収穫でした。
次のステップへの序章
こうしてSanoは、高円寺Faithでの成功を糧に、日本国内での写真活動をさらに広げていくことになります。この経験を通じて得た学びや出会いは、今後のキャリアを形作る上で欠かせないものであり、写真家としてのアイデンティティを確立する大きなきっかけとなりました。
次回は、この展示をきっかけに広がった新たな出会いや、写真家としてさらに進化を遂げていく過程をお届けします。
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