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【神門レポート選挙編】これを読めば大体分かる、北海道知事選と札幌市長選
さぁ、4年に1度のお祭りの時期がやってきました!
その名も「統一地方選挙」。
日本全国の都道府県や市町村の首長・議員選挙が前後半に分かれて行われます。
ただ、最近のニュースはもっぱらWBCばかりで選挙への関心はほとんどないことと思います(世界一おめでとう!!!!」)。
さらに、選挙における争点などもTVニュースだとわかりにくい。。。
そこで、今回は北海道知事選・札幌市長選の候補者や争点を簡単にまとめてみました。さらに、そもそもなぜ統一地方選挙と言われるのか、選挙用語の解説などもあります。ぜひご覧下さい!
◯ 統一地方選挙ってそもそも何?
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統一地方選挙の始まりは、戦後すぐの1947年にまで遡ります。
太平洋戦争後、新しい政治制度・地方自治制度を日本政府とGHQが確立しようと奮闘する中で、1947年(昭和22年)5月の日本国憲法施行に先立つ形で同年4月に全国で一斉に首長・議会議員の選挙を実施されました。
これが現在まで続いているという形になります。75年間の中で、任期途中で首長辞任するなどが当然あるので、「統一」と謳ってはいますが、現在は全国の30%ほどの自治体で実施されています。
統一地方選挙のメリットは、一斉にの選挙を行うことによる選挙費用の抑制が主に挙げられます。この記事によると、定数465人の衆院選でさえ総額600億円ほどがかかっているとのことです。前後半合わせて立候補者3000人、980ほどの選挙が予定される統一地方選挙ではこれ以上の金額がかかることが予想されるので、かなりのメリットがあると思われます。
その他、詳細については以下をご覧下さい。
◯ 日程は?
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統一地方選挙は、前後半に分かれています。1週間ほどのハーフタイムもあるんですね。詳細は以下の通りです。
前半:知事、政令市長、道府県議・政令市議
後半:一般市長・市議、東京区長・東京区議、町村長・町村議+参院補選(大分選挙区)と衆院補選(千葉5区、和歌山1区、山口2区・4区)
北海道民にとっては、前半は北海道知事選挙と道議員選挙があります。ただ、札幌市民は札幌市長選挙と札幌市議選挙が合わさっているので、少しハードな感じです。
1週間お休みしてから、札幌市民以外は市長選挙・市議選挙と町村長・町村議選挙が待っています。
つまり、札幌市民は前半のみの参加で、札幌以外の道民は前後フル出場しなければなりません。前田大然くらいのスタミナが求められます。
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◯ 選挙用語を軽くチェック!
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選挙でよく聞く、この3つの単語。違いをちゃんと説明できる方はそう多くいらっしゃらないのではないでしょうか?
簡単にいうと、「公認」は政党本部が正式に認めるため、かなーり重ためな感じ。「推薦」は政党がもつ都道府県支店的なところから割と応援してくれる感じ。お金も人もある程度は出してくれる。「支持」は応援はするけど、まぁ頑張ってくれ、という感じ。
統一地方選挙では、わざわざ党本部からの公認よりも、各都道府県連からの推薦にとどまるケースが多いです。国政選挙では、候補者たちは「公認」をもらうために必死になります。これがないと無所属出馬や他党からの援助を待つしかなくなり、死活問題になるためです。
◯ 統一地方選挙の投票率と無投票選挙
木下斉さんがTwitterでこのような問題提起をなさっていました。
民主主義機能してます?!無投票選区ばかりの地方のリアル。
— 木下斉 / 「日本の構造問題」をズバリ斬る! (@shoutengai) March 12, 2023
今年は統一地方選挙ですが、H.31をみると全選挙区でちゃんと投票が行われたのは東京だけ。
全選挙区に占める無投票選挙区は香川県が「69.2%」岐阜県は「61.5%」なんて有様。実は半数近い無投票選挙区地域がザラ。
選挙、機能してます?! pic.twitter.com/Vu3Q8pvni8
地方選挙のリアルは、定数の過半数が無投票当選なんてザラなんです。北海道議選挙をみてみると45.7%が無投票当選です。最も高い香川県は70%近くであり、民主政治の根幹である選挙がほとんど機能していないのではないかと思わざるを得ない状況なのです。
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今年は、100議席を129人で争いますが、42/100は無投票当選する可能性があるという報道が出ました。こう見ても、自民党のシェアが高いことがわかります。
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無投票可能性のある選挙区は以下の通りです。渡島や日高、空知、オホーツクなど人口が少ない地域で、無投票選挙区が多いみたいです。
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また、投票率の推移を見ても、選挙を行うたびに下落する一方です。戦後は90%も投票率があったんですね、驚きです。
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無投票選挙区や、女性0選挙区などを瞬間的に検索できる、「選挙テック」という選挙に特化したサービスがあるのをご存知でしょうか。ぜひDLしてみてください。
◯ 北海道知事選の争点
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23日時点で、知事選には4人が立候補することになりました。ですが、有力は現職の鈴木直道さんと池田真紀さんの2名で間違いないと思います。鈴木さんは自民・公明の与党系から推薦されており、池田さんは立憲からの推薦、国民民主・共産党・社民党から支持を受けています。
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お2人の公約を簡単にまとめると上図のようになります。
【鈴木直道さんの公約】
現職の鈴木さんは、3月21日に公約をやっと発表しました(23日が公示日だというのに。。。!)。公約には、暮らしと経済、エネルギー、デジタル、食などの七つを掲げています。
注目すべきは、ゼロカーボン基金の創設、次世代半導体(ラピダス)関連産業の誘致、観光のアジア市場拡大、食料自給率に占める北海道の割合30%だと思います。
北海道は、「2050年にCO2(二酸化炭素)を実質ゼロにすることを目指す旨を首長自らが又は地方自治体として公表された地方自治体(環境省)」のゼロカーボンシティを2021年に宣言しており、実際にどう動いていくのか、という中身をそろそろ決めていくことが求められます。
また、産業振興に関しては、ラピダス誘致を発端とするデジタル産業の誘致、アフターコロナの観光産業振興、農業のさらなる発展など、網羅的にカバーされています。特に、食料自給率に占める北海道の割合30%に関しては、カロリーベースなのか産出額かでかなりの違いが出ます。北海道はカロリーベース食料自給率は210%近くで全国1位ですが、産出額では全国5位前後となっています。農業をより稼げる産業にするには、産出額ベースの目標を設定するべきです。
<暮らしと経済>
・感染症に対応するための柔軟かつ機動的な体制整備
・巨大地震に備え避難施設を整備する市町村に財政支援
<子ども応援社会>
・保育人材の育成や確保、道営住宅を活用した子育て支援
<エネルギー>
・ゼロカーボン北海道を推進するための基金創設
・洋上風力の導入促進
<デジタル>
・次世代半導体複合拠点の誘致とデータセンターパークの創出
・未来技術関連のワンストップ窓口の新設
<食>
・スマート農業の加速など、2030年度までに食料自給率に占める北海道の割合30%をめざす
・どさんこプラザの全国展開
<観光>
・トップセールスでアジア市場拡大、欧州市場を開拓
<応援団第2章>
・地域おこし協力隊の支援体制を構築
【池田真紀さんの公約】
対する池田さんは、「人・循環型経済・道民参画」を公約の柱に掲げています。「人」に関しては、人権の重視や子ども・子育て政策、医療・介護の拡充を掲げています。「循環型経済」では、地域分散型エネルギーシステムの構築を掲げています。「道民参画」では、「道民投票条例」の制定が掲げられています。
具体的な施策にまでかなり踏み込んでいる点がかなり評価の高いポイントだと思います。特に、ゼロカーボンに向けての施策である分散型エネルギーシステムの構築と地域交通の再構築に関しては、北海道が抱える課題をきちんと把握し、それに対してどのような対策を講じれば良いかを吟味したのだろうと感じます。
再生可能エネルギーを中心とした分散型エネルギーシステムができれば、中央集権的な現行のエネルギー供給システムから離れることができ、地域経済の自立度が増します。日本のエネルギー自給率はかなり低いことで知られていますが、地域から出て行ってしまうお金のほとんどはエネルギーです。この部分をカバーできるシステムを構築できれば、地域経済にとっては良いことしかありません。また、JR北海道に代表されるように、道内における地域交通は今後10-20年でリビルドされなければなりません。バスの運転手不足問題もある中で、地域交通の再構築をきちんと政策にまで落とし込んでいる点は、鈴木さんよりもちゃんと考えているなと感じます。
ぜひ、池田さんのHPで公約をしっかりとご覧ください。
<人にやさしく、あたたかい北海道>
・「北海道人権条例」(仮称)の制定
・同性パートナーシップ制度の導入
・「北海道子ども・子育てアクションプラン」(仮称)を策定
・「子どもオンブッド」の仕組みを整備
・二次医療・三次医療の提供体制を充実
・「北海道医療・介護バックアップセンター」(仮称)を創設して迅速な支援を実施
・災害対策の強化
<「地域のタカラを地域のチカラに」~循環型経済で持続可能な北海道>
・飼料・肥料・燃料などの価格高騰への支援策を強化
・道産木材のさらなる利活用促進
・一次産品のブランド化を強化
・6次産業化をさらに推進
・地域間連携・交通網整備などを一体的に進め、周遊型観光を推進
・再生可能エネルギーの産業化と利用促進
・「北海道エネルギービジョン」を策定
→地域分散型のエネルギーシステムとネットワークづくり、再生可能エネルギーの導入拡大と原子力発電に依存しない道筋
・「北海道交通確保条例」(仮称)を制定し、地域公共交通を再構築
<道民参画、地域が主役の北海道>
・「道民投票条例」(常設型)を制定
→重要な課題の決定には、道民の意思を直接反映
・総合振興局・振興局の機能を強化
個人的な意見を述べますが、鈴木さんの公約は池田さんの公約と比較すると、かなり薄いなだと感じます。鈴木さんは、ちゃんと北海道のことを勉強しているのかなと感じてしまうほどです。他の都道府県知事選での公約ですと言われても何ら不思議のない中身です。特に、JR北海道の廃線問題に代表されるように、北海道の地域交通はかなり危機的状況です。にも関わらず交通に関する公約はありません。
北海道の未来図を描いて、それを実行しようとしているのは果たしてどちらの候補者なのでしょうか。
◯ 札幌市長選の争点
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政令市である札幌市長選挙は、現職の秋元克広さん、元市民文化局長で市民政党さっぽろの高野肇さん、NPO法人理事の木幡秀男さんの3名が立候補しています。
札幌市長選に関してはほとんど秋元さんで決まりでしょう。なんせ、与党・野党相乗りなのです。立憲が推薦し、自民党・公明党・国民民主党が支持をするという、勝ち馬に乗るスタイルです。
さて、公約を比較してみましょう。
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争点は、「札幌冬季オリンピック招致の是非」に終始してしまうと考えています。この構図がかなりわかりやすく、秋元さんは推進派、高野さんと木幡さんは反対派です。あとは、秋元市長の実績を見て有権者の方々は投票するのではないでしょうか。
ただ、ファイターズの本拠地を北広島に取られたことに対して、責任を負うべきだと個人的に常々思っています。なぜなら、札幌ドームは第3セクターであることと、市営地下鉄東豊線の利用頻度低下による減収が見込まれるからです。どちらも税金が直接絡んでくるんですよ!なぜ市民はこの事実に対して、前回の選挙で責任を追及しなかったのか、本当に謎です。
対する高野さんは、市営地下鉄2路線の延伸(東豊線は清田区まで、東西線は手稲区まで)、市電の延伸も公約に掲げています。また、所得制限に関わらず給食費を無料に、子ども医療費を高校生まで無償化拡大など、かなりの財政出動を行う必要性がある公約です。財源をどうするか、という点が課題ですね。なぜなら、札幌市の財政状況はそこまで良くないからです。
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財政の自由度の指標である、経常収支比率が札幌市は道内でもトップレベルに高く、財政的余裕がほとんどないのです。そのため、高野さんの公約の実施は財政的なハードルがかなり高いのです。
ところで、首長は公約で「こんなまちにします」ということを公や有権者に対して伝えるべきと思います。なので、ただ「オリンピック誘致を推進します!」「地下鉄を延伸します!」「丘珠空港を整備します!」ではなく、「オリンピックを誘致して、地下鉄を延伸して、丘珠空港が整備されたら、札幌市はこんな素敵な街になって、市民生活がこんなに良くなるんですよ!」という大きなビジョンを提示するべきです。オリンピックや地下鉄延伸なんてただの手段にしかすぎなくて、我々が求めるのはその先のことです。
見所はあまりないかなと感じています。
◯ まとめ
最後の方は、かなり個人的な意見が入ってしまいましたが、道知事選・札幌市長選の大枠はこんな感じです。
選挙はお祭りだと勝手に思っています。アメリカの選挙を見てください、みんなお祭り騒ぎです。日本は間接民主制なので、我々有権者が政治に関われる機会は選挙くらいです。
特に、地方選挙は地方政治にダイレクトに影響します。都道府県や市町村の地方自治制度は、国政のような議院内閣制ではなく、大統領制に近いシステムです。このシステムの特徴は、首長次第で良くも悪くも変わりやすい、ということです。つまり、自分たちが進む未来の最初は、自分たちで選択することができるのです。
こんなに貴重なチャンスが次に来るのは4年後です。
選挙は、楽しまなきゃ損です!
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今回は、読んでくださったみなさんに選挙について少しでも興味をみっていただき、ぜひ投票してほしいので無料記事として公開しました。もし、サポートして下さる方がいらっしゃいましたら、ぜひ下からサポートよろしくお願いします。
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