野良デザイン#09|ガードレールの荷掛け
観光都市のバスロータリー
このGWは天候にも恵まれた地域も多く、多くの人で賑わう街の光景は懐かしくもありました。みなさんはこの一週間、どんな時間を過ごしましたか?
国内有数の観光都市である京都も活気を取り戻したかのようで、特にJR京都駅は人で溢れていました。
魅力的なスポットが広く分布する京都では、その移動手段としてバスが欠かせません。時期や時間帯によっては、満員バスで乗車できないことも珍しくないほどです。
多くの路線が集まる京都駅前のバスロータリーでは、10を超える乗り場を案内するため、アルファベットと数字を組み合わせた乗り場設計や、大掲示板と案内員によるサポートなど、たくさんの工夫がみられます。掲示板前で見られるコミュニケーションは、短くも心が温まる光景です。
ガードレールの荷掛け
絶えずバスが行き来する場では、安全の確保にも気が抜けません。広いロータリーには、横断歩道を渡ってアクセスする中洲のような乗り場もあり、暑さ寒さの中、反射板を身につけて案内にあたる交通誘導員の方がいます。観光都市の縁の下の力持ちです。
彼らの脇に目を向けると、ガードレールに提げられたバッグを発見しました。ありがとうございます、野良デザインです。
車道と歩道を分離し、有事の際には歩行者の生命を守るための公共プロダクトであるガードレール。街の景観を語る上で欠かせない要素の一つです。
1m間隔に立つポールに3本の水平ポールが組み合わせられた軽量なデザインで、水平のポールにS字フックが掛けられ、シフト制の誘導員のものであろうバッグが2つ吊られています。
ガードレールに立てかけられた看板の影に収めるようにバッグがつられており、誘導員のおじさんの几帳面さが見て取れます。
ロータリーを歩いていると、他にも同様のバッグたちに出会いました。こちらは地下街につながる屋外階段の柵に掛けられたものです。同じく交通誘導にあたる方達の荷物でしょうか。各々異なるフックを持ち寄っている点も可愛らしい光景です。もしかするとフックも自前のものなのかもしれません。
公共プロダクトとアフォーダンス
余談ですが、ガードレールの高さは60cm〜100cmが一般的で、跨ぐには高く、くぐるには狭い、といった具合に、人が越えることを自然に防ぐ「アフォーダンス・デザイン」が施されています。
規定で行為を制限するのではなく、無意識下に行為をコントロールするという考えは、過剰なサイン物をなくし、不特定多数の人が集う公共の場の景観をデザインするために欠かせない要素です。
さいごに
最後まで読んでいただきありがとうございます。
私はプロダクトデザインのお仕事の傍ら、街で出会う匿名の創意工夫、本来の用途を超えた道具の活用である、「野良デザイン」を蒐集して記事にしています。街を歩くことがちょっぴり楽しくなる、そんなきっかけを見つけていただければとても嬉しいです。是非、他の記事も覗いてみてください!
もうすっかり夏の日差し。屋外でお仕事をされる方もお体をお大事に!
みんなで街歩きを楽しみましょう。