マガジンのカバー画像

野良デザインの蒐集

70
本来の用途の枠を超えて使われる道具たち。街で出会った匿名の創意工夫「野良デザイン」の蒐集をテーマに、街を歩くことがちょっぴり楽しくなるような記事を投稿しています。
運営しているクリエイター

#デザイン

野良デザイン#193|段ボール箱の看板

タイ郊外で見つけた野良デザイン。車やバイクが行き交う、中規模の車道の両脇には、所狭しと店が軒を連ねる。雑貨屋や食料品店、レストランの他にも、電化製品を扱う小売店や化粧品店など多彩だ。 その軒先の一角に、アジアらしい色の樹脂製の椅子に乗せられた看板を見る。商品の仕入れで使われたであろう段ボールを、再び箱状に組み立て、その一面に紙を貼り付け、看板・POPとして活用しているのだ。商品をまとめ、輸送するために設計された道具が、店頭で情報を伝達するための道具として活用されている。

野良デザイン#191|コンクリートブロックの看板

とある海沿いの道で出会った看板。サーフショップと飲食店を兼ねた店舗の駐車場に、カラフルな一角を発見した。 積み重ねることで、構造物を形成するための建築部材であるコンクリートブロックが、情報を不特定多数へ伝達するための道具、看板として活用されているのだ。 サーフボードをレンタルできることを発信したり、上の写真奥には、ここが店舗の駐車場として利用できることを示している。 このPマークの看板は、通常10kgを超すその重量を活かし、合板で作られた立て看板をおさえる役割も担っている。

野良デザイン#190|看板のネットスタンド

とある郊外の町内会が管理する共同ごみ収集所。曜日ごとに定められたごみの分別表を示し、またごみの集荷場所を示す役割も担う立て看板に、カラス避けのネットが掛けられている。情報を掲示するための道具が、ネットを保管する道具として活用されているのだ。 セメントを固めて成形された土台に金属パイプが固定され、板金が取り付けられた看板。その板金の上辺に、畳まれたネットを掛けることで、ネットが地面の砂塵や雨水に浸かることなく、清潔な状態で保管されている。看板の幅に合わせて、ネットが畳まれてい

野良デザイン#189|ペットボトルのライトホルダー

幅の狭い路地に面した、ある家屋の玄関口。灯りの少ない軒先に、本来 土に差し込んで設置されるガーデニングライトが一本掲げられています。先端に電灯が取り付けられた、棒状のライトの根本には、2Lペットボトルが活用されているようです。 上半分が切り取られたペットボトルを容器として、モルタルを流し込み、ライトの支柱の径に合った窪みを設けることで、頭の重いライトをホールドしています。 横に添えられたコンクリートブロックのおかげもあって、ライトは風に煽られることなく、立位を保持していま

野良デザイン#188|ペットボトルのコンセントカバー

暑い日差しが照りつけるタイの住宅街。住居の軒先には電灯や洗濯機など、生活のための電化製品が並ぶ。 それら電化製品を動かすため、カラフルに塗られた壁や窓枠に穴を開けて、屋内から電気を供給する場合も見られるが、屋外に電源が設置されるケースもメジャーなようだ。 とある住宅の外壁に、縦に2つに割られたペットボトルが掛けられており、屋外の電源コンセントのカバーとして機能している。 土台となる木の板を家屋の外壁に貼り付け、そこへコンセントを設置。縦に二分したペットボトルを被せ、その上

野良デザイン#187|ビールケースの旗立て

駅前のテナントに店を構える居酒屋。その軒先にはカラフルなノボリ旗が三本、ビル風になびかれている。 三本のノボリ旗は樹脂製のビールケースに差し込まれ、固定されている。瓶飲料の輸送のための道具が、旗を固定する道具として活用されているのだ。 ビニールで被覆された鉄製のノボリ旗の支柱が、ビール瓶を固定するための枠とビール瓶の間にできた隙間に入り込み、絶妙に固定がなされている。ビール瓶がない状態では不安定な仕組み。そのラベルの風化具合からも、中の瓶はノボリの固定具として、長い間放置

野良デザイン#187|フラワーバケットのパイロン

とあるスーパーマーケットの車両用通路に立つパイロン。馴染みの赤色の足元は、黒い樹脂製のケーシングで覆われています。その正体は商用の花を保護・流通するためのバケット。「ELFバケットシステム」という流通システムで使われているもののようです。 パイロンの四角形の脚が切り取られ、逆さまに置かれたフラワーバケットに差し込まれています。スタックできるバケットの形状を活かし、2つのバケットが重ねられ、結束バンドで固定されている点も特徴です。 パイロンの設置面積が小さくスリムである点や

野良デザイン#186|タイヤの高欄

常夏の国マレーシア。日本から7時間ほど離れた空港から一歩出ると、高い湿度と暑さに包まれます。熱帯雨林らしい若草色の景色を背景に、マレー系、中華系、インド系と、多様な文化と人種が入り混じる興味深い土地。 そんなマレーシアの郊外で見つけた野良デザイン。車両用のゴムタイヤが、公道の脇を流れる用水路に架かる、橋の高欄(=落下防止用の柵)として機能しているのです。 直径60cmほどのゴム製のリングが地面に対して垂直に立てられ、その4分の1ほどが道路のセメントに埋められ、橋からの人や

野良デザイン#185|コンクリートブロックのツールホルダー

路地に面した角地の軒先。ブロック塀にもたれるように置かれたコンクリートブロックの穴に、シャベルや熊手が差し込まれている。 収められた2つの園芸具は、塀の足元の雑草を手入れするためのツールだろうか。ブロック塀を構成するピースが、別の役割を持って共存している点も面白い。 Habitat|Osaka, Japan

野良デザイン#182|牛乳パックのハンドル

勝手口の脇に置かれた2つのゴミ箱。丸と四角のプラスチック製の筒には、いずれも頂点に把手が成形された蓋が被せられています。 小さな把手が持ちづらかったのか、把手には折り畳まれた牛乳パックが、蓋の開閉の補助具として備え付けられています。 主に針葉樹のパルプを原料とする厚手の紙に、さらに耐水加工を施した加工紙でつくられた容器。その丈夫な直方体を折りたたみ、既存把手の幅に合わせて端部を折込み、ビニール袋で保護。ビニールテープで、ゴミ箱の把手に固定されています。 ビニールテープは

野良デザイン#181|ベンチのフェンス

微笑みの国タイ。共働きの家庭が多いからか、タイでは夕食を屋台で食す外食文化が深く根付いているようだ。バンコク近郊の主観道路沿いには、マーケット会場が設けられ、大量のテント屋台が軒を寄せ合い、夕刻の賑わいを静かに待つ。 飛行機が離陸できそうなほど広いマーケットの敷地には、駐車場が備えられ、黄色い腰丈ほどのフェンスの群れが、車両や人の動線を制限している。 その一角には、同色のフレームでつくられたベンチが並び、フェンスの役割を果たしていた。 夜闇と電飾の中、マーケットで買ったば

野良デザイン#180|金網フェンスのコートラック

休日の公園。鬼ごっこに勤しむ子供たちを、金網のフェンスが囲う。その編み込まれた鋼線が形作る菱形に、袖やフードなどの端部を通すことで、衣類が固定されている。 大きい服と小さい服。掛けられている位置の違いが、持ち主の背丈や年齢を物語る。 フードが垂れる重みで衣類が落ちないよう、フードを菱形に二重に通す工夫が見られる。 金網フェンスのコートラック ボールの飛翔範囲を制限する道具 → 衣類を一時的に保管する道具 Habitat|Hyogo, Japan

野良デザイン#179|タイヤのパイロンウェイト

とある屋外駐車場で出会った野良デザイン。砂利敷きの広い敷地に、杭とロープで区画分けされた簡素な駐車場。その中に点々と置かれたパイロンが風で飛ばされぬよう、車用のゴムタイヤが被せられている。 パイロン用に設計されたゴム製のウェイト(写真左側)に比べ、重心が高くなるぶん、安定性が悪化するが、分厚めのタイヤは重量がかなりありそう。 駐車場という「場」に文脈のある活用は、乱雑な配置さえも風景の味にしてしまうようだ。 Habitat|Chonburi, Thailand

野良デザイン#178|コンクリートブロックのパイロン

路地に面した敷地境界いっぱいに、塀が設けられた住宅。車がすれ違うことが難しい程度の幅の道。ドライバーへ塀の存在を示す為、黒と黄色のパイロンが置かれている。 よく見ると、パイロンの脇には、黄色く塗られたコンクリートブロックが置かれている。どちらが先に置かれたか、あるいは風に吹かれるパイロンの保険として置かれたものか。 寝かせたコンクリートブロックの活用は、住宅地の景観的観点から唐突なパイロンと比べ、サインとしての機能と、景観に対する親和性のバランスが取れたアイディアのように