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日本人がアメリカでミュージカル俳優になることの難しさ



アメリカミュージカル俳優になることは、誰にとっても挑戦であり、特に非ネイティブの日本人にとっては言語や文化の壁が大きなハードルとなります。私自身もその挑戦を続けている一人として、アメリカでミュージカル俳優になるために直面したさまざまな難しさを体験してきました。


1. 英語の壁と発音の苦労


アメリカで活動する日本人俳優にとって、最も大きなハードルの一つが言語の壁です。英語がネイティブではない私にとって、正しい発音イントネーションをマスターすることは、常に最優先の課題でした。
オーディションに参加するたびに、私はIPA(International Phonetic Alphabet、国際音声記号)を調べ、台詞の発音を完璧に近づけるために多くの時間を費やしました。

一方で、ネイティブスピーカーであるアメリカ人俳優たちは、こうした苦労をする必要がありません。
彼らは、言語の違いによる負担を抱えることなく、自然な発音やリズムで台詞をこなせます。
私は発音や言葉のニュアンスを理解するために、彼らの何倍も努力をしなければなりませんでした。


2. セリフ暗記とオーディションでの準備


私が挑んだあるオーディションでは、コールバック(最終審査)に呼ばれたのは私以外すべて白人男性でした。
この場面で、私は他の競争相手たちとは全く異なるアプローチをしていました。

アメリカの俳優たちは、数日前に送られてきた台本を見ながらオーディションを受けていましたが、私はそのオーディションに臨む前にすべての台詞を完全に暗記していました。
言語の壁がある私にとっては、台本を見ながら演技するという余裕はありません。
また、ネイティブスピーカーとの間にある大きなディスアドバンテージを受けるために全力で台詞を覚え、役に没入できるように準備を整えていたのです。

こうした徹底的な準備のおかげで、最終的にはなんとかコールバックオーディションで合格を得ることができました。
しかし、これはあくまでも彼らと同じスタートラインに立つための努力にすぎません。
私が他のネイティブスピーカーの俳優たちと競うためには、こうした入念な準備と何倍もの努力が必要でした。


3. 人種の壁とキャスティングの現実


アメリカのミュージカル業界では、人種によるキャスティングの壁も存在します。
例えば、『ブック・オブ・モルモン』『屋根の上のバイオリン弾き』では白人が求められ、『リトルマーメイド』セバスチャン『カラー・パープル』のように黒人*であることが重要な役もあります。ラテン系であることが求められる役も多く、『ウェストサイドストーリー』などがその代表です。

しかし、アジア人であることが求められる役は極めて限られており、例えば『南太平洋』『ミス・サイゴン』といったごく少数のミュージカルに限られます。アジア人俳優にとっては、そもそも適した役が少ないという現実が存在し、そのため、競争がさらに厳しくなります。


4. AEA加入の難しさ


また、アメリカでプロのミュージカル俳優になるためには、Actors' Equity Association(AEA)への加入が必要です。しかし、日本人にとってこの加入のハードルも非常に高いです。

AEAに加入するには、ポイント制度を利用してポイントを貯めるか、プロの劇団で有給の仕事を得る必要がありますが、短期間でポイントを貯めることはそのシステム上不可能です。
特に、ビザの制限などがある日本人にとっては、時間的にも厳しく、いきなりプロの劇団で有給の役を得ることも至難の業です。


結論


私がアメリカでミュージカル俳優として成功するために、何倍もの努力を重ねてきました。
その努力は発音の壁を乗り越え、セリフを暗記し、他の俳優たちと同じスタートラインに立つために日々の準備を怠らなかったことが、私が役を得るための大きな要因でした。

アメリカで日本人がミュージカル俳優として活躍することは、確かに多くの壁があります。しかし、その壁を乗り越えるために必要なのは、徹底した準備と努力です。これが、他の競争相手と対等に戦うために求められる最低限の条件なのです。

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