見出し画像

シカゴ、デコラ、町屋

イリノイ州、シカゴにフィールド自然史博物館というところがあって、そこにスーと名付けられたTレックスの化石がある。全身骨格の90%以上が見つかった稀有な標本だとか。名前の由来は発掘者の名前から。スーザンだからスー。

その隣、アイオワ州、デコラにあるトップリング・ゴライアスというブルワリーは、そのスーの名前を付けたビールを作っている。創業者は、子供のころその博物館をよく訪れてスーを眺めていたんだそう。
思い入れがあるのだろう、そのブルワリーにはスーの名前が付いたビールがいくつかある。
そのうちのひとつ、「キング・スー」はヘイジー・ダブル・IPA。ガツンと重ための飲み口だけど、フルーティな香りが喉から鼻に抜けていく。そのパッケージには猛り狂ったオレンジ色のスーが描かれている。
ちなみに「キング」とあるけど「スー」は前述のとおり女性の名前だ。

それを初めて飲んだのは町屋にあるバーキタカミでだった。
どう注文したのかは覚えていないけれど、何かふんわりしたお願いに、マスターが勧めてくれたのだと思う。とても満足したからこそ、いまでも見かけては飲んでいる。

少しあとだったかすでにそうだったかは覚えていないけど、恐竜のプラモデルが立て続けにリリースされ、盛り上がってきた時期があった。バンダイスピリッツからプラノサウルスのティラノサウルスがリリースされた際、このビールをモチーフに作るのもいいかもな、とインスピレーションを得て購入した。
キットはとても作りやすかった。説明書どおりに組むだけならあっという間だったが、今回のモチーフに合わせるように少し工作した。羽毛の表皮は選択せず、骨格は諦めてガワをガッチリ接着し、目立つ合わせ目を消した。
パッケージのスーはオレンジ1色だけど、間延びすると思い、腹部分は薄いオレンジとした。その他、爪や口の中などの細かなところはアドリブ。ウェザリングはせず半艶のトップコートで仕上げた。今年の夏季休暇と少しかかった。

スーは、サウスダコタ州のシャイアンリバー居留地近くで発掘された。シカゴで展示されることになり、それを見た男がその名前を付けたビールをデコラで作った。それを町屋のバーで飲んだ男がパッケージをモチーフにプラモデルを作った。
そして今回、そのバーで模型の展示会が開かれることになり、たまたま誘われてスーをそこに並べた。
そんな連鎖の果てがバーキタカミだったという話

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?