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読書30 『ロスト・ケア』

  葉真中顕著

「親の介護のつらさを誰にも言えずに耐えている娘」
「姑の介護を家族から押しつけられ、自分でも義務だと思い込もうとして、結果的に虐待に走る嫁」
「理想を抱いていた真面目なヘルパーは、仕事中に暴言を吐いた翌日から、無断欠勤して辞めてしまった」
「メディアが垂れ流す想像力を欠いた良識は、彼女たちのような人々をもっと追い詰める」

 だから、彼は戦った。『ロスト・ケア事件』四十三人ものひとを殺害して、死刑が確定された。
 識者の多くは「彼が犯した殺人は許されることではない。だが本当の問題は社会の側にある」といった意見を表明し、マスコミも同調した。
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 介護保険制度が施行されました。介護企業が大きな利益をあげるようになると、制度改革が行われ、企業に支払われる介護報酬が引き下げられます。主人公の事業所は「介護報酬の水増し請求」「事業所指定の不正取得」で、たちまち世間からバッシングを受けます。
 従業員は日頃から熱心に業務に取り組んでいますが、待遇が悪くなる一方で人手不足。勤務形態も厳しい状態です。
 ご家族の介護のところも、その大変さがとても強烈な印象で伝わりました。

 介護業界の事情と、家族介護の大変さ。蔓延る振込み詐欺など、この時代の人々が暮らす中の事情が、介護の視点から厳しく描かれています。

 また、検事の友人との感情の相違なども所々あり、辿りながら読みました。

 犯人については「彼」という呼び方で、終盤までわからず混乱しました。

 この本が発行されてから、十年くらいは経つようで、処遇の改善は少しは進んでいるのでしょうか。
 深く考えさせられる内容でした。

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