読書5『家と庭』
畑野智美著
世田谷区北沢。最寄りの絵は下北沢。赤い屋根に白い壁、二階建てと屋根裏部屋がある。庭には季節ごとに色とりどりの花が咲き乱れている。この家で育った、24歳で中山家の長男の望。大学を卒業後、まんが喫茶で働いている。
1番上の姉の葉子ちゃんは、大学卒業と同時に結婚して、品川の高層マンションに住んでいるが、幼稚園の娘のメイと、ハリネズミのハリーを連れて、今実家に戻って来ている。望を無理矢理、屋根裏部屋に追いやって、それまで望が使っていた部屋を占領してしいる。離婚はしていない。
その次の姉の文乃ちゃんは、望の1歳上。葉子ちゃんより4歳下で、本と雑貨を扱う雑貨屋で、契約社員として働いている。文乃ちゃんは、ある事情から、ひとが多いところには1人で行けない。公共交通機関が使えない。
望が小学校1年生の時に、妹の弥生が生まれた。現在、遅い反抗期真っ只中の大学受験生。
父はインドネシアに単身赴任中。大の宝塚好きの母は、頻繁に公演に行っている。祖母は入院中。
中山家は、他に土地やアパートも持っている。望は何も不自由することなく育ってしまい、何をしたいとか何になりたいとか考えずに今に至る。
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望のバイト仲間の林太郎くんが、中山家が所有するはアパートの住人で、お風呂が壊れて中山家に入りに来て、そのうちご飯も食べて帰るようになります。それから、家族ぐるみのつきあいのある、望の幼馴染のあまねちゃんとのやり取りもおもしろいです。メイが行き始めた英語教室の送迎を、葉子ちゃんに押し付けられた望は、そこの先生にときめきますが、自分でもよくわかっていません。
ただ、この家が居心地良くて「このままではいけない」と、みんなが思っています。
女ばかりに囲まれている望くんの、葉子ちゃんや文乃ちゃんや、弥生ちゃんとのやり取りがおもしろいし、庭の花をバックにハリーの写真を撮って儲けようと、企んだ挙げ句、何なくハリーに脱走されます😅何よりメイが、それはそれはハリーを大切にしているのです。こわい葉子ちゃんに大激怒されて必死でハリーを探し回る望くんに大笑いし、それぞれの想いを抱えながら「ここから出ないと進めない」と、模索するみんなを思わず応援してしまう、楽しいお話でした。
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