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実際に取ってみて気付いた国家資格を持つメリットとデメリット

携帯のメモを整理していたら、国家資格を取得するメリット・デメリットというメモが出てきた。

以前話したかどうか忘れたが、私の妻は公認会計士である。母校の大学で国家資格を活かした女性としてのキャリアのようなタイトルで講演依頼が来たというので、そのブレスト用として、私なりの意見をまとめたメモであった。

彼女はロジックよりもどちらかというと感覚で生きている野生派タイプなので、イマイチしっくりこなかったらしく、残念ながら殆ど採用されず、日の目を浴びることなく埋もれていた残念なメモ。

折角なので、今回はそんな可哀想なメモを再編集して記事化して公開したいと思う。

内容としては、実際に取ってみて気付いた国家資格を持つメリットとデメリット。

私は、2017年12月に最終科目合格し、2018年7月に税理士登録をした。登録するまでの紆余曲折は、別の機会に譲るとして、登録してから3年弱。

現状で税理士しかないので、厳密には他の国家資格については何とも言えない部分はあるが、ある程度共通する部分はあるように思うので、そのような見方でお読み頂けたら幸いである。

■業務面のメリット:稀少性や信用力等の掛け算ができる

業務面で言うと、まずは稀少性(レアさ)。国家資格は、多くの場合独占業務という形で、「一定の技能が認められた人にしかこの業務を行ってはならない」という形で業務が区切られている。

税理士で言えば、例えば他人の税金について、申告書を作ったり、相談に乗ったりすることを言う。これは、資格を持たない人があやふやな知識で他人にアドバイスして不利益を被ることを防ぐ趣旨である。

その意味では、たまに税理士でない一般の会社が「サラリーマンの税金を下げるセミナー」的な広告が目に入ってくるが、その意味ではかなり怪しい言える。税務の場合、例え無償でも他人の税務相談行うことは法律違反となる。

つまり、一定の試験への合格や研修義務と引き換えに、一定の範囲の業務を独占的に出来る権利が付与されているということである。これは参入障壁を作れるという意味で、稀少性を高めることができる。

そしてこの稀少性は、掛け算することでさらに稀少性を高められるという特徴がある。この「稀少性の掛け算」の話については、結構前に見た以下の動画にとてもわかり易くまとめられている。

別に資格に限ってを掛け合せようといった狭い話ではなく、掛け合わせるのは業務×業務でも良いわけである。それを、国家資格を使うと手っ取り早く稀少性を得られるということである。例を挙げると、税理士×IT、公認会計士×YouTuber等々きりがない。前職の経験を活かして稀少性を出している方も多い。

それと、信用力。これはあくまでその国家資格が有効な範囲で、という条件付きなのであるが、自己紹介をする前から「この人はこれができる人なのね」というイメージを相手に与えることが出来る。これは実際取得してみて気付いたメリットである。

税理士の場合で言えば、銀行や行政官庁等とのやり取りは、税理士で代理人だと名乗るだけで、イチから話をしなくて良いので、かなり話はスムーズである。昨日もお客さんが銀行対応で1週間近く手詰まりになっていた話の間に入ったらものの5分程度で解決した。

また、影響力のある有名な人や年上の経営者、あるいは他の専門家と同じ目線で話が出来るというのも、信用力からくる部分が間違いなくあるように思う。こちらが特別偉いわけでは決してないのだが、すごい人相手でも自分の専門領域では上に立てるという意味において、目線を揃えることができる。

これはジェネラリストには持ち得ないメリットになってくるのではないだろうか。当然ながら、ただあるだけではなく中身も伴っていることが大前提ではあるのだが、少なくとも出発点には立てる、ということである。

結果として、国家資格は、使い方次第ではあるものの、稀少性や信用力の掛け算で、繋がりや行動範囲が広がるというメリットがあるように思う。

■心理面のメリット:脱出用のパラシュートを持つことができる

先程話したように、国家資格はこれが出来るというパスポートのようなものなので、多くの場合独立開業が可能な仕組みになっている。

最初から独立開業目当てで国家資格取得に励む人も多いように思うが、最初は勤務務めから始めるのが殆どである。その時に、万が一の最悪の事態が発生した時に、国家資格があれば転職や独立開業という選択肢を持てるというのは心理面でのメリットになるように思う。

使うか否かはさておき、脱出用パラシュートを持っているという事実がパイロットの操縦に与える影響を考えてもらったらわかり易いようにと思う。

これに甘え過ぎてはいけないが、最悪の事態を想定してこそ果敢にチャレンジが出来るということはあるだろう。


■業務面のデメリット:職務範囲を決めがちになる

メリットで話した稀少性は、その特定の範囲が有効であるという前提が付く。国家資格を取得すると、良くも悪くもその仕事の範囲に縛られるということが起きる。つまり、範囲内は強いが範囲外はお手上げということが起きてくるわけである。

これは、業態転換が激しい現代ではかなり致命的だと考えられる。目指した段階では魅力的だった市場が、時間と労力をかけて取得した後、陳腐化していたという結果がありうるということである。

ただ、これには対策がある。先程メリットで話したように自ら掛け合わせることで新たな稀少性が発揮できる市場を開拓することもそうだし、自社だけでなく他専門家と提携することでも達成出来る。

要は、ある意味では資格にとらわれず、そして業界常識にとらわれず、自ら職務範囲を決めていくことが必要ということである。

■心理面のデメリット:信用維持のためアップデートし続けないといけない

これは、国家資格という信用力の対価として、その決められた村でのルールに従う必要があるということである。

大抵の場合、職業的な倫理規則が定められているわけであるし、それに違反した場合、業界全体の信用失墜行為となるので、重めの罰則があったりする。

また、税制は毎年変わるので、それにアップデートし続けないといけない。若い方なら問題ないだろうが、年を取ってくるとキツくなりそうである。

これを話すと結構驚かれることが多いのだが、実は税理士業界は60歳以上が過半数という大変特殊な業界だったりする。

ちなみに20代は1%以下、30代で約10%というデータを踏まえると、先月35歳になった私以下の世代は5%未満だと推測される。研修等で同世代に出会えない・白髪が多いという事態にも頷ける事実である。

話を戻すと、信用を維持していくためにも、日々アップデートが必要で、怠ることは専門家として許されない。知らなかったことはイコール説明していなかったことになるので、それを理由に損害賠償を起こされることもある世界なのである。

デメリットで片付ける問題でもないようにも思えるが、大切な心掛けの部分ではあると実感している。

■おわりに

いくつか自分の体験談も踏まえてメリット・デメリットを挙げさせて頂いた。

私の可哀想なメモは、これでやっと安心して成仏してくれたかと思うと、少し心が軽くなった。

ただ、実際メリット・デメリットだけで判断出来ないやりがいみたいなものも多くあるのは事実。また数年後書き直してみると違った答えになっているようにも思える。それはそれで面白いと思う。

参考にして頂けたら幸いです!



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