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【中医基礎理論 第41講】 - 五行学説 - 実すれば其の子を瀉す!難経六十九難を完全マスター!

前回は、難経六十九難の「虚証」の治療原則について学んだ。

虚証は「虚すれば則ち其の母を補う」の治療原則の下、五行穴を用いて治療する。

難経六十九難は五行で理解することが必要だということも忘れないでほしい。

今回は、「母子相及」の「実証」対し、「相生」を利用した難経六十九難の治療法を学んでいく。



難経六十九難は「虚証」と「実証」の2パターンがある

復習になるが、難経六十九難は五行のある臓腑が虚した時(エネルギー不足)と、実した時(エネルギー過多)の治療原則が記載されている。

その治療原則は「虚則補其母」と「実則瀉其子」だ。

今回は、実証の治療原則である「実則瀉其子」をみていこう。


実則瀉其子(実すれば則ち其の子を瀉す)

実証の治療原則は、「実則瀉其子(実すれば則ち其の子を瀉す)」である。

これは「ある臓が実証にあるとき、 その臓を瀉し、またその子臓を瀉す」治療原則だ。

母(自分)がエネルギー過多になったら、母と自分が生む子のエネルギーを捨てて、正常な状態に戻すという方法だ。

もっと具体的にみていこう。

例えば肝が実した場合

肝心火旺の難経六十九難
肝心火旺の難経六十九難


肝が実したとき、この法則にあてはめると「肝を瀉し、またその子臓である心を瀉す」となる。

しかし、鍼灸治療をするにも、これだけではどの経穴を使えばよいのか分からない。

そこで、どの経穴を使用するかを具体的に示す、さらなる原則がある。

それが、「自経の子穴と、子経の子穴を瀉す」だ。

の原則にはキーワードが3つある。

①「自経」、②「子経」、③「子穴」

これらの意味をしっかりおさえよう。

自経とは「問題がある臓腑自身の経脈」のことである。肝が実しているなら問題は肝にあるので、自経は「肝経」となる。

子経とは「問題がある臓腑の子の経脈」のことで、肝が実しているなら子経は、問題がある肝の子である心の経脈、つまり「心経」となる。

ここまでは問題ないだろうか?続けて子穴の意味をみていこう。

子穴とは、「自分の子の特性を持つ経穴」のことだ。

前回学んだように、各経絡には五行の性質を持つ要穴(日本では五行穴という)がある。

木穴、火穴、土穴、金穴、土穴の5つだ。

肝は五行で木に属す。木の子は火だ。つまり、肝の「子穴」とは、木の子の性質を持つ「火穴」を指すのだ。

このことから、自経の子穴=肝経の火穴となる。

最後は、「子経の子穴」だ。

肝の子経は心経である。そして、肝の子穴は火穴である。

つまり、子経の子穴=心経の火穴となる。

選穴の方法は分かっただろうか?

それでは経穴をあてはめていこう。

肝経の木穴は太敦、火穴は行間、土穴は太衝、金穴は中封、土穴は曲泉である。

心経の木穴は少衝、火穴は少府、土穴は神門、金穴は霊道、土穴は少海である。

肝が実した時は、自経である肝経と、子経である心経の子穴=火穴を瀉せばよいので、「行間と少府に瀉法をする」という治療方法になるのだ。

他の臓腑も考え方は同じである。

こちらも虚証と同じく、最初は難しく感じると思うが、慣れるとすぐにできるようになるので、諦めずに繰り返し考えてみてほしい。


シンプルにまとめると

五臓の場合

今回もシンプルにまとめてみよう。

問題:

肝実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 肝が実した。

  2. 自分(肝経)と子の経脈(心経)の子穴を瀉す。

  3. 肝=木だから木の子穴は火穴。

  4. 肝経と心経の火穴を瀉す(行間と少府)。
    *心包も五行で火に属すので、少府の代わりに労宮を使っても良い。

以上


問題:

心実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 心が実した。

  2. 自分(心経)と子の経脈(脾経)の子穴を瀉す。

  3. 心=火だから火の子穴は土穴。

  4. 心経と脾経の土穴を瀉ず(神門と太白)。
    ※心包も五行で火に属すので、神門の代わりに大陵を使っても良い。
    ※心包実の場合も大陵の代わりに神門を使っても良い。


問題:

脾実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 脾が実した。

  2. 自分(脾経)と子の経脈(肺経)の子穴を瀉す。

  3. 脾=土だから土の子穴は金穴。

  4. 脾経と肺経の金穴を瀉す(商丘と経渠)。


問題:

肺実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 肺が実した。

  2. 自分(肺経)と子の経脈(腎経)の子穴を瀉す。

  3. 肺=金だから金の子穴は水穴。

  4. 肺経と腎経の水穴を瀉す(尺沢と陰谷)。


問題:

腎実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 腎が実した。

  2. 自分(腎経)と子の経脈(肝経)の子穴を補う。

  3. 腎=水だから水の子穴は木穴。

  4. 腎経と肝経の木穴を瀉す(湧泉と太敦)。

虚証の時も言いましたが、経穴もちゃんと覚えておこう。


六腑の場合

六腑の場合も考えは同じだ。

問題:

胆実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 胆が実した。

  2. 自分(胆経)と子の経脈(小腸経)の子穴を瀉す。

  3. 胆=木だから木の子穴は火穴。

  4. 胆経と小腸経の火穴を瀉す(陽輔と陽谷)。


問題:

小腸実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 小腸が実した。

  2. 自分(小腸経)と子の経脈(胃経)の子穴を瀉す。

  3. 小腸=火だから火の子穴は土穴。

  4. 小腸経と胃経の土穴を瀉す(小海と足三里)。


問題:

胃実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 胃が実した。

  2. 自分(胃経)と子の経脈(大腸経)の子穴を瀉す。

  3. 胃=土だから土の子穴は金穴。

  4. 胃経と大腸経の金穴を瀉す(厲兌と商陽)。


問題:

大腸実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 大腸が実した。

  2. 自分(大腸経)と子の経脈(膀胱経)の子穴を瀉す。

  3. 大腸=金だから金の子穴は水穴。

  4. 大腸経と膀胱経の水穴を瀉す(二間と足通谷)。


問題:

膀胱実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 膀胱が実した。

  2. 自分(膀胱経)と子の経脈(胆経)の子穴を瀉す。

  3. 膀胱=水だから水の子穴は木穴。

  4. 膀胱経と胆経の木穴を瀉す(束骨と足臨泣)。


問題:

三焦実の時に使う経穴は?

考え方:

  1. 三焦が実した。

  2. 自分(三焦経)と子の経脈(胃経)の子穴を瀉す。

  3. 三焦=火だから火の子穴は土穴。

  4. 三焦経と胃経の土穴を瀉す(天井と足三里)。


いかがだろうか?

重要なのは「難経六十九難は五行で考えること」だ。

それは虚証と同じである。

実証の選穴
実証の選穴


まとめ

今回は難経六十九難の実証に対する治療原則を学んだ。

ポイントは3つ。

  1. 難経六十九難で実証の治療原則は「実則瀉其子」である。

  2. 「自経の子穴」と、「子経の子穴」を補う。

  3. 五行穴で考える。五輸穴で考えてしまうと六腑で混乱する。

これで国家試験の鉄板問題、難経六十九難は終わりである。一回だけでは理解できなくても、何度か見直していただければマスターできる(できるはず)。

学校では教わらないが、相克関係に対する治療原則も記載されている。

それが「難経七十五難」だ。

次回は、相克関係に対する治療原則、「難経七十五難」を学んでいく。


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