【中薬を故事で学ぶ】　蛇床子の故事 〜若者が挑んだ危険な冒険〜

ある村に奇妙な病気が流行しました。

病気にかかった人々は毛穴から鶏肌状の湿疹が出て、かゆみがひどく、激しくかきむしるため、時には血だらけになることありました。

しかも、それでもかゆみが治まりませんでした。

この病気は非常に感染力が強く、病人の衣服を着たり、布団に寝たりしても感染するだけでなく、病人がかきむしる際に飛び散る皮膚の破片に触れただけでも感染してしまいました。

数日のうちに、村の人々はみな感染し、どんな薬を飲んでも効果がありませんでした。

その後、医者が「百里離れた海の島に、羽のような葉と開いた傘のような花を持つ薬草があり、その種子を煮た湯で洗うとこの病気が治る。」と言いましたが、誰もそれを採取することはできないと思っていました。

なぜなら、その島は毒蛇だらけの島だったからです。

人々はため息をつきましたが、ある若者が勇気を出して食糧を背負い、船で海に出ました。

しかし、彼は長い間帰らず、ついには行方不明になりました。

続いて別の若者が島へ薬草を探しに行きましたが、彼も村を離れた後、消息を絶ちました。

おそらく二人とも毒蛇にやられたのでしょう。

そのため人々は蛇の島で薬草を採ることを諦めました。

しかし、かゆみが耐えられず、中には骨が見えるほど肉をかきむしり、傷口が膿んで大きな膿瘍になる人もいました。

村全体がこの奇妙な病気に苦しんでいる中、とうとう別の若者が「どうしても薬を採りに行かなければならない！」と立ち上がりました。

老人たちは彼を説得しようと「我慢して耐えろ！蛇の島へ行けば命はない！」と言いましたが、若者は「全ては自分次第だ！毒蛇を制する方法は必ずある！」と言っ決意を固めました。

彼は村を離れ、まず蛇を扱う達人を探しました。

ある日、若者は海岸付近の大きな山にある尼寺に辿り着き、ました。

そこには100歳を超える老尼が住んでいました。

噂よると、老尼は若い頃に蛇の島へ行き、蛇の胆を薬に用いたことがありました。

若者は老尼に会い、蛇の島への行き方を尋ねました。

老尼は「毒蛇は凶暴だが、雄黄酒を恐れる。端午節の正午に島へ行き、毒蛇を見かけたら雄黄酒を振りかければ、毒蛇はそなたから遠ざかる。」と教えてくれました。 ※雄黄酒：蒸留酒の白酒と雄黄（鶏冠石、天然の硫化ヒ素の一種）などを混ぜた酒

若者は老尼に感謝し、雄黄酒を持って海に出ました。

彼は端午節の正午まで船を蛇の島の近くに停め、その時が来ると上陸しました。

島はあちこちに蛇がいて、黒白の斑点があるもの、金色の環があるもの、数mの長さのもの、碗口のように太いものなど様々でした。

若者は歩きながら雄黄酒を振りかけると、毒蛇は動かなくなりました。

彼は急いで毒蛇の下にある、羽のような葉と開いた傘のような花を持つ野草をたくさん掘り起こしました。

若者はついに無事に帰還しました。

彼は雄黄酒で毒蛇を制する方法を見つけただけでなく、村の人々のために薬草を採ってきました。

彼は薬草の種子を煎じて村の人々に風呂に入れさせました。数回洗うと、かゆみもなくなり病気が全て治りました。

後に、人々はこの草を村の近くに植え、疥癬や湿疹を治す薬として使用しました。

この薬草はもともと毒蛇の下から掘り出されたため、「蛇床」と呼ばれました。

そしてその種子は「蛇床子」と名付けられました。

おしまい

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