【中薬を故事で学ぶ】 麻黄の故事 〜麻黄は面倒臭い?〜
このnoteでは中薬の故事(由来となった話)を書いています。
ただただ中薬の名前を覚えるのは大変です。
でもストーリーで覚えると記憶に定着しやすくなります。
今回ご紹介する中薬は「麻黄(まおう)」です!
麻黄は、麻黄湯(まおうとう)を始め、
葛根湯(かっこんとう)
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
越婢湯(えっぴとう)
薏苡仁湯(よくいにんとう)
など、多くの漢方薬に含まれています。
そんな麻黄ですが、「面倒臭い」という言葉と深い関係があるのをご存知ですか?
「麻黄は何で面倒臭いの?」
その謎は、故事を最後まで読むと解決します。
どうぞ、お楽しみください!
麻黄の故事
昔々、薬草を栽培する老人がいました。
子供がいない彼は弟子を一人引き取りました。
しかし、その弟子は非常に傲慢で、ほんの少ししか学ばないうちに師匠を見下すようになりました。
薬草を売ったお金も師匠に渡さず、勝手に使ってしうこともしばしばでした。
師匠はもう我慢ができず「お前はもう独立しなさい」と弟子に言いました。
弟子は「わかった!」と自信満々に言いました。
しかし、師匠は不安そうに続けました。
「ただし、一つ注意がある。ある薬草は適当に売ってはいけない。」
「どの薬草ですか?」
「無葉草だ。」
弟子は「どうして適当に売ってはいけないのですか?」と尋ねました。
師匠は「この草の根と茎は異なる用途がある。茎は発汗に、根は止汗に使う。間違えると患者が死ぬことになる。分かったか。しっかり覚えておくのだぞ。」と、弟子に言い聞かせるように説明をしました。
弟子は「分かりました。」と答えました。
師匠は「復唱してみろ。」と言いました。
弟子は言われた通り師匠の言葉を復唱しました。
しかし、口先だけで心がまったく入っていない様子でした。
そう、弟子は事の重要性を深く考えていなかったのです。
それ以来、師弟は別れ、それぞれ薬草を売るようになりました。
師匠がいなくなると、弟子の態度はどんどん大きくなっていきました。
薬草の知識は少ないのに、どんな病気でも治すつもりでいました。
そんな中、とうとう事件が起こりました。
師匠と離れて数日も経たないうちに、彼は無葉草を使用して患者を死なせてしまいました。
患者の家族はすぐさま弟子を捕まえ、地元の官吏の下に連行しました。※官吏=役人
官吏はさっそく弟子を取り調べ始めました。
「お前は誰から薬草の知識を学んだのだ?」
弟子は師匠の名前を渋々言いました。
官吏は師匠を呼び出し「薬草で人を死なせるなんて、お前は弟子に何を教えたんだ?」と尋ねました。
師匠は官吏の目をまっすぐ見つめて言いました。
「私の罪ではありません。」
「どうしてお前に罪がないと言える?」
師匠は弟子を一瞥すると、「無葉草に関して、私ははっきりと重要な注意事項を彼に教えたからです。」と答えました。
官吏はそれを聞いて弟子に問いました。
「師匠の言葉を覚えているか?言ってみろ。」
弟子は「発汗には茎、止汗には根を使う。間違えると死ぬ。」と言いました。
官吏はさらに問いました。
「患者は汗をかいていたか?」
弟子は「全身から虚汗が出ていました。」と答えました。
官吏は鋭い目つきで問いました。
「お前は何の薬を使った?」
「無葉草の茎です。」と弟子は答えました。
それを聞いて官吏は激怒しました。
「まったくでたらめだ!患者が既に虚汗をかいているのに発汗の薬を使うなんて!死ぬに決まっているだろう!」
官吏は弟子へ40回の杖刑と、3年間の投獄を命じました。
そして、師匠は即座に解放されました。
月日は流れ、弟子は3年間の投獄生活を終えました。
弟子は、ようやく心を入れ替えました。
彼はすぐに師匠に会いに行き、謝罪し、過去の行いを悔い改めました。
師匠は彼が変わったことを見て、彼を許しました。
そして再び弟子に医道を教えたのです。
弟子は「無葉草」を使用する時は非常に慎重に使用するようになりました。
弟子は「無葉草」に大きな災難をもたらされ、散々な目に遭わされたことから、弟子は無葉草を「面倒くさい草」と呼ぶようになりました。
※中国語で「面倒くさい」は「麻煩:マーファン」と言います。
後に、無葉草の根が黄色であることから、「麻黄」と改名されました。
「麻黄」は中国語で「マーファン」
そう、麻煩と同じ発音です。
おしまい
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