【中薬を故事で学ぶ】　呉茱萸の故事 〜楚王を救った呉萸〜

「呉茱萸」という名前は、春秋時代には呉国で産出されていたことから「呉萸」と呼ばれていました。

この薬草は痛みを止める効果のある良薬でした。

当時、呉国は隣接する楚国に比べて小国であり、小国は大国に貢ぎ物をする必要がありました。

その年、呉国の貢ぎ物の中に吴萸が含まれていました。

しかし、楚王はこれを見て激怒しました。

楚王：「小さな呉国が、国の名を冠したものを貢ぎ物として出すなんて、これは我々楚国を軽視しているのか？こんなものはいらん！持ち帰れ！」

あまりの態度に呉国の使者は茫然自失となりました。

その時、楚国の朱という医師が楚王に急いで言いました。

朱医師：「呉萸は胃寒による腹痛を治すだけじゃなく、吐き気や下痢を止める効果があります。呉王は楚王が腹痛の持病を持っていると知り、貢ぎ物として呉萸を選んだのです。これを受け取らないと、両国の友好関係を損なうことになりますよ。」

「馬鹿な！」と楚王は怒鳴りました。

楚王：「私には呉萸など必要ない！我々の国にも必要ない！」

呉国の使者は恥をかかされたので、憤慨して宮殿を去りました。

朱医師は急いで使者を追いかけて言いました。

朱医師：「お願いがございます。呉萸を私に下さいませんか。楚王はいずれ呉萸を使うことになるでしょう。」

使者は朱医師の誠実な人柄を感じ、呉萸を朱医師に渡しました。

朱医師はそれを家に持ち帰り、庭に植え、丹精込めて育てました。

使者が国に戻ると、呉王は楚王の無礼な態度を聞いて楚国との交流を断ちました。

数年後、呉萸は朱医師の家でどんどん育ち、広い範囲に生い茂っていました。

朱医師は、この草の実は未熟なうちに薬に使う必要があるということを知っていて、適切な時期に収穫し、乾燥させて保管していました。

ある日、楚王の古い病気が再発しました。

腹痛で汗が止まりません。

宮廷の大夫たちは皆どうすることもできず途方に暮れていました。

朱医師は急いで呉萸を煎じ楚王に飲ませました。

楚王は数回続けて飲んだ後、腹痛が止まり、さらに数回飲むと病気が完治しました。

楚王は朱医師に尋ねました。

楚王：「お前が私に飲ませた薬は何だ？」

朱医師は答えました。

朱医師：「これは以前、呉王が楚王の身体を案じ、使者に貢ぎ物として持たせた呉萸です。」

その瞬間、楚王は吴国に対してひどく無礼な態度を取ったことを後悔しました。

楚王は呉国との関係を修復するためにすぐさま人を派遣しました。

さらに、呉萸を広く栽培するよう命じました。

ある年の秋、楚国では疫病が流行し、多くの民が嘔吐や下痢に苦しんでいました。

中には死んでしまった者もいました。

楚王は急いで朱医師に薬を配って民を救うよう命じました。

朱医師は呉萸を主とした薬を作り、多くの瀕死の病人を救いました。

楚王は朱医師の功績を讃えました。

そして、人々に忘れさせないため、「呉萸」の名前を「呉朱萸」と改めました。

後に、薬草であることをより明確するために「呉朱萸」の「朱」の字に草冠が加えられ、「呉茱萸」と書くようになりました。

おしまい

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