【中薬を故事で学ぶ】 半夏の故事 〜仙人より子供を選んだ半夏〜
昔、石羊場に李富安という名の農民がいました。
彼は多くの子供を望んでいました。
妻は賢く、すでに7人の娘を産んでいましたが、さらに子供を望んでいました。
48歳の夏、第8子を出産しました。
夏の半ばであったため、李半夏と名付けられ、家族はみな彼女を半夏と呼びました。
李半夏は生まれつき小さく華奢でした。
10歳になってもまだ背が低く、とてもおとなしい子でした。
家族が多いのに土地が少ないため、生計を立てるのが難しく、李富安は半夏を相蓋山の寺院に送りました。
半夏は仏門で修行し、苦行を続けましたが、仙人や仏になることはできず、信念を失いかけていました。
ある晩、仏陀が夢を通じて「修行を続けなさい。仏門は大慈大悲で、苦しみを救うことが根本です。長年の修行にもかかわらず、世の中の苦しみを取り除くことができなかったため、仙人にはなれないのです。」と教えました。半夏は仏陀の言葉に従い、普州で「起死回生」と書かれた看板を掲げ、薬屋を開き、人々の病を治療し始めました。
男性たちは美しい娘が薬屋に立っているのを見て、彼女に病を治してもらうのを恥ずかしがりました。一方、貧しい老婦人は娘に助けを求めました。
老婦人:「私には病気を治すお金がありませんが、病気を治してくれれば、一生あなたに仕えます。」
娘は優しく彼女の手を取り、「あなたの病気は重いですが、きっと治せますし、料金はいただきません。」と答えました。薬を包んで「この薬を持ち帰り煎じて飲めば、病気は必ず治ります。」と優しく言いました。
老婦人は感謝し、薬を持ち帰り、煎じて飲みました。
翌朝、再び飲むと、その日の正午になっても身体には何も問題を感じなくなりました。
その後、彼女は人々に「街に若い神医がいて、長年治らなかった病気を治してくれた!」と言い周りました。
実際に、その老婦人は長年にわたる病気を患っていて、どんな医者も治せなかったのに、今では顔色も良く、元気に話し、病気の影は無くなっていました。
噂は一人から十人、十人から百人に広がり、すぐに娘の名声が普州全体に広まりました。
人々は彼女のもとに病気を治してもらいに来ました。
彼女は昼夜を問わず、もし呼ばれればすぐに、病人の家に行って治療をしました。
まさに「薬到病除(薬を飲んですぐ病気がよくなる。<喩>処置が適切で,問題が迅速に解決する)」の言葉通りで、普州全体で神医として有名になりました。
ある日、半夏が石羊場に来て、人々の病気を治療していると、56人の病人がやってきました。
彼女は56通の処方箋を書き、56袋の薬を包みました。
さすがに彼女も疲れ果て、腰も曲がってしまいました。
その時、若い男が現れ彼女に言いました。
六甲神:「私は天上の六甲神です。あなたが人々の病を治し災難を消し去った功績により、功徳が完全に成就しました。玉帝の命により、あなたを天界に召し、仙人として迎え入れることになりました。明日、太陽が昇る時、相蓋山の華厳洞で招集されます。」
六甲神はさらに「恐らくは半夏仙になるでしょう。」とこっそり言いました。
そして、蓮の花の上に乗り、祥雲の中へと消えていきました。
半夏はこれを聞いて興奮して、曲がった腰もまっすぐになりました。
長年の願いがついに叶うと思いました。
翌日、彼女は早く起きて荷物を整え、華厳洞へ向かいました。
そして、日の出と共に天界からの迎えを受ける準備をしました。
しかし、彼女が出かけようとした時、急に戸を叩く音がしました。
驚き、戸を開けると、顔色が青ざめて子供を抱いた逞しい男が立っていました。
一目で命に関わるほど重い病気を患っていることが分かりました。
男は汗だくの状態で、半夏に必ずこの子を救ってくれと懇願しました。
その子は彼の唯一の子供だったのです。
半夏は子供の脈を取ると、病気の重さにどのように治療すればいいか分からず慌ててしまいました。
しかし、彼女は心を抑え、病状を詳細に尋ね、病態を分析し、慎重に子供を観察し、考え抜きました。
そして子供に薬を煎じて飲ませました。
しかし、改善の兆しが見えませんでした。
その間にも、天界へ向かう時間が近づいていました。
半夏は男に「薬を飲ませました。すみませんが、ちょっと用事があるので出かけます。戻ってからまた子供を治療します。」と言いました。
半夏が去ろうとすると、彼は跪いて、子供を治してから行ってくれるよう懇願しました。
半夏は困惑しましたが、その時、子供が口から泡を吹き、目を白黒させ、顔色が真っ白になりました。
半夏は急いで救命措置を取りました。
天界のことはすっかり忘れてしまいました。
子供が意識を取り戻した時には、招集時間はとっくに過ぎていました。
半夏はそれでも華厳洞に行きましたが、そこには誰もおらず、半夏は天に上るチャンスを逃してしまいました。
それ以来、彼女は天界に行こうとか、仙人になろうとは思わず、一心に普州や他の国の貧しい人々の治療に専念しました。
治療と人助けのために長年尽力した彼女は、疲れ果て、不幸にも病気で亡くなりました。
人々は彼女を広大な土地の中央に埋葬しました。
すると間もなく彼女の墓とその土地には多くの緑色の苗が生えてきました。
しばらくして、その土地の持ち主が農地で作物を耕していると、苗の下に数珠大の何かがあるのを発見しました。
「これは半夏医師が変化したものかもしれない!」と考えました。
そこで、いくつかを病人に与えたところ、効果が非常に良く、病状が軽くなったのです。
この話はすぐに広まりました。
特に気管炎、胃炎、嘔吐の症状がある病人がこれを掘って食べると、非常に効果がありました。
半夏を記念して、人々はこの小さな苗を「半夏」と呼びました。
そして華厳洞の左壁に半夏の姿を模して座像を彫り、永遠に記念し敬いました。
おしまい
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
このブログでは東洋医学の中の「中医学」を学べる記事を書いていきます。
今後もがんばっていきますのでスキ・コメント・フォローなど頂けますと嬉しいです。
今後とも中医学の有益な情報発信していきますので、応援よろしくお願いします😀